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騎士達の報告では、ハーデンは店の近くをウロウロしているという事でしたので、私達が店内で買い物をしている間に、騎士達に追い払ってもらう事にしました。
「彼は君のどんなところが好きだと言っていたんだ?」
「さあ? とにかくいただいたお手紙には好きだとしか書かれていませんでしたから」
「どういうところが良くて好きになったとかも書かれていなかったのか?」
「そうですね…」
気持ち悪い手紙だったので、記憶から追いやってしまっていたのですが、旦那様がどうしても知りたそうなので、一生懸命、思い出そうと努力してみます。
「はっきりとは思い出せないのですが、冷たいところが好きだとか、書いてあったような…」
「冷たいところが好きだと言うなら、今の君の対応は彼にとってはご褒美になるんじゃないのか?」
「気持ち悪いです」
「俺に言わないでくれ。それに、それは個人の好みの問題だから、そんなにはっきりと否定してやるな」
「私に関わらないのであれば、人の好みに対してどうこう言うつもりはございません。ですが、私に気持ちを求めてくるなら、拒否する権利もあるはずですよ」
冷たい人を好きだという事が駄目だと言っているわけではありません。
私としては、そう言って近付いてくる彼の態度が気持ち悪いので嫌だっただけです。
その事を伝えますと、旦那様が頷かれます。
「それはまあ、そうだな」
「私の気持ちが知りたいようでしたら、同じ事を私が旦那様にして差し上げますが?」
「俺にとっては迷惑じゃないから意味がないだろう」
「…迷惑ではないんですか? 怖い手紙を送られる事が?」
「どんな内容の手紙を送ってくるつもりだ」
「旦那様の事を思うと、犬が飼いたくなって、しょうがありませんとか」
「それは、その時の気分によってはイラッとするかもしれん」
「やっぱり、手紙を送られるのは嫌なんじゃないですか」
相変わらず不毛な会話のやり取りを続けていると、騎士の1人がハーデンを追いやってくれたというので、買った品物は別荘に送り届けてもらう事にして、次のお店に向かう事にしたのでした。
旦那さまとの初デートを無事に終了した頃には、日が落ち始めていて、久しぶりにたくさん歩いた事もあり、私はとっても疲れ切っていました。
馬車の中で向かいあって座っていると、ウトウトしてしまい、そのまま眠りについてしまったのですが、どれくらい眠ってしまったのでしょうか。
ふわふわの毛が顔に、何度も何度も触れる感触を覚えて、ゆっくりと顔を上げると、馬車の中の明かりに照らされて、犬になった旦那様が私を見ているのに気が付きました。
「どうなさったんですか、旦那様! 犬になりたくなってしまったんですか!?」
「違う! 馬車が揺れて、君の体が倒れそうになったから支えようとしたんだ!」
「それは申し訳ございません。助けていただき、ありがとうございます」
「助けたというより下敷きになっただけだがな」
旦那様は椅子の上で、もぞもぞと体を動かします。
長い間、枕になって下さっていたようです。
「どうしましょう。旦那様がいなくなって、犬が代わりにいたらおかしいですよね?」
「普通はそうだろうな」
旦那様の犬化は、一緒に付いてきてくれている使用人達は知りませんので焦ってしまう私ですが、旦那様はケロッとしています。
「どうするおつもりですか?」
呑気そうにしている旦那様に苛立ちを覚えて、少し強い口調で言った時でした。
別荘に着いたのか、馬車の動きが止まったのです。
「ど、どうしましょう!?」
「心配しなくていい」
焦る私に旦那様が答えた時でした。
馬車の扉が開かれ、御者が私と犬の旦那様を見て目を丸くしました。
「こ、この犬は怪しい犬ではなく…」
旦那様を抱きしめて言うと、御者は笑顔で言います。
「ああ。また旦那様が隠して連れてきたんですね」
「……隠して連れてきた?」
「ええ。旦那様は急用があると、魔道具を使って移動されるのですが、その際に、この犬を置いていかれるんです。最初は驚きましたが、大旦那様達からもそう聞いてますし、あまり深く考えない様にしています」
