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20 痛い目に遭ってもらうしかありませんね!
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門兵と話を終えたキール様は馬を門兵に預けたあと、私に駆け寄ってきた。
「申し訳ございませんでした。まさか、兄がここまで来るとは思っていませんでした」
「気にしないでください。お姉様がきっと無理を言って連れてきたんだと思います」
「家族でここに来ようとしても、いつも虫がいるからと嫌だ言って来ないんですけど、やはり、婚約者の前では良いところを見せたかったんですかね」
「そうかもしれません。でも、計画性がなさすぎる気がしますが」
お姉様と一緒にカーコさんに追われているポッコエ様を見て言うと、キール様は苦笑する。
「計画性のあるような人なら、よっぽどじゃない限り、衝動的に動いたりしませんよ」
「そうですね」
同意してから、一度言葉を区切って問いかける。
「ポッコエ様たちがここに来た目的が私の所へ来るためだったとしても、ここから動いたほうが良さそうですね」
「兄はここに来た理由は何か言っていましたか?」
「はい。お医者様からカーコさんの話を聞いたんだそうです」
「お医者様から?」
不思議そうにするキール様に説明する。
「最近、使用人が体調を壊して、お医者様に来てもらったんです。高熱だったので、馬車に揺られることは良くないと思いまして」
「そのことはカーコから聞いていますから、気にしなくてかまいませんよ」
「ありがとうございます。その時に、ラシルくんがカーコさんと庭で遊んでいたんです」
「人の言葉を話すカラスを見て驚いたというところですか。屋敷内で見たものは、公言しないように伝えていますし、話さないのが人のモラルだと思うのですが、ポッコエが相手だったので良いと思ったんでしょうね」
キール様は大きな息を吐くと、お医者様には他にも誰かにその話をしていないか確認すると言った。
守秘義務というものがあるから、他人には言ってないと思うけれど、確認は必要ですものね。
「カーコのことは、ラシル様を捜している悪い奴らは知りません。だから、すぐに動かなくても大丈夫だとは思いますが、次の地を用意します。申し訳ございませんが、旅立つ準備をお願いできますか」
「承知しました。別荘ですから長居していても怪しまれるかもしれないと、ラシルくんと話はしていたんです」
まさか、ポッコエ様に見つかるとは思ってなかったですけどね。
だって、そんなことを考えられる人じゃないと思ってたんだもの!
お姉様を追いかけ回して満足したのか、カーコさんが私たちの元に飛んできた。
「あいつらはラシル目当てじゃないみたいネ。ミリアーナが目的のようヨ」
「あいつらというより、お姉様だけが追いかけたかったみたいですね」
こうなったら、もう二度と追いかけてこれないように、お姉様には痛い目に遭ってもらうしかありませんね!
「キール様」
「何でしょう」
「こうなったのは私の責任です。姉とポッコエ様の件は私に任せていただけますか」
「こちらが迷惑をかけているんですから、ミリアーナさんおまかせするわけにはいかないでしょう」
「いいえ。今まで生きてこれたのはキール様たちのおかげです。キール様たちがいなければ、すでに私は殺されていたでしょうし、ラシル様もどうなっていたかわかりません」
ポッコエ様が連れてきた子供だったし、ポッコエ様に任せておくくらいなら、私が育てたほうが良いと思った。
だけど、今となっては本当はもっと早くに彼を公爵家に預けるべきだったと後悔している。
お姉様という面倒な人間がいるせいで、ラシルくんに迷惑をかけてしまっているんですもの。
ラシルくんが私に懐いてくれていることだけが救いだわ。
「そう言っていただけると助かりますが、ミリアーナ様のおかげで、こちらも本当に助かっているんですよ。ラシル様が今、明るい状態でいられるのはあなたがいたからだと思います」
「ありがとうございます」
軽く頭を下げ、カーコ様とはアイコンタクトをしてから、シルバートレイを握りしめて門の外に出る。
すると、お姉様が涙目で訴えてきた。
「ミリアーナ! 助けて! ほら! 血が出ているわ! 手当てをしてほしいの! 中に入れてちょうだい!」
「街に行けば手当てをしてもらえますよ。ポッコエ様はお医者様とお知り合いのようですし、診てもらってはいかがでしょう」
「嫌よ! 私は帰らないから! 馬車だって帰らせたのよ!」
「では、歩いてお帰りください」
「なんて妹なの!」
お姉様が手を出そうとしてきたので、私はティアトレイでお姉様の頬を叩いた。
「きゃあっ!」
お姉様は悲鳴を上げて地面に倒れる。
頭はすでに乱れていて叩きにくそうだったので、叩きやすい頬にしてあげた。
何もしていない相手にティアトレイを使うのは取扱説明書では禁止されている。
