18 / 35
16 待っている事にしようと思います
しおりを挟む
ソラがお父さまから聞いた話によると、お父さまからトーディ家に文書を送ったところ、トーディ男爵からはすぐに謝りの手紙が届いたそうなのです。
けれど、それで終わりではなく、少ししてから、ランドン辺境伯からお父さま宛に「貴殿の躾がなっていないせいで、私の愛する人が悲しい目に合った」なんて内容のお手紙が届いたようです。
パメル様が泣きついたのか、それともトーディ男爵が泣きついたのか、それとも他の第三者が介入したのか、一人、疑わしき人物はおりますけれど、まだはっきりとはわかりません。
お父さまは社交場ではわりと顔が広い方ですから、トーディ男爵としては変な噂が流れるのを嫌って、表向きかもしれませんが、すぐに謝ってこられたのでしょうけれど、ランドン辺境伯はそんな事は関係ありませんから、苦情の手紙なんかを送ってこられたんでしょうけど。
「悲しい目にあった、という事ですけど、自分とお似合いと言われて悲しんでいるという事を本人は知っていらっしゃるんでしょうか?」
「知らないだろう。パメルがことを荒立てない様にしてほしくてランドンに頼み、ランドンがそれを真に受けて、何も調べずにブルーミング伯爵に手紙を送りつけたんじゃないか?」
「迷惑な話なのです」
パメル様の言う事は何でもきくという事でしょうか。
あ、何でもきいていたら、今頃は諦めていらっしゃいますかね。
「どうする? 俺が出ようか?」
ラルフ様が私の頬に大きな手を当てて言いました。
「このままでは、お父さまがランドン辺境伯に謝らないといけなくなりますわよね」
「当主様はリノア様が悪い事をしていないなら、言いがかりだと反論されるそうです」
「そうなのですね」
ソラの言葉を聞いて、ラルフ様の手の上に自分の手を当てて少し考えていると、ラルフ様が頬から手をはなし、そのかわりに当てていた私の手をつかまれます。
「ブルーミング伯爵は返信する必要はない。どうせランドンの事だ。手紙の返事なんて待ってられないだろう」
「そう言われてみればそうですわね」
もしかしたら、私に文句を言う為に、すでにこちらに向かっているかもしれません。
「リノア」
「はい?」
「女性同士の戦いには割って入ってほしくなさそうだが、相手がランドンなら俺が出ても良いよな?」
「そうしていただけると助かります。相手は辺境伯様ですから、私の身分ではちょっと…。ただ、婚約者の身分ですのに、そんな事をお願いしてもよろしいのですか?」
パメル様がどんな話をされたのか気になりますし、私がお相手しても良いかなとは思いますが、お馬鹿さんとはいえ、相手は辺境伯ですからね。
何より、激高されて暴力でもふるわれてはかまいません。
もちろん、わざと暴力をふるわせるという手もありますが、わざわざ痛い思いはしたくないのです。
「かまわない。元々、俺とアイツは仲が良くないしな。それと、俺の敷地内であったトラブルだから、俺からもトーディ家には連絡を入れる。これもトーディ男爵に送るのであって、パメルに送るのではない」
ラルフ様の言葉は、本当ならパメル様に送りたいけれど、男性であるトーディ男爵に送ると言いたげです。
「…ラルフ様、もしかして怒ってらっしゃいます?」
「それはそうだろう。今だっておさえている方だ。もし熱いお茶をリノアにかけて、火傷でもさせていようものなら」
「熱いお茶を頭からかけられましたら、さすがの私も怒りますよ」
「怒るとかいう問題ではない。火傷していたらどうするんだ」
ラルフ様は難しい顔をして言われましたが、すぐに優しい顔になって、私に言います。
「一つだけ良い事がある」
「何でしょう?」
「ミリーがまたうちで働きたいと言ってくれている」
「本当ですか!?」
胸の前で両手を合わせて聞き返す。
ケイン様とミリー様がうまくいってくれただけでも嬉しい事ですのに、クラーク邸で騎士に戻られるとなると、私もミリー様とお会いできる機会が増えるのです!