「そ、そんな感じで大丈夫なのですか?」
「害があるわけでもありませんし、旦那様達のお言葉を疑うわけにもいきませんでしょう?」
御者は苦笑すると、私を馬車から降ろしてくれると、犬の旦那様に話しかけます。
「お前をどこに連れて行くかだが、屋敷の中に入れていいものか…」
「責任を持って私が面倒みます!」
手を挙げて訴えると、御者が頷いてくれたので、旦那様に向かって言います。
「お屋敷に入る前に足をふきふきしましょうね…?」
「……」
旦那様は口を開けられましたが、すぐに閉じて、項垂れた様子で馬車から降りたのでした。
その後、夕食をとった後は、旦那様とお風呂に入る事にしました。
「な、何を考えてるんだ君は!」
「夫婦じゃないですか」
「恥じらいというものがないのか、君には!?」
「旦那様のものを見るのは嫌ですが、私は見られてもあまり気になりません」
「おかしい! 君の感覚はおかしい!」
「では、後日、旦那様のものを見せて」
「それもおかしい!」
旦那様が動揺されていて可愛らしいです。
後ろからタックルする様に抱きしめると、旦那様は一生懸命振り払おうとしますが、振り払われた私がころんと横に倒れると、慌てて近寄ってくるのです。
「だ、大丈夫か? 頭は打ってないか?」
「心が痛いです。そんなに私の裸、見たくないですか。タオルで隠しますよ?」
「見たくないといえば嘘になるが、あんな発言をした以上、そんな事は言えんだろう!」
「あら、旦那様ったらエッチです!」
「君が心が痛いとか言うからだろう!」
もふもふの旦那様に何を言われても可愛いしかありません。
結局、旦那様の背中を抱きしめる様な形で、私は旦那様とバスタブに浸かる事が出来たのですが、旦那様は動きを止めてしまっていて、会話さえも出来ませんでした。
でも、これで、世間様から旦那様とお風呂に入った事があるかどうか聞かれても、一緒に入ったと答えられますね!
夫婦仲は上手くやれていると思ってくださるでしょう。
とまあ、この日は楽しく過ごせたのですが、次の日、ハーデンが訪ねてきたせいで、私の幸せな気持ちは吹っ飛ぶことになるのでした。
「彼は君のどんなところが好きだと言っていたんだ?」
「さあ? とにかくいただいたお手紙には好きだとしか書かれていませんでしたから」
「どういうところが良くて好きになったとかも書かれていなかったのか?」
「そうですね…」
気持ち悪い手紙だったので、記憶から追いやってしまっていたのですが、旦那様がどうしても知りたそうなので、一生懸命、思い出そうと努力してみます。
「はっきりとは思い出せないのですが、冷たいところが好きだとか、書いてあったような…」
「冷たいところが好きだと言うなら、今の君の対応は彼にとってはご褒美になるんじゃないのか?」
「気持ち悪いです」
「俺に言わないでくれ。それに、それは個人の好みの問題だから、そんなにはっきりと否定してやるな」
「私に関わらないのであれば、人の好みに対してどうこう言うつもりはございません。ですが、私に気持ちを求めてくるなら、拒否する権利もあるはずですよ」
冷たい人を好きだという事が駄目だと言っているわけではありません。
私としては、そう言って近付いてくる彼の態度が気持ち悪いので嫌だっただけです。
その事を伝えますと、旦那様が頷かれます。
「それはまあ、そうだな」
「私の気持ちが知りたいようでしたら、同じ事を私が旦那様にして差し上げますが?」
「俺にとっては迷惑じゃないから意味がないだろう」
「…迷惑ではないんですか? 怖い手紙を送られる事が?」
「どんな内容の手紙を送ってくるつもりだ」
「旦那様の事を思うと、犬が飼いたくなって、しょうがありませんとか」
「それは、その時の気分によってはイラッとするかもしれん」
「やっぱり、手紙を送られるのは嫌なんじゃないですか」
相変わらず不毛な会話のやり取りを続けていると、騎士の1人がハーデンを追いやってくれたというので、買った品物は別荘に送り届けてもらう事にして、次のお店に向かう事にしたのでした。
旦那さまとの初デートを無事に終了した頃には、日が落ち始めていて、久しぶりにたくさん歩いた事もあり、私はとっても疲れ切っていました。
馬車の中で向かいあって座っていると、ウトウトしてしまい、そのまま眠りについてしまったのですが、どれくらい眠ってしまったのでしょうか。
ふわふわの毛が顔に、何度も何度も触れる感触を覚えて、ゆっくりと顔を上げると、馬車の中の明かりに照らされて、犬になった旦那様が私を見ているのに気が付きました。
「どうなさったんですか、旦那様! 犬になりたくなってしまったんですか!?」
「違う! 馬車が揺れて、君の体が倒れそうになったから支えようとしたんだ!」
「それは申し訳ございません。助けていただき、ありがとうございます」
「助けたというより下敷きになっただけだがな」
旦那様は椅子の上で、もぞもぞと体を動かします。
長い間、枕になって下さっていたようです。
「どうしましょう。旦那様がいなくなって、犬が代わりにいたらおかしいですよね?」
「普通はそうだろうな」
旦那様の犬化は、一緒に付いてきてくれている使用人達は知りませんので焦ってしまう私ですが、旦那様はケロッとしています。
「どうするおつもりですか?」
呑気そうにしている旦那様に苛立ちを覚えて、少し強い口調で言った時でした。
別荘に着いたのか、馬車の動きが止まったのです。
「ど、どうしましょう!?」
「心配しなくていい」
焦る私に旦那様が答えた時でした。
馬車の扉が開かれ、御者が私と犬の旦那様を見て目を丸くしました。
「こ、この犬は怪しい犬ではなく…」
旦那様を抱きしめて言うと、御者は笑顔で言います。
「ああ。また旦那様が隠して連れてきたんですね」
「……隠して連れてきた?」
「ええ。旦那様は急用があると、魔道具を使って移動されるのですが、その際に、この犬を置いていかれるんです。最初は驚きましたが、大旦那様達からもそう聞いてますし、あまり深く考えない様にしています」
「そ、そんな感じで大丈夫なのですか?」
「害があるわけでもありませんし、旦那様達のお言葉を疑うわけにもいきませんでしょう?」
御者は苦笑すると、私を馬車から降ろしてくれると、犬の旦那様に話しかけます。
「お前をどこに連れて行くかだが、屋敷の中に入れていいものか…」
「責任を持って私が面倒みます!」
手を挙げて訴えると、御者が頷いてくれたので、旦那様に向かって言います。
「お屋敷に入る前に足をふきふきしましょうね…?」
「……」
旦那様は口を開けられましたが、すぐに閉じて、項垂れた様子で馬車から降りたのでした。
その後、夕食をとった後は、旦那様とお風呂に入る事にしました。
「な、何を考えてるんだ君は!」
「夫婦じゃないですか」
「恥じらいというものがないのか、君には!?」
「旦那様のものを見るのは嫌ですが、私は見られてもあまり気になりません」
「おかしい! 君の感覚はおかしい!」
「では、後日、旦那様のものを見せて」
「それもおかしい!」
旦那様が動揺されていて可愛らしいです。
後ろからタックルする様に抱きしめると、旦那様は一生懸命振り払おうとしますが、振り払われた私がころんと横に倒れると、慌てて近寄ってくるのです。
「だ、大丈夫か? 頭は打ってないか?」
「心が痛いです。そんなに私の裸、見たくないですか。タオルで隠しますよ?」
「見たくないといえば嘘になるが、あんな発言をした以上、そんな事は言えんだろう!」
「あら、旦那様ったらエッチです!」
「君が心が痛いとか言うからだろう!」
もふもふの旦那様に何を言われても可愛いしかありません。
結局、旦那様の背中を抱きしめる様な形で、私は旦那様とバスタブに浸かる事が出来たのですが、旦那様は動きを止めてしまっていて、会話さえも出来ませんでした。
でも、これで、世間様から旦那様とお風呂に入った事があるかどうか聞かれても、一緒に入ったと答えられますね!
夫婦仲は上手くやれていると思ってくださるでしょう。
とまあ、この日は楽しく過ごせたのですが、次の日、ハーデンが訪ねてきたせいで、私の幸せな気持ちは吹っ飛ぶことになるのでした。
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