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第28話 同じ気持ち?
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「大丈夫だったか!?」
ディルが外出着のままで、私の部屋にやって来るなり聞いてきた。
「大丈夫かというのは…?」
とにかく、ディルを部屋の中に通してから尋ねると、誰かが伝えてくれたのか、シンラ様の事をソファーに座る事もなく聞いてきた。
「ドボン公爵令息に何かされなかったか?」
「はい。特にシンラ様には何もされてはいません」
「は? シンラ様?」
ディルが仮面を外して眉根を寄せて聞いてくるので答える。
「ドボン公爵令息と呼ぶと長いので、シンラ様とお呼びする事にしました」
「そんな理由かよ…」
「駄目でしたか?」
「いや、急に仲良くなったわけじゃないなら良い」
「そんな事があるわけないじゃないですか」
苦笑していると、ヨツイ夫人が言う。
「レイア様、何もされていないというのは嘘になってしまうのではないでしょうか…?」
「え? あ、そ、そうですね…」
「……何があった?」
「えーと、実は……」
ディルにシンラ様から言われた事を話すと、それはもうご立腹だった。
「ふざけんな。人の婚約者になんて事言い出すんだ」
「恋をするのは自由ですが、横恋慕はよくありませんわね」
ヨツイ夫人がディルの言葉に頷く。
そんな2人に私は首を横に振って言う。
「きっと、本気じゃないと思います。ですから、私も相手にするつもりはありません」
「……なら、いいけど、相手はそんな中途半端な事をするだろうか」
「どういう事ですか?」
尋ねると、ディルではなく、ヨツイ夫人が答えてくれる。
「明日になれば答えは出ると思いますが、彼は本気でレイア様を自分のものにしようとされているのではないかと思います」
「……そこまでして、シンラ様がリシーナ様とディルを結婚させようとする理由は何なのでしょう?」
ヨツイ夫人に尋ねた言葉に対して、ディルが答える。
「乗っ取りたいんじゃないか?」
「……王家をですか?」
「まあ、そうだな。彼女が俺の子を生んで、傀儡にしてしまえば最終的にはそうなるだろう」
王妃陛下の目的は私と結婚させない事で、ドボン公爵家は自分の血筋を王家に入れたいというところかしら?
でも、元々は公爵の爵位って王家の人がもらっていたわよね?
遡れば王家なのに、それでも名を残したいものなのかしら?
私にはわからない感覚だわ。
「……にしても、気に食わないな」
「大丈夫ですよ。さすがに私だって、嘘の告白に騙されたりしません」
「そういう意味じゃなくて…」
「ディル殿下、はっきり仰らないと伝わらないかと思いますよ」
ヨツイ夫人がなぜかクスクス笑いながら言う。
「そのつもりだったんだけど、タイミングをなくしたんだよ」
「言える時に言うべきですよ。私はお邪魔の様ですし、去る事に致しましょうかね」
「待ってください。ヨツイ夫人にもまだ、色々と相談したいんです」
「ですが…」
ヨツイ夫人は困った顔をしてディルの方を見る。
もしかして、先日の話の続きをしようとしているの?
別にもう良いのに…。
そう思って話しかける。
「ディル」
「はい」
なぜか、ディルが緊張した面持ちになっただけでなく、敬語を使ってきた。
なぜ、そんな事になったのかはわからないけれど、気にせずにお願いする。
「私はディルに嫁ぐ為に、この地に来たんです。ですから、今更、ディル以外の人の元へ嫁ぐ気はありません。ですが、ディルに心に決めた人がいるなら、その方にこの座を譲ろうと思います」
強い口調で言うと、ディルは首を横に振る。
「俺はレイア以外の女性を妻にする気はない」
まるで口説き文句みたいな感じに聞こえて、胸の鼓動が少しだけはやくなった。
そんな事を悟られない様に言う。
「ありがとうございます。それは私も同じ気持ちです」
「……いや、違うだろ」
ディルは少し不機嫌そうな顔をして続ける。
「同じ気持ちだと、レイアは俺の事を好きだという事になるぞ?」
「好きですから、間違っていません」
素直に気持ちを伝えると、ディルが聞いてくる。
「レイアの好きは本当に俺と同じなんだな?」
「そ、そうです!」
どうして、そんな事を聞いてくるの?
「ふぅん」
ディルは納得していない感じで呟いた後、私の手首をつかんだ。
「……ディル?」
「同じ気持ちだというんなら、こういう事をしてもいいよな?」
そう言うと、私が答えを返す前に、私の体を引き寄せて抱きしめてきたのだった。
え!?
ど、どういう事!?
ディルが外出着のままで、私の部屋にやって来るなり聞いてきた。
「大丈夫かというのは…?」
とにかく、ディルを部屋の中に通してから尋ねると、誰かが伝えてくれたのか、シンラ様の事をソファーに座る事もなく聞いてきた。
「ドボン公爵令息に何かされなかったか?」
「はい。特にシンラ様には何もされてはいません」
「は? シンラ様?」
ディルが仮面を外して眉根を寄せて聞いてくるので答える。
「ドボン公爵令息と呼ぶと長いので、シンラ様とお呼びする事にしました」
「そんな理由かよ…」
「駄目でしたか?」
「いや、急に仲良くなったわけじゃないなら良い」
「そんな事があるわけないじゃないですか」
苦笑していると、ヨツイ夫人が言う。
「レイア様、何もされていないというのは嘘になってしまうのではないでしょうか…?」
「え? あ、そ、そうですね…」
「……何があった?」
「えーと、実は……」
ディルにシンラ様から言われた事を話すと、それはもうご立腹だった。
「ふざけんな。人の婚約者になんて事言い出すんだ」
「恋をするのは自由ですが、横恋慕はよくありませんわね」
ヨツイ夫人がディルの言葉に頷く。
そんな2人に私は首を横に振って言う。
「きっと、本気じゃないと思います。ですから、私も相手にするつもりはありません」
「……なら、いいけど、相手はそんな中途半端な事をするだろうか」
「どういう事ですか?」
尋ねると、ディルではなく、ヨツイ夫人が答えてくれる。
「明日になれば答えは出ると思いますが、彼は本気でレイア様を自分のものにしようとされているのではないかと思います」
「……そこまでして、シンラ様がリシーナ様とディルを結婚させようとする理由は何なのでしょう?」
ヨツイ夫人に尋ねた言葉に対して、ディルが答える。
「乗っ取りたいんじゃないか?」
「……王家をですか?」
「まあ、そうだな。彼女が俺の子を生んで、傀儡にしてしまえば最終的にはそうなるだろう」
王妃陛下の目的は私と結婚させない事で、ドボン公爵家は自分の血筋を王家に入れたいというところかしら?
でも、元々は公爵の爵位って王家の人がもらっていたわよね?
遡れば王家なのに、それでも名を残したいものなのかしら?
私にはわからない感覚だわ。
「……にしても、気に食わないな」
「大丈夫ですよ。さすがに私だって、嘘の告白に騙されたりしません」
「そういう意味じゃなくて…」
「ディル殿下、はっきり仰らないと伝わらないかと思いますよ」
ヨツイ夫人がなぜかクスクス笑いながら言う。
「そのつもりだったんだけど、タイミングをなくしたんだよ」
「言える時に言うべきですよ。私はお邪魔の様ですし、去る事に致しましょうかね」
「待ってください。ヨツイ夫人にもまだ、色々と相談したいんです」
「ですが…」
ヨツイ夫人は困った顔をしてディルの方を見る。
もしかして、先日の話の続きをしようとしているの?
別にもう良いのに…。
そう思って話しかける。
「ディル」
「はい」
なぜか、ディルが緊張した面持ちになっただけでなく、敬語を使ってきた。
なぜ、そんな事になったのかはわからないけれど、気にせずにお願いする。
「私はディルに嫁ぐ為に、この地に来たんです。ですから、今更、ディル以外の人の元へ嫁ぐ気はありません。ですが、ディルに心に決めた人がいるなら、その方にこの座を譲ろうと思います」
強い口調で言うと、ディルは首を横に振る。
「俺はレイア以外の女性を妻にする気はない」
まるで口説き文句みたいな感じに聞こえて、胸の鼓動が少しだけはやくなった。
そんな事を悟られない様に言う。
「ありがとうございます。それは私も同じ気持ちです」
「……いや、違うだろ」
ディルは少し不機嫌そうな顔をして続ける。
「同じ気持ちだと、レイアは俺の事を好きだという事になるぞ?」
「好きですから、間違っていません」
素直に気持ちを伝えると、ディルが聞いてくる。
「レイアの好きは本当に俺と同じなんだな?」
「そ、そうです!」
どうして、そんな事を聞いてくるの?
「ふぅん」
ディルは納得していない感じで呟いた後、私の手首をつかんだ。
「……ディル?」
「同じ気持ちだというんなら、こういう事をしてもいいよな?」
そう言うと、私が答えを返す前に、私の体を引き寄せて抱きしめてきたのだった。
え!?
ど、どういう事!?
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