「ソラが出かける時は事前に言ってくれれば、ミリーを回そう」
「あと、休みがほしいです」
ソラがきっぱりと言いました。
「そ、そうですね。ソラ、こちらに来てから、休む暇がないですよね」
メイドに関しては元々のクラーク邸の方がいらっしゃいますから、交代で休めましたが、私の執事はソラしかいませんでしたからね…。
廊下で長話をしていますと、ラルフ様の執事がやって来られました。
「お話中申し訳ございません。お客様が来られております」
「リノアにか?」
「ランドン辺境伯様がリノア様を出すように、とえらく興奮されておられまして」
「理由はわかっている。応接間に案内してしばらく待たせろ。遅いと文句を言い出しても絶対に部屋から出すな」
「かしこまりました」
執事は一礼して、元来た道を戻っていきます。
「すぐには行かれないのですか?」
「約束もなしに押しかけてきたんだから、待たすくらいしないとな。どうする? リノアも一緒に行くのか?」
「もちろんです! ラルフ様がいらっしゃるなら暴力をふるわれたりする事もないでしょうし」
「そうだな。もしそんな事をしたら、あいつをこの世から消してしまいそうだ」
ラルフ様は笑顔で言ってくださいましたが、内容はとっても怖いのです。
とりあえず、ラルフ様が向かう気になるまで、私は部屋で待っている事にしようと思います。
けれど、それで終わりではなく、少ししてから、ランドン辺境伯からお父さま宛に「貴殿の躾がなっていないせいで、私の愛する人が悲しい目に合った」なんて内容のお手紙が届いたようです。
パメル様が泣きついたのか、それともトーディ男爵が泣きついたのか、それとも他の第三者が介入したのか、一人、疑わしき人物はおりますけれど、まだはっきりとはわかりません。
お父さまは社交場ではわりと顔が広い方ですから、トーディ男爵としては変な噂が流れるのを嫌って、表向きかもしれませんが、すぐに謝ってこられたのでしょうけれど、ランドン辺境伯はそんな事は関係ありませんから、苦情の手紙なんかを送ってこられたんでしょうけど。
「悲しい目にあった、という事ですけど、自分とお似合いと言われて悲しんでいるという事を本人は知っていらっしゃるんでしょうか?」
「知らないだろう。パメルがことを荒立てない様にしてほしくてランドンに頼み、ランドンがそれを真に受けて、何も調べずにブルーミング伯爵に手紙を送りつけたんじゃないか?」
「迷惑な話なのです」
パメル様の言う事は何でもきくという事でしょうか。
あ、何でもきいていたら、今頃は諦めていらっしゃいますかね。
「どうする? 俺が出ようか?」
ラルフ様が私の頬に大きな手を当てて言いました。
「このままでは、お父さまがランドン辺境伯に謝らないといけなくなりますわよね」
「当主様はリノア様が悪い事をしていないなら、言いがかりだと反論されるそうです」
「そうなのですね」
ソラの言葉を聞いて、ラルフ様の手の上に自分の手を当てて少し考えていると、ラルフ様が頬から手をはなし、そのかわりに当てていた私の手をつかまれます。
「ブルーミング伯爵は返信する必要はない。どうせランドンの事だ。手紙の返事なんて待ってられないだろう」
「そう言われてみればそうですわね」
もしかしたら、私に文句を言う為に、すでにこちらに向かっているかもしれません。
「リノア」
「はい?」
「女性同士の戦いには割って入ってほしくなさそうだが、相手がランドンなら俺が出ても良いよな?」
「そうしていただけると助かります。相手は辺境伯様ですから、私の身分ではちょっと…。ただ、婚約者の身分ですのに、そんな事をお願いしてもよろしいのですか?」
パメル様がどんな話をされたのか気になりますし、私がお相手しても良いかなとは思いますが、お馬鹿さんとはいえ、相手は辺境伯ですからね。
何より、激高されて暴力でもふるわれてはかまいません。
もちろん、わざと暴力をふるわせるという手もありますが、わざわざ痛い思いはしたくないのです。
「かまわない。元々、俺とアイツは仲が良くないしな。それと、俺の敷地内であったトラブルだから、俺からもトーディ家には連絡を入れる。これもトーディ男爵に送るのであって、パメルに送るのではない」
ラルフ様の言葉は、本当ならパメル様に送りたいけれど、男性であるトーディ男爵に送ると言いたげです。
「…ラルフ様、もしかして怒ってらっしゃいます?」
「それはそうだろう。今だっておさえている方だ。もし熱いお茶をリノアにかけて、火傷でもさせていようものなら」
「熱いお茶を頭からかけられましたら、さすがの私も怒りますよ」
「怒るとかいう問題ではない。火傷していたらどうするんだ」
ラルフ様は難しい顔をして言われましたが、すぐに優しい顔になって、私に言います。
「一つだけ良い事がある」
「何でしょう?」
「ミリーがまたうちで働きたいと言ってくれている」
「本当ですか!?」
胸の前で両手を合わせて聞き返す。
ケイン様とミリー様がうまくいってくれただけでも嬉しい事ですのに、クラーク邸で騎士に戻られるとなると、私もミリー様とお会いできる機会が増えるのです!
