2 / 43
プロローグ
しおりを挟む
「結婚はしたけれど、君もわかっている通り、これは政略結婚だ。訳あって俺が君を愛する事は出来ないから、変な期待はしないでくれ。跡継ぎの事もこちらで考える」
「承知いたしました。ですが、愛する事は出来ないだなんて、いちいちそんな宣言をしていただかなくても結構ですよ? 私だって政略結婚だと理解しておりますから! そんな事を言われないといけないくらい、私が愛に飢えている様に見えるのでしょうか?」
「いや、そういう訳では…」
「では、ご心配なく! 期待などは一切致しませんから!」
「え? あ、ああ。わかった。それなら良いんだ」
形だけの結婚式後、私と旦那様はこんな会話をしました。
私の旦那様になった、シークス様は女性嫌いで有名な方ですので、元々、期待はしておりませんでした。
何より、私と旦那様の結婚は政略結婚です。
愛なんてありません。
特に憎しみもありませんが。
旦那様は私を妻にして、いつか公爵になる、お兄様との繋がりが欲しかったのです。
そして、私の家の方は、同じく公爵家である、旦那様の財力と権力が目当てでした。
お兄様と旦那様は学生時代からの友人で仲も良いのですが、両親にしてみれば、兄の友人であれば、政略結婚であっても、私を大事にしてくれるだろうと思ったようです。
とまあ、そんな双方の思惑もあり、私は、18歳になってすぐ、3つ年上の旦那様のお飾りの妻になりました。
しかも、大してやる事のない、お飾りの妻のようです。
ですが、どこまで好きにして良いかはわかりません。
『愛する事は出来ない』なんて言葉はいらないですから、自由に好き勝手してくれたら良い、とか言ってほしかったです。
あ、今から、お願いしてくれば良いんですね!
結婚式の次の日、私、エレノア・ヘイル公爵令嬢、ではなく、エレノア・クロフォード公爵夫人は、目覚めてからベッドの上で、しばらくゴロゴロしておりましたが、名案が思い浮かんだので、勢いよく起き上がりました。
サイドテーブルに置いていた金色のベルを鳴らすと、実家から付いてきてくれたメイドのジャスミンが部屋に入って来て、手慣れた様子で私の寝癖だらけの腰まであるこげ茶色の髪をシニヨンにし、他の身支度も整えてくれました。
「お嬢様、ではなく、奥様、今日はどうすごされるおつもりですか?」
「まずは朝食後、旦那様の側近、もしくは執事に、旦那様の今日のご予定を聞くつもりです」
「聞いて、どうされるおつもりですか?」
紺のメイド服のジャスミンは赤色の肩までのストレートの髪を揺らし、小首を傾げました。
「私の自由がどこまで許されているのか確認しようと思います!」
「そうですね。奥様の事を愛さないという話、旦那さまからの愛情は期待するな、世継ぎの問題は気にするな、としか言われてませんものね!」
ジャスミンが両手に拳を作って頷いてくれました。
ジャスミンや屋敷にいる他の何人かのメイドも、旦那様と私の会話を聞いていたので、すでに、私と旦那様の仲が、始まってもいないけれど、冷え切ったものである事は、屋敷の皆は気付いているはずです。
普通なら肩身が狭い気持ちになるかもしれませんが、私が嫁にきたことだけでも、旦那様のメリットになっているのです。
何もできなくて申し訳ない。
だなんて、思わなくても良いと思うんですよね!
もちろん、迷惑をかける事は控えなければいけません。
旦那様にだって、許せるものと許せないものがあるはずです。
人によって何が地雷になるかはわかりません。
ですので、お互いに気分良く過ごす為に、何が嫌かは、はっきりさせておく事は必要です。
「穏やかな暮らしと自由の権利を獲得する為に、旦那様に会いに行きます! 会いに来るなとは言われませんでしたからね! それに迷惑をかけないように確認は必要ですから!」
昔から前向きすぎると言われている性格です。
旦那様はその事を知っておられるかはわかりませんが、旦那様が言いたい事を言ってこられたのですから、私も多少は言わせていただきましょう!
それに愛する事が出来ない、だなんて言われてしまったら、愛させてみろと言われているものではないですか?
私が旦那様に興味を持つ事があれば、そのお言葉、ぜひ、後悔させてさしあげたいものですね!
「承知いたしました。ですが、愛する事は出来ないだなんて、いちいちそんな宣言をしていただかなくても結構ですよ? 私だって政略結婚だと理解しておりますから! そんな事を言われないといけないくらい、私が愛に飢えている様に見えるのでしょうか?」
「いや、そういう訳では…」
「では、ご心配なく! 期待などは一切致しませんから!」
「え? あ、ああ。わかった。それなら良いんだ」
形だけの結婚式後、私と旦那様はこんな会話をしました。
私の旦那様になった、シークス様は女性嫌いで有名な方ですので、元々、期待はしておりませんでした。
何より、私と旦那様の結婚は政略結婚です。
愛なんてありません。
特に憎しみもありませんが。
旦那様は私を妻にして、いつか公爵になる、お兄様との繋がりが欲しかったのです。
そして、私の家の方は、同じく公爵家である、旦那様の財力と権力が目当てでした。
お兄様と旦那様は学生時代からの友人で仲も良いのですが、両親にしてみれば、兄の友人であれば、政略結婚であっても、私を大事にしてくれるだろうと思ったようです。
とまあ、そんな双方の思惑もあり、私は、18歳になってすぐ、3つ年上の旦那様のお飾りの妻になりました。
しかも、大してやる事のない、お飾りの妻のようです。
ですが、どこまで好きにして良いかはわかりません。
『愛する事は出来ない』なんて言葉はいらないですから、自由に好き勝手してくれたら良い、とか言ってほしかったです。
あ、今から、お願いしてくれば良いんですね!
結婚式の次の日、私、エレノア・ヘイル公爵令嬢、ではなく、エレノア・クロフォード公爵夫人は、目覚めてからベッドの上で、しばらくゴロゴロしておりましたが、名案が思い浮かんだので、勢いよく起き上がりました。
サイドテーブルに置いていた金色のベルを鳴らすと、実家から付いてきてくれたメイドのジャスミンが部屋に入って来て、手慣れた様子で私の寝癖だらけの腰まであるこげ茶色の髪をシニヨンにし、他の身支度も整えてくれました。
「お嬢様、ではなく、奥様、今日はどうすごされるおつもりですか?」
「まずは朝食後、旦那様の側近、もしくは執事に、旦那様の今日のご予定を聞くつもりです」
「聞いて、どうされるおつもりですか?」
紺のメイド服のジャスミンは赤色の肩までのストレートの髪を揺らし、小首を傾げました。
「私の自由がどこまで許されているのか確認しようと思います!」
「そうですね。奥様の事を愛さないという話、旦那さまからの愛情は期待するな、世継ぎの問題は気にするな、としか言われてませんものね!」
ジャスミンが両手に拳を作って頷いてくれました。
ジャスミンや屋敷にいる他の何人かのメイドも、旦那様と私の会話を聞いていたので、すでに、私と旦那様の仲が、始まってもいないけれど、冷え切ったものである事は、屋敷の皆は気付いているはずです。
普通なら肩身が狭い気持ちになるかもしれませんが、私が嫁にきたことだけでも、旦那様のメリットになっているのです。
何もできなくて申し訳ない。
だなんて、思わなくても良いと思うんですよね!
もちろん、迷惑をかける事は控えなければいけません。
旦那様にだって、許せるものと許せないものがあるはずです。
人によって何が地雷になるかはわかりません。
ですので、お互いに気分良く過ごす為に、何が嫌かは、はっきりさせておく事は必要です。
「穏やかな暮らしと自由の権利を獲得する為に、旦那様に会いに行きます! 会いに来るなとは言われませんでしたからね! それに迷惑をかけないように確認は必要ですから!」
昔から前向きすぎると言われている性格です。
旦那様はその事を知っておられるかはわかりませんが、旦那様が言いたい事を言ってこられたのですから、私も多少は言わせていただきましょう!
それに愛する事が出来ない、だなんて言われてしまったら、愛させてみろと言われているものではないですか?
私が旦那様に興味を持つ事があれば、そのお言葉、ぜひ、後悔させてさしあげたいものですね!
30
お気に入りに追加
2,396
あなたにおすすめの小説
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
お飾り王妃の受難〜陛下からの溺愛?!ちょっと意味がわからないのですが〜
湊未来
恋愛
王に見捨てられた王妃。それが、貴族社会の認識だった。
二脚並べられた玉座に座る王と王妃は、微笑み合う事も、会話を交わす事もなければ、目を合わす事すらしない。そんな二人の様子に王妃ティアナは、いつしか『お飾り王妃』と呼ばれるようになっていた。
そんな中、暗躍する貴族達。彼らの行動は徐々にエスカレートして行き、王妃が参加する夜会であろうとお構いなしに娘を王に、けしかける。
王の周りに沢山の美しい蝶が群がる様子を見つめ、ティアナは考えていた。
『よっしゃ‼︎ お飾り王妃なら、何したって良いわよね。だって、私の存在は空気みたいなものだから………』
1年後……
王宮で働く侍女達の間で囁かれるある噂。
『王妃の間には恋のキューピッドがいる』
王妃付き侍女の間に届けられる大量の手紙を前に侍女頭は頭を抱えていた。
「ティアナ様!この手紙の山どうするんですか⁈ 流石に、さばききれませんよ‼︎」
「まぁまぁ。そんなに怒らないの。皆様、色々とお悩みがあるようだし、昔も今も恋愛事は有益な情報を得る糧よ。あと、ここでは王妃ティアナではなく新人侍女ティナでしょ」
……あら?
この筆跡、陛下のものではなくって?
まさかね……
一通の手紙から始まる恋物語。いや、違う……
お飾り王妃による無自覚プチざまぁが始まる。
愛しい王妃を前にすると無口になってしまう王と、お飾り王妃と勘違いしたティアナのすれ違いラブコメディ&ミステリー
【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。
千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。
だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。
いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……?
と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星河由乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
生まれたときから今日まで無かったことにしてください。
はゆりか
恋愛
産まれた時からこの国の王太子の婚約者でした。
物心がついた頃から毎日自宅での王妃教育。
週に一回王城にいき社交を学び人脈作り。
当たり前のように生活してしていき気づいた時には私は1人だった。
家族からも婚約者である王太子からも愛されていないわけではない。
でも、わたしがいなくてもなんら変わりのない。
家族の中心は姉だから。
決して虐げられているわけではないけどパーティーに着て行くドレスがなくても誰も気づかれないそんな境遇のわたしが本当の愛を知り溺愛されて行くストーリー。
…………
処女作品の為、色々問題があるかとおもいますが、温かく見守っていただけたらとおもいます。
本編完結。
番外編数話続きます。
続編(2章)
『婚約破棄されましたが、婚約解消された隣国王太子に恋しました』連載スタートしました。
そちらもよろしくお願いします。
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる