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7 一掃するしかなくなりますが?
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「あなたにそんな事を言われる筋合いはありません! 何様だと思っているんですか!」
パメル様はどうやらフレイ様には恋人がいらしたのに、複数のメイドに手を出し、そのせいで罰を受けていると思い込んでいるようです。
さすがのカーミラ様も、部外者に全てを話しておられないようで良かったです。
あと、パメル様はランドン辺境伯の事も本当にお嫌いなようです。
まあ、付きまとい行為をされているなら、好きになったりは中々ないかもしれませんが。
小さく息を吐いてから、怒りをむき出しにしているパメル様に、言葉を返す。
「それはこっちの台詞です。大体、カーミラ様のお客様ですのに、なぜ、カーミラ様のメイドを連れ歩いているのです? カーミラ様の侍女にでも案内してもらえば良いのでは?」
「それはその、庭園を案内したいとメイド達に言われたから!」
「先程はパメル様が見たいと仰ったと言われていましたが?」
「揚げ足をとるのはやめて下さい! それに、カーミラ様が庭園内を歩けないのはあなたもご存知でしょう!」
だから、侍女にって言ったじゃないですか。
黙ってしまったパメル様の代わりに反論してきたメイドが続けます。
「それに誰だって間違いはあります!」
「そんな、言葉の一つ一つに反応なさらないで下さい! お可哀そうなパメル様」
元フレイ様のメイドにはまともな人間がいないのでしょうか。
それとも恋は盲目というやつで、フレイ様がからむと、こんな風になってしまうだけでしょうか。
何にしても、私は必要以上に慌ただしく過ごしたくありません。
平穏な生活を望んでるんです。
せめて、敷地内でくらい、ゆっくりさせて下さい!
「パメル様がお可哀想なのはわかりました。ですが、庭園の中を歩き回られるのはお止めになってはいかがでしょうか? 私のような人間に出会いますから」
「ブルーミング嬢が歩き回られなければ良いだけじゃないですか!」
「そうです! パメル様はお客様なのですよ!」
メイド達がパメル様を持ち上げるたびに、彼女はそれは誇らしそうな顔をされます。
別にあなた自身が褒められているわけではないですからね?
「それを言わせていただきますと、あなた方は私を婚約者と認めておられないのですよね? でしたら、あなた方にとって私はラルフ様のお客様になるはずですが?」
お客様と婚約者は立場上、どちらが偉いかわかりませんが、私にお客様を優先しろと言うのであれば、お客様が偉いのでしょう。
でしたら、私もその立場だという事を主張してみたら、どんな反応をするのかと思って言い返してみると、メイド達は言います。
「その割には我が物顔で敷地内をウロウロしていらっしゃるんですね!」
「本当だわ。図々しい!」
よくわかりません。
さっきは私が歩き回ってはいけない、お客様のパメル様は歩きまわっても良いという言い方の様にも聞こえたのですが、結局、私がどんな立場であろうと目障りだと言いたいようです。
「トーディ男爵令嬢、カーミラ様がお待ちです」
「大変! 長居をしてしまったみたいね!」
別邸の騎士であるダラス様が、パメル様を呼びに来られると、彼女は表情を輝かせて続けます。
「ブルーミング伯爵令嬢は、メイド達と話があるようですし、あなたが私を連れて行って下さる?」
「…承知しました」
ダラス様は心配げな視線をこちらに投げられましたが、笑顔を見せると頷かれてから、パメル様を連れて歩いて行かれます。
「リノア様、俺達も行きましょう」
相手にしていられないと言わんばかりに、ソラが私を促すと、メイドの一人が私に向かって言う。
「あなたが私達にした事、どうせわかっていないんでしょう?」
「…私が、あなた達にした事?」
聞き返すと、怒りに震えているのか、ぷるぷると身体を震わせながらメイドが答えた。
「私達からフレイ様を奪った事よ。パメル様は何も知らないから浮気だなんておっしゃったけれど、私達はフレイ様がした事を知っているわ。彼のした事はラルフ様の為を思っての事! ふさわしくない令嬢を選別するためにテストをしておられただけよ! それをポッと出のあなたがしゃしゃり出てきて、全てをラルフ様に報告! そのせいで、フレイ様はあんな場所に閉じ込められる事に!」
「私達の悲しみがあなたなんかにわかるはずがない!」
他のメイドもそうだ、と叫びます。
この方達は何を言っておられるのでしょう…。
私が真実を暴いた事により、フレイ様が罰を受けられる事になったと?