「ソラが出かける時は事前に言ってくれれば、ミリーを回そう」
「あと、休みがほしいです」
ソラがきっぱりと言いました。
「そ、そうですね。ソラ、こちらに来てから、休む暇がないですよね」
メイドに関しては元々のクラーク邸の方がいらっしゃいますから、交代で休めましたが、私の執事はソラしかいませんでしたからね…。
廊下で長話をしていますと、ラルフ様の執事がやって来られました。
「お話中申し訳ございません。お客様が来られております」
「リノアにか?」
「ランドン辺境伯様がリノア様を出すように、とえらく興奮されておられまして」
「理由はわかっている。応接間に案内してしばらく待たせろ。遅いと文句を言い出しても絶対に部屋から出すな」
「かしこまりました」
執事は一礼して、元来た道を戻っていきます。
「すぐには行かれないのですか?」
「約束もなしに押しかけてきたんだから、待たすくらいしないとな。どうする? リノアも一緒に行くのか?」
「もちろんです! ラルフ様がいらっしゃるなら暴力をふるわれたりする事もないでしょうし」
「そうだな。もしそんな事をしたら、あいつをこの世から消してしまいそうだ」
ラルフ様は笑顔で言ってくださいましたが、内容はとっても怖いのです。
とりあえず、ラルフ様が向かう気になるまで、私は部屋で待っている事にしようと思います。
41
お気に入りに追加
1,497
あなたにおすすめの小説
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。
婚約者様は大変お素敵でございます
ましろ
恋愛
私シェリーが婚約したのは16の頃。相手はまだ13歳のベンジャミン様。当時の彼は、声変わりすらしていない天使の様に美しく可愛らしい少年だった。
あれから2年。天使様は素敵な男性へと成長した。彼が18歳になり学園を卒業したら結婚する。
それまで、侯爵家で花嫁修業としてお父上であるカーティス様から仕事を学びながら、嫁ぐ日を指折り数えて待っていた──
設定はゆるゆるご都合主義です。
愛するひとの幸せのためなら、涙を隠して身を引いてみせる。それが女というものでございます。殿下、後生ですから私のことを忘れないでくださいませ。
石河 翠
恋愛
プリムローズは、卒業を控えた第二王子ジョシュアに学園の七不思議について尋ねられた。
七不思議には恋愛成就のお呪い的なものも含まれている。きっと好きなひとに告白するつもりなのだ。そう推測したプリムローズは、涙を隠し調査への協力を申し出た。
しかし彼が本当に調べたかったのは、卒業パーティーで王族が婚約を破棄する理由だった。断罪劇はやり返され必ず元サヤにおさまるのに、繰り返される茶番。
実は恒例の断罪劇には、とある真実が隠されていて……。
愛するひとの幸せを望み生贄になることを笑って受け入れたヒロインと、ヒロインのために途絶えた魔術を復活させた一途なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25663244)をお借りしております。
それは報われない恋のはずだった
ララ
恋愛
異母妹に全てを奪われた。‥‥ついには命までもーー。どうせ死ぬのなら最期くらい好きにしたっていいでしょう?
私には大好きな人がいる。幼いころの初恋。決して叶うことのない無謀な恋。
それはわかっていたから恐れ多くもこの気持ちを誰にも話すことはなかった。けれど‥‥死ぬと分かった今ならばもう何も怖いものなんてないわ。
忘れてくれたってかまわない。身勝手でしょう。でも許してね。これが最初で最後だから。あなたにこれ以上迷惑をかけることはないわ。
「幼き頃からあなたのことが好きでした。私の初恋です。本当に‥‥本当に大好きでした。ありがとう。そして‥‥さよなら。」
主人公 カミラ・フォーテール
異母妹 リリア・フォーテール
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
【完結】公爵子息は私のことをずっと好いていたようです
果実果音
恋愛
私はしがない伯爵令嬢だけれど、両親同士が仲が良いということもあって、公爵子息であるラディネリアン・コールズ様と婚約関係にある。
幸い、小さい頃から話があったので、意地悪な元婚約者がいるわけでもなく、普通に婚約関係を続けている。それに、ラディネリアン様の両親はどちらも私を可愛がってくださっているし、幸せな方であると思う。
ただ、どうも好かれているということは無さそうだ。
月に数回ある顔合わせの時でさえ、仏頂面だ。
パーティではなんの関係もない令嬢にだって笑顔を作るのに.....。
これでは、結婚した後は別居かしら。
お父様とお母様はとても仲が良くて、憧れていた。もちろん、ラディネリアン様の両親も。
だから、ちょっと、別居になるのは悲しいかな。なんて、私のわがままかしらね。
【完結】私の愛する人は、あなただけなのだから
よどら文鳥
恋愛
私ヒマリ=ファールドとレン=ジェイムスは、小さい頃から仲が良かった。
五年前からは恋仲になり、その後両親をなんとか説得して婚約まで発展した。
私たちは相思相愛で理想のカップルと言えるほど良い関係だと思っていた。
だが、レンからいきなり婚約破棄して欲しいと言われてしまう。
「俺には最愛の女性がいる。その人の幸せを第一に考えている」
この言葉を聞いて涙を流しながらその場を去る。
あれほど酷いことを言われってしまったのに、私はそれでもレンのことばかり考えてしまっている。
婚約破棄された当日、ギャレット=メルトラ第二王子殿下から縁談の話が来ていることをお父様から聞く。
両親は恋人ごっこなど終わりにして王子と結婚しろと強く言われてしまう。
だが、それでも私の心の中には……。
※冒頭はざまぁっぽいですが、ざまぁがメインではありません。
※第一話投稿の段階で完結まで全て書き終えていますので、途中で更新が止まることはありませんのでご安心ください。
【完結】365日後の花言葉
Ringo
恋愛
許せなかった。
幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。
あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。
“ごめんなさい”
言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの?
※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる