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8 私の婚約者が浮気をする理由 2
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次の日、ソフィアが帰った後、ララベルは家族に、ニールともう一度、しっかり話をしてみるという話をした。
最初は渋っていた両親達だったが、ララベルのしたい様にすれば良いと、最終的には認めてくれた。
ララベルはニールに手紙を書き、会いたい旨を伝えたところ、彼からの返答は「婚約の解消はしない」というものだけだった。
その為、あなたを傷付けたのなら謝りたいし、浮気をする理由や、どうしたらやめてくれるのか、話を聞きたいから、都合の良い日に会えないかと連絡したところ、忙しいので1ヶ月先にしてほしいと返ってきた。
ここ最近、隣国との関係が悪化しており、南側にあたる、メフェナム辺境伯の領地での戦いには勝利したものの、メフェナム辺境伯に隣接する東側の辺境伯の方では、戦争が長引いており、どちらかというと、ムダルガ国の方が押されている状態だった。
その為、東側に兵力をという話になり、隣接する地域から兵を出す事になったのだ。
ニールも出征する事になっていた為、1ヶ月後を指定してきた様だった。
それを知ったララベルは、慌てて、日にちは戦争から無事に帰ってきてからでいいという事、婚約の解消についての話ではなく、お互いに歩み寄れる話し合いにするつもりだという事と、心から無事を祈るという連絡をした。
やはり、彼女の中では自分がフィアンを忘れられない事に負い目を感じていたし、その事が戦争へ行くニールにとって、負の要素にならない様にしたかった。
ニールはその手紙を読んで、とても喜んだ。
1ヶ月後に必ず会おうという手紙をララベルに返し、彼は出立した。
その手紙がララベルに届く頃には、彼も戦地に着き、状況を把握し始めていた。
ララベルが父に確認したところ、戦況はとても悪かった。
しかし、兵が集まった事により、希望が持ててきたところだった。
約束の日の一週間前にララベルの元に知らせが届いた。
それは驚きの内容だった。
その内容はキーギス公爵から、ララベルに告げられた。
「ニール様が逃げようとしている?」
「逃げようとしているというか、お前との約束があるから帰ると言い出していて、南の辺境伯側の士気の低下が心配されている」
「そんな、嘘でしょう!? どうしたらいんですか、お父様。私が向こうに赴いたらよろしいのでしょうか? 話し合いは、戦争が終わってからでかまいませんと伝えていましたのに」
「厳しいらしい」
「…どういう事ですか?」
「向こうも総力戦をかけてきた。このままでは、東側はとられる」
「撤兵しようとしている事ですか?」
(それなら、逃げるだなんて言わないはずだけれど…)
ララベルが不思議に思って聞き返すと、父は首を横に振った。
「いや、戦地を去ろうとしているのは彼だけだ。東の兵は、自分の家族を守ろうと戦ってる。それを目にした以上、北の兵も逃げないと言っている様だ。何より、援軍を送る話になっているから、それまで持ちこたえようと頑張ってくれている」
「援軍…?」
「ニールが自分は約束があるから帰らないといけないが、自分の代わりの指揮をフィアンに頼んだ」
「フィアン兄様に!?」
「フィアンは、戦況を気にしていたし、ニールからの依頼に迷うことなく出征する事を選んだ様だ」
「…という事は、ミーデンバーグ家が出るんですね」
それだけ劣勢な状況で援軍となると、フィアンが出るという事は、ミーデンバーグの兵が出る上に、ミーデンバーグ公爵夫人の部族も出る可能性が出てくるので、ララベルは呟いた。
(ニール様が帰ったとわかったら、とにかくすぐに会いに行かなくちゃ)
「ミーデンバーグ家は怒っている」
「どういう事です?」
「戦地から去る事に怒っているのではなく、戦況が悪いから、フィアンに行かせようとしているんじゃないかと」
「まさか、そんな…」
(私の事があるから、フィアン兄様を行かせようとしてるんじゃないわよね?)
父は、自分も出征しなければいけないかもしれないと話した為、話題が切り替わり、その話については、特に触れる事はなかった。
そして、ニールとの約束の前日の事、ララベルの元に一人の女性が訪ねてきた。
何度か夜会で顔を合わせた事のある伯爵令嬢で、どことなく、雰囲気がララベルに似ていた。
「私に何かお話が…?」
事前に訪ねてくる話は聞いていたので、応接室で、ソファーにテーブルをはさんで向かい合って座り、ララベルが尋ねると、濃いブルーのドレスに身を包み、黒髪をハーフアップにした、大人しそうなジェラ伯爵令嬢は、ララベルに厳しい表情で言った。
「ニール様との婚約を破棄していただけませんか」
「いきなり、どうされたんです?」
「昨日の晩、私はベッドの中でニール様に聞いたんです。明日、キーギス公爵令嬢が彼の元に来ると…」
「ベッドの中で…?」
ララベルは困惑した。
彼が戦地から戻るのは今日だと聞いていたからだ。
そして、何より、浮気を続けている事に驚いた。
「私は、フィアン様の婚約者候補でしたが、お断りしたんです。あんな野蛮な方の妻になるだなんて、絶対に嫌ですもの」
「……まさか」
「そうです。ニール様はそれを知って、私に近付かれました。私も最初は断っておりましたが、いつの間にか、彼が可哀想になり、彼を愛してしまいました。今の彼の興味は、フィアン様に勝つ事だけなんです。今回の事も、フィアン様が死ねば良いと仰っていました。…ララベル様、あんな野蛮人が好きなあなたに、ニール様は渡せません。私にニール様を譲ってもらえませんか」
ジェラ伯爵令嬢は、ララベルに向かって、頭を下げた。
最初は渋っていた両親達だったが、ララベルのしたい様にすれば良いと、最終的には認めてくれた。
ララベルはニールに手紙を書き、会いたい旨を伝えたところ、彼からの返答は「婚約の解消はしない」というものだけだった。
その為、あなたを傷付けたのなら謝りたいし、浮気をする理由や、どうしたらやめてくれるのか、話を聞きたいから、都合の良い日に会えないかと連絡したところ、忙しいので1ヶ月先にしてほしいと返ってきた。
ここ最近、隣国との関係が悪化しており、南側にあたる、メフェナム辺境伯の領地での戦いには勝利したものの、メフェナム辺境伯に隣接する東側の辺境伯の方では、戦争が長引いており、どちらかというと、ムダルガ国の方が押されている状態だった。
その為、東側に兵力をという話になり、隣接する地域から兵を出す事になったのだ。
ニールも出征する事になっていた為、1ヶ月後を指定してきた様だった。
それを知ったララベルは、慌てて、日にちは戦争から無事に帰ってきてからでいいという事、婚約の解消についての話ではなく、お互いに歩み寄れる話し合いにするつもりだという事と、心から無事を祈るという連絡をした。
やはり、彼女の中では自分がフィアンを忘れられない事に負い目を感じていたし、その事が戦争へ行くニールにとって、負の要素にならない様にしたかった。
ニールはその手紙を読んで、とても喜んだ。
1ヶ月後に必ず会おうという手紙をララベルに返し、彼は出立した。
その手紙がララベルに届く頃には、彼も戦地に着き、状況を把握し始めていた。
ララベルが父に確認したところ、戦況はとても悪かった。
しかし、兵が集まった事により、希望が持ててきたところだった。
約束の日の一週間前にララベルの元に知らせが届いた。
それは驚きの内容だった。
その内容はキーギス公爵から、ララベルに告げられた。
「ニール様が逃げようとしている?」
「逃げようとしているというか、お前との約束があるから帰ると言い出していて、南の辺境伯側の士気の低下が心配されている」
「そんな、嘘でしょう!? どうしたらいんですか、お父様。私が向こうに赴いたらよろしいのでしょうか? 話し合いは、戦争が終わってからでかまいませんと伝えていましたのに」
「厳しいらしい」
「…どういう事ですか?」
「向こうも総力戦をかけてきた。このままでは、東側はとられる」
「撤兵しようとしている事ですか?」
(それなら、逃げるだなんて言わないはずだけれど…)
ララベルが不思議に思って聞き返すと、父は首を横に振った。
「いや、戦地を去ろうとしているのは彼だけだ。東の兵は、自分の家族を守ろうと戦ってる。それを目にした以上、北の兵も逃げないと言っている様だ。何より、援軍を送る話になっているから、それまで持ちこたえようと頑張ってくれている」
「援軍…?」
「ニールが自分は約束があるから帰らないといけないが、自分の代わりの指揮をフィアンに頼んだ」
「フィアン兄様に!?」
「フィアンは、戦況を気にしていたし、ニールからの依頼に迷うことなく出征する事を選んだ様だ」
「…という事は、ミーデンバーグ家が出るんですね」
それだけ劣勢な状況で援軍となると、フィアンが出るという事は、ミーデンバーグの兵が出る上に、ミーデンバーグ公爵夫人の部族も出る可能性が出てくるので、ララベルは呟いた。
(ニール様が帰ったとわかったら、とにかくすぐに会いに行かなくちゃ)
「ミーデンバーグ家は怒っている」
「どういう事です?」
「戦地から去る事に怒っているのではなく、戦況が悪いから、フィアンに行かせようとしているんじゃないかと」
「まさか、そんな…」
(私の事があるから、フィアン兄様を行かせようとしてるんじゃないわよね?)
父は、自分も出征しなければいけないかもしれないと話した為、話題が切り替わり、その話については、特に触れる事はなかった。
そして、ニールとの約束の前日の事、ララベルの元に一人の女性が訪ねてきた。
何度か夜会で顔を合わせた事のある伯爵令嬢で、どことなく、雰囲気がララベルに似ていた。
「私に何かお話が…?」
事前に訪ねてくる話は聞いていたので、応接室で、ソファーにテーブルをはさんで向かい合って座り、ララベルが尋ねると、濃いブルーのドレスに身を包み、黒髪をハーフアップにした、大人しそうなジェラ伯爵令嬢は、ララベルに厳しい表情で言った。
「ニール様との婚約を破棄していただけませんか」
「いきなり、どうされたんです?」
「昨日の晩、私はベッドの中でニール様に聞いたんです。明日、キーギス公爵令嬢が彼の元に来ると…」
「ベッドの中で…?」
ララベルは困惑した。
彼が戦地から戻るのは今日だと聞いていたからだ。
そして、何より、浮気を続けている事に驚いた。
「私は、フィアン様の婚約者候補でしたが、お断りしたんです。あんな野蛮な方の妻になるだなんて、絶対に嫌ですもの」
「……まさか」
「そうです。ニール様はそれを知って、私に近付かれました。私も最初は断っておりましたが、いつの間にか、彼が可哀想になり、彼を愛してしまいました。今の彼の興味は、フィアン様に勝つ事だけなんです。今回の事も、フィアン様が死ねば良いと仰っていました。…ララベル様、あんな野蛮人が好きなあなたに、ニール様は渡せません。私にニール様を譲ってもらえませんか」
ジェラ伯爵令嬢は、ララベルに向かって、頭を下げた。
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