そうではないでしょう。
「フレイ様は悪い事をされたから罰を受ける事になったんです! あなた達にはそれがわからないんですか?」
「フレイ様と関係を持つ事の何が不幸せだと言うの! 大体、テストに受からなかった上に、フレイ様と関係を持たれるなんて厚かましい!」
「あなた達、何を言ってるのかわかってるんですか!」
私が叫ぶと、メイドのリーダー格のような一人が前に出てきて言います。
「私達はあなたの事を絶対に許しません。覚悟しておくといいわ!」
「おい、お前ら!」
さすがの物言いにソラが声を荒らげると、メイド達の背後から、突然カーミラ様が現れたかと思うと口を開かれました。
「またラルフに言うだなんて言わないでよね? そうなったら、私は私であなたの侍女の秘密を、彼女の恋人に告げ口してしまうかも…」
カーミラ様は意地の悪い笑みを浮かべられます。
「どういう事です?」
侍女の秘密、というので付いてきてくれている侍女に尋ねると、彼女は首を横に振ってから言います。
「私ではありません。推測ですが、新しい彼女の方かと…」
新しい彼女と言うと、フレイ様の犠牲になり、最低な伯爵にいじめられ、心が弱っていた元令嬢の事でしょう。
「リノア様は知らないようだけど、彼女、最近、庭師の若い男とよく話をしてるの。恋人なのかしら? その彼は彼女の過去を知ってるのかしらね?」
カーミラ様はくすくすと笑いながら言いました。
ああ、ラルフ様。
あなたのご家族ってどうして、こんなに最低な人が多いんですか!
このままでは、一掃するしかなくなりますが?
パメル様はどうやらフレイ様には恋人がいらしたのに、複数のメイドに手を出し、そのせいで罰を受けていると思い込んでいるようです。
さすがのカーミラ様も、部外者に全てを話しておられないようで良かったです。
あと、パメル様はランドン辺境伯の事も本当にお嫌いなようです。
まあ、付きまとい行為をされているなら、好きになったりは中々ないかもしれませんが。
小さく息を吐いてから、怒りをむき出しにしているパメル様に、言葉を返す。
「それはこっちの台詞です。大体、カーミラ様のお客様ですのに、なぜ、カーミラ様のメイドを連れ歩いているのです? カーミラ様の侍女にでも案内してもらえば良いのでは?」
「それはその、庭園を案内したいとメイド達に言われたから!」
「先程はパメル様が見たいと仰ったと言われていましたが?」
「揚げ足をとるのはやめて下さい! それに、カーミラ様が庭園内を歩けないのはあなたもご存知でしょう!」
だから、侍女にって言ったじゃないですか。
黙ってしまったパメル様の代わりに反論してきたメイドが続けます。
「それに誰だって間違いはあります!」
「そんな、言葉の一つ一つに反応なさらないで下さい! お可哀そうなパメル様」
元フレイ様のメイドにはまともな人間がいないのでしょうか。
それとも恋は盲目というやつで、フレイ様がからむと、こんな風になってしまうだけでしょうか。
何にしても、私は必要以上に慌ただしく過ごしたくありません。
平穏な生活を望んでるんです。
せめて、敷地内でくらい、ゆっくりさせて下さい!
「パメル様がお可哀想なのはわかりました。ですが、庭園の中を歩き回られるのはお止めになってはいかがでしょうか? 私のような人間に出会いますから」
「ブルーミング嬢が歩き回られなければ良いだけじゃないですか!」
「そうです! パメル様はお客様なのですよ!」
メイド達がパメル様を持ち上げるたびに、彼女はそれは誇らしそうな顔をされます。
別にあなた自身が褒められているわけではないですからね?
「それを言わせていただきますと、あなた方は私を婚約者と認めておられないのですよね? でしたら、あなた方にとって私はラルフ様のお客様になるはずですが?」
お客様と婚約者は立場上、どちらが偉いかわかりませんが、私にお客様を優先しろと言うのであれば、お客様が偉いのでしょう。
でしたら、私もその立場だという事を主張してみたら、どんな反応をするのかと思って言い返してみると、メイド達は言います。
「その割には我が物顔で敷地内をウロウロしていらっしゃるんですね!」
「本当だわ。図々しい!」
よくわかりません。
さっきは私が歩き回ってはいけない、お客様のパメル様は歩きまわっても良いという言い方の様にも聞こえたのですが、結局、私がどんな立場であろうと目障りだと言いたいようです。
「トーディ男爵令嬢、カーミラ様がお待ちです」
「大変! 長居をしてしまったみたいね!」
別邸の騎士であるダラス様が、パメル様を呼びに来られると、彼女は表情を輝かせて続けます。
「ブルーミング伯爵令嬢は、メイド達と話があるようですし、あなたが私を連れて行って下さる?」
「…承知しました」
ダラス様は心配げな視線をこちらに投げられましたが、笑顔を見せると頷かれてから、パメル様を連れて歩いて行かれます。
「リノア様、俺達も行きましょう」
相手にしていられないと言わんばかりに、ソラが私を促すと、メイドの一人が私に向かって言う。
「あなたが私達にした事、どうせわかっていないんでしょう?」
「…私が、あなた達にした事?」
聞き返すと、怒りに震えているのか、ぷるぷると身体を震わせながらメイドが答えた。
「私達からフレイ様を奪った事よ。パメル様は何も知らないから浮気だなんておっしゃったけれど、私達はフレイ様がした事を知っているわ。彼のした事はラルフ様の為を思っての事! ふさわしくない令嬢を選別するためにテストをしておられただけよ! それをポッと出のあなたがしゃしゃり出てきて、全てをラルフ様に報告! そのせいで、フレイ様はあんな場所に閉じ込められる事に!」
「私達の悲しみがあなたなんかにわかるはずがない!」
他のメイドもそうだ、と叫びます。
この方達は何を言っておられるのでしょう…。
私が真実を暴いた事により、フレイ様が罰を受けられる事になったと?
そうではないでしょう。
「フレイ様は悪い事をされたから罰を受ける事になったんです! あなた達にはそれがわからないんですか?」
「フレイ様と関係を持つ事の何が不幸せだと言うの! 大体、テストに受からなかった上に、フレイ様と関係を持たれるなんて厚かましい!」
「あなた達、何を言ってるのかわかってるんですか!」
私が叫ぶと、メイドのリーダー格のような一人が前に出てきて言います。
「私達はあなたの事を絶対に許しません。覚悟しておくといいわ!」
「おい、お前ら!」
さすがの物言いにソラが声を荒らげると、メイド達の背後から、突然カーミラ様が現れたかと思うと口を開かれました。
「またラルフに言うだなんて言わないでよね? そうなったら、私は私であなたの侍女の秘密を、彼女の恋人に告げ口してしまうかも…」
カーミラ様は意地の悪い笑みを浮かべられます。
「どういう事です?」
侍女の秘密、というので付いてきてくれている侍女に尋ねると、彼女は首を横に振ってから言います。
「私ではありません。推測ですが、新しい彼女の方かと…」
新しい彼女と言うと、フレイ様の犠牲になり、最低な伯爵にいじめられ、心が弱っていた元令嬢の事でしょう。
「リノア様は知らないようだけど、彼女、最近、庭師の若い男とよく話をしてるの。恋人なのかしら? その彼は彼女の過去を知ってるのかしらね?」
カーミラ様はくすくすと笑いながら言いました。
ああ、ラルフ様。
あなたのご家族ってどうして、こんなに最低な人が多いんですか!
このままでは、一掃するしかなくなりますが?
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