でも、今はお姉様から暴力をふるわれそうになったんですから、ティアトレイを使っても良いですよね。
「申し訳ございませんでした。まさか、兄がここまで来るとは思っていませんでした」
「気にしないでください。お姉様がきっと無理を言って連れてきたんだと思います」
「家族でここに来ようとしても、いつも虫がいるからと嫌だ言って来ないんですけど、やはり、婚約者の前では良いところを見せたかったんですかね」
「そうかもしれません。でも、計画性がなさすぎる気がしますが」
お姉様と一緒にカーコさんに追われているポッコエ様を見て言うと、キール様は苦笑する。
「計画性のあるような人なら、よっぽどじゃない限り、衝動的に動いたりしませんよ」
「そうですね」
同意してから、一度言葉を区切って問いかける。
「ポッコエ様たちがここに来た目的が私の所へ来るためだったとしても、ここから動いたほうが良さそうですね」
「兄はここに来た理由は何か言っていましたか?」
「はい。お医者様からカーコさんの話を聞いたんだそうです」
「お医者様から?」
不思議そうにするキール様に説明する。
「最近、使用人が体調を壊して、お医者様に来てもらったんです。高熱だったので、馬車に揺られることは良くないと思いまして」
「そのことはカーコから聞いていますから、気にしなくてかまいませんよ」
「ありがとうございます。その時に、ラシルくんがカーコさんと庭で遊んでいたんです」
「人の言葉を話すカラスを見て驚いたというところですか。屋敷内で見たものは、公言しないように伝えていますし、話さないのが人のモラルだと思うのですが、ポッコエが相手だったので良いと思ったんでしょうね」
キール様は大きな息を吐くと、お医者様には他にも誰かにその話をしていないか確認すると言った。
守秘義務というものがあるから、他人には言ってないと思うけれど、確認は必要ですものね。
「カーコのことは、ラシル様を捜している悪い奴らは知りません。だから、すぐに動かなくても大丈夫だとは思いますが、次の地を用意します。申し訳ございませんが、旅立つ準備をお願いできますか」
「承知しました。別荘ですから長居していても怪しまれるかもしれないと、ラシルくんと話はしていたんです」
まさか、ポッコエ様に見つかるとは思ってなかったですけどね。
だって、そんなことを考えられる人じゃないと思ってたんだもの!
お姉様を追いかけ回して満足したのか、カーコさんが私たちの元に飛んできた。
「あいつらはラシル目当てじゃないみたいネ。ミリアーナが目的のようヨ」
「あいつらというより、お姉様だけが追いかけたかったみたいですね」
こうなったら、もう二度と追いかけてこれないように、お姉様には痛い目に遭ってもらうしかありませんね!
「キール様」
「何でしょう」
「こうなったのは私の責任です。姉とポッコエ様の件は私に任せていただけますか」
「こちらが迷惑をかけているんですから、ミリアーナさんおまかせするわけにはいかないでしょう」
「いいえ。今まで生きてこれたのはキール様たちのおかげです。キール様たちがいなければ、すでに私は殺されていたでしょうし、ラシル様もどうなっていたかわかりません」
ポッコエ様が連れてきた子供だったし、ポッコエ様に任せておくくらいなら、私が育てたほうが良いと思った。
だけど、今となっては本当はもっと早くに彼を公爵家に預けるべきだったと後悔している。
お姉様という面倒な人間がいるせいで、ラシルくんに迷惑をかけてしまっているんですもの。
ラシルくんが私に懐いてくれていることだけが救いだわ。
「そう言っていただけると助かりますが、ミリアーナ様のおかげで、こちらも本当に助かっているんですよ。ラシル様が今、明るい状態でいられるのはあなたがいたからだと思います」
「ありがとうございます」
軽く頭を下げ、カーコ様とはアイコンタクトをしてから、シルバートレイを握りしめて門の外に出る。
すると、お姉様が涙目で訴えてきた。
「ミリアーナ! 助けて! ほら! 血が出ているわ! 手当てをしてほしいの! 中に入れてちょうだい!」
「街に行けば手当てをしてもらえますよ。ポッコエ様はお医者様とお知り合いのようですし、診てもらってはいかがでしょう」
「嫌よ! 私は帰らないから! 馬車だって帰らせたのよ!」
「では、歩いてお帰りください」
「なんて妹なの!」
お姉様が手を出そうとしてきたので、私はティアトレイでお姉様の頬を叩いた。
「きゃあっ!」
お姉様は悲鳴を上げて地面に倒れる。
頭はすでに乱れていて叩きにくそうだったので、叩きやすい頬にしてあげた。
何もしていない相手にティアトレイを使うのは取扱説明書では禁止されている。
でも、今はお姉様から暴力をふるわれそうになったんですから、ティアトレイを使っても良いですよね。
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