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第17話 夕食時の来客
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私とディルはリーズン殿下と改めて話をした後、彼の希望もあり、国王陛下に謁見することなった。
乗りかかった船だし、このまま、何もせずにターリー国に向かうのも嫌だったから、お願いされてちょうど良かった。
だって、王族に暴言を吐いておいて逃げただけで済むと思われた方がターリー国の威信に関わる事にもなるから。
リーズン殿下が取り持ってくれた事もあり、リビンノ国の国王陛下から晩餐を共にしたいという、お誘いがあった。
私達は明日にこの国を出るつもりだったのだけれど、明日の晩餐に誘われた為、もう一泊多く泊まらせてもらう事にした。
この一泊をするかどうかの相談をターリー国の国王陛下にしたところ、リビンノ国は今のところ、どこの国寄りというものがないので、恩を売り、何かあった時にはターリー国に付かせる様にさせろと命令がきた。
政治というのはこんなものなのね。
と理解したけれど、今回は良い方向で良かった。
リビンノ国を助けてもターリー国にとっては利益がないから見捨てろと言われたら辛いところだった。
セレン様の事があるから、本当はわたしも少しでも早く、この国から出たいというのが本音なのだけど、しょうがない。
「セレン殿下に鉢合わせしないようにしないとな」
ディルも同じ考えの様で、リーズン殿下を助ける事に不満はないけれど、セレン殿下に会うのは嫌みたいだった。
キズレイ殿下とセレン様が上手くいってくれれば良いのだけれど、そんな感じにも思えない。
外見は綺麗と可愛いで良いカップルになりそうだと思うんだけれど…。
セレン殿下についての処分はキズレイ殿下との縁談次第で決まる事になった。
縁談がまとまれば、キズレイ殿下のところに嫁入りするから、ロトス国の王族でも国民でもなくなるので、ロトス国としては、ある意味、厄介払いができる。
けれど、上手くいかなかった場合は、どうするかとなると、今のところは部屋に監禁するという案しか出ていないみたい。
「今日、キズレイ殿下とセレン様は会っているはずですし、どうだったか、結果もわかると思うんですけど…」
ディルと一緒に夕食を食べ終えて、食堂で話をしている時だった。
私達はリビンノ国の城の敷地内にある迎賓館に滞在させてもらっているのだけれど、ディルの側近や私の侍女も一緒に泊まらせてもらっていて、許可をもらい、リビンノ国の来賓担当者の人が付いていれば、城の敷地内を歩く事が出来る。
だから、ディルの側近の1人であるロンが今日のキズレイ殿下とセレン様の話が上手くいったのかどうかの確認をしてきてくれて、その結果を報告しに来てくれた。
「わかっているかとは思いますが、上手くはいっていません。ただ、2人共、お互いに好印象のようですね」
「どういう事だ?」
「自分の隣にいる人間の容姿としてはふさわしいと認め合っているようです。ただ、互いに何かが足りないとも…」
「何かってなんだよ」
ディルが眉根を寄せて尋ねると、ロンは考える仕草をしてから答える。
「セレン殿下には確認はとれておりませんが、キズレイ殿下が言っていたという言葉の確認はとれております」
「なんて言っていたんだ?」
「彼女はワガママそうだから嫌だと。だから、優しそうな見た目のレイア様が良いと…」
「見た目で判断しても意味がないですよね。中身が優しいかどうかはわからないのに…」
私が答えると、ディルとロンは首を横に振ってくれる。
「レイアは優しい方だと思うぞ」
「私もそう思います。そうでなければ、ディル殿下のお相手はできません」
「おい」
ロンの言葉にディルは不満そうにしたけれど、すぐに表情を戻して私の方に顔を向けて言う。
「俺は王族にしてはかなりがさつだし、レイアの様に気配りの出来る人間が近くにいてくれると助かる。もし、セレン殿下と俺が結婚してみろ。ターリー国がヤバい事になるぞ」
「セレン様に何も言わせなければいいだけですわ」
「セレン殿下は言うだろ。政治に関しては何も言わなくても、わたくしにかまってくれだとか、何だとか言いかねない」
「そ、それはそうかもしれませんね」
苦笑した時だった。
城の敷地内にあれど、迎賓館の周りは高い壁に囲まれていて、出入りするには門の近くにいる騎士に門を開けてもらわないといけない。
だからか、少し離れた場所から声が聞こえてきた。
「ちょっと! わたくしを誰だと思っているの! ロトス国の王族なのよ! リビンノ国なんて、ロトス国に比べれば小さなのんびりとした国じゃないの! わたくしに無礼な態度を取ったら国際問題になりますわよ! それでもよろしくって!? それが嫌なら、わたくしを中に入れなさい! どうしても、わたくしはディル様に会わなければいけないのよ!」
セレン様の叫ぶ声が聞こえて、私とディルは顔を見合わせ、ロンがため息を吐いて言う。
「帰っていただくようにお伝えしたらよろしいですか?」
「そうだな。ロン、お前は顔が良いし、そのついでに…」
「セレン殿下を私に押し付けようとするのはやめて下さい! 私には国に婚約者がいますんで!」
「冗談だよ。本気にするな」
「ごめんなさいね、ロン。ディル、ロンをからかうのはやめて下さい」
ロンはまだ若くて15歳の公爵家の次男だ。
恋愛も婚約者の人としかした事がなくて、こういう話題になると、すぐに真っ赤になってしまうから可愛くて、ついついからかいたくなる気持ちははわかるんだけれど、こういう時は駄目よね。
「ディル殿下の婚約者がレイア様で本当に良かったです!」
ロンはそう言うと、一礼して部屋を出て行った。
乗りかかった船だし、このまま、何もせずにターリー国に向かうのも嫌だったから、お願いされてちょうど良かった。
だって、王族に暴言を吐いておいて逃げただけで済むと思われた方がターリー国の威信に関わる事にもなるから。
リーズン殿下が取り持ってくれた事もあり、リビンノ国の国王陛下から晩餐を共にしたいという、お誘いがあった。
私達は明日にこの国を出るつもりだったのだけれど、明日の晩餐に誘われた為、もう一泊多く泊まらせてもらう事にした。
この一泊をするかどうかの相談をターリー国の国王陛下にしたところ、リビンノ国は今のところ、どこの国寄りというものがないので、恩を売り、何かあった時にはターリー国に付かせる様にさせろと命令がきた。
政治というのはこんなものなのね。
と理解したけれど、今回は良い方向で良かった。
リビンノ国を助けてもターリー国にとっては利益がないから見捨てろと言われたら辛いところだった。
セレン様の事があるから、本当はわたしも少しでも早く、この国から出たいというのが本音なのだけど、しょうがない。
「セレン殿下に鉢合わせしないようにしないとな」
ディルも同じ考えの様で、リーズン殿下を助ける事に不満はないけれど、セレン殿下に会うのは嫌みたいだった。
キズレイ殿下とセレン様が上手くいってくれれば良いのだけれど、そんな感じにも思えない。
外見は綺麗と可愛いで良いカップルになりそうだと思うんだけれど…。
セレン殿下についての処分はキズレイ殿下との縁談次第で決まる事になった。
縁談がまとまれば、キズレイ殿下のところに嫁入りするから、ロトス国の王族でも国民でもなくなるので、ロトス国としては、ある意味、厄介払いができる。
けれど、上手くいかなかった場合は、どうするかとなると、今のところは部屋に監禁するという案しか出ていないみたい。
「今日、キズレイ殿下とセレン様は会っているはずですし、どうだったか、結果もわかると思うんですけど…」
ディルと一緒に夕食を食べ終えて、食堂で話をしている時だった。
私達はリビンノ国の城の敷地内にある迎賓館に滞在させてもらっているのだけれど、ディルの側近や私の侍女も一緒に泊まらせてもらっていて、許可をもらい、リビンノ国の来賓担当者の人が付いていれば、城の敷地内を歩く事が出来る。
だから、ディルの側近の1人であるロンが今日のキズレイ殿下とセレン様の話が上手くいったのかどうかの確認をしてきてくれて、その結果を報告しに来てくれた。
「わかっているかとは思いますが、上手くはいっていません。ただ、2人共、お互いに好印象のようですね」
「どういう事だ?」
「自分の隣にいる人間の容姿としてはふさわしいと認め合っているようです。ただ、互いに何かが足りないとも…」
「何かってなんだよ」
ディルが眉根を寄せて尋ねると、ロンは考える仕草をしてから答える。
「セレン殿下には確認はとれておりませんが、キズレイ殿下が言っていたという言葉の確認はとれております」
「なんて言っていたんだ?」
「彼女はワガママそうだから嫌だと。だから、優しそうな見た目のレイア様が良いと…」
「見た目で判断しても意味がないですよね。中身が優しいかどうかはわからないのに…」
私が答えると、ディルとロンは首を横に振ってくれる。
「レイアは優しい方だと思うぞ」
「私もそう思います。そうでなければ、ディル殿下のお相手はできません」
「おい」
ロンの言葉にディルは不満そうにしたけれど、すぐに表情を戻して私の方に顔を向けて言う。
「俺は王族にしてはかなりがさつだし、レイアの様に気配りの出来る人間が近くにいてくれると助かる。もし、セレン殿下と俺が結婚してみろ。ターリー国がヤバい事になるぞ」
「セレン様に何も言わせなければいいだけですわ」
「セレン殿下は言うだろ。政治に関しては何も言わなくても、わたくしにかまってくれだとか、何だとか言いかねない」
「そ、それはそうかもしれませんね」
苦笑した時だった。
城の敷地内にあれど、迎賓館の周りは高い壁に囲まれていて、出入りするには門の近くにいる騎士に門を開けてもらわないといけない。
だからか、少し離れた場所から声が聞こえてきた。
「ちょっと! わたくしを誰だと思っているの! ロトス国の王族なのよ! リビンノ国なんて、ロトス国に比べれば小さなのんびりとした国じゃないの! わたくしに無礼な態度を取ったら国際問題になりますわよ! それでもよろしくって!? それが嫌なら、わたくしを中に入れなさい! どうしても、わたくしはディル様に会わなければいけないのよ!」
セレン様の叫ぶ声が聞こえて、私とディルは顔を見合わせ、ロンがため息を吐いて言う。
「帰っていただくようにお伝えしたらよろしいですか?」
「そうだな。ロン、お前は顔が良いし、そのついでに…」
「セレン殿下を私に押し付けようとするのはやめて下さい! 私には国に婚約者がいますんで!」
「冗談だよ。本気にするな」
「ごめんなさいね、ロン。ディル、ロンをからかうのはやめて下さい」
ロンはまだ若くて15歳の公爵家の次男だ。
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ロンはそう言うと、一礼して部屋を出て行った。
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