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17 任せてください!
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何ものかが近付いているのを知らせてくれたのは、カーコさんだった。
ラシルくんの勉強を見ている時に、私だけ別室に呼び出して話をしてくれた。
「あの野郎とミリアーナに良く似た女性が屋敷に向かっているわヨ」
「……あの野郎というのが誰だかわからないんですが? それに、私に良く似た女性もいるんですか?」
「エエ。遠目だからはっきりとは見えてないけど、ドレス姿で森の中を歩いていたワ。あの野郎っていうのは、キールの兄のことヨ」
「ポッコエ様がこちらに向かってきているんですか!?」
別荘の周りは森に囲まれているので、窓から見ても見えるわけがない。
それなのに、思わず窓から外を見てしまった。
「門兵に伝えておいたほうがよいですよね」
「それなら、もう伝えてあるから大丈夫ヨ」
「ありがとうございます。本当に助かります。でも、2人は何をしにここに来るのでしょうか」
「わからないワ。キールから連絡がないということは、彼も2人が来ていることを知らないみたいだし、ひとっ飛びして連絡してくるけど、一人でだいじょうブ?」
「任せてください! 使っても良い相手がいなかったので、ちょうど実験台になる弱い人が来てくれたのは助かります」
ここに来てから、キール様は自分の休みの日に顔を出しに来てくれていた。
その時に、シルバートレイの扱い方や、簡単な護身術を教えてもらった。
といっても、こういう場合はこのような動きをすれば良いというお手本を見せてもらっただけなので、実践はまだだった。
相手が戦いに慣れた人なら、私が敵うわけがない。
でも、ポッコエ様は貴族の令息なのに、剣の鍛錬が嫌いでサボってばかりいた。
だから、前回もティアトレイで対処できたのだ。
お姉様やポッコエ様が相手なら、昔よりかは、ティアトレイを使いこなせるようになったから迎え撃てると思います!
それにしても、ポッコエ様はティアトレイの餌食になりたいみたいですね。
お姉様も酷い場合はちょっと痛い目に遭ってもらいましょうか。
それとも、お姉様だけ森に放り出そうかしら。
ポッコエ様のことは狼が覚えている可能性はあるけど、お姉様のことは敵とみなすでしょうから。
問題は私とお姉様の匂いが似ていた場合だ。
姉妹だから体の匂いが似ていてもおかしくない。
そうなると、狼は襲っていいのか迷いそうなのよね。
外見が似ていなかったらまだしも、似ているから余計にだわ。
私が黙り込んだからか、カーコさんが私に話しかける。
「やっぱり、気になるからあたしも残るワ。今から報告しに行っても遅いしネ。とにかく、しつこいようなら叩きのめしましょうカ。あたしも手伝うワ」
「カーコさんは戦えるんですか?」
「まあ、見てなさいヨ。あたしは普通のカラスじゃないからネ」
カーコさんは羽を自分の胸に当てて言った。
正確には見た目がカラスの使い魔なんでしょうけど、そこはツッコまないでおくことにした。
「ポッコエ様たちが何をしに来たのか確認しましょう。私やラシルくんを探して来たというのであれば……」
「馬鹿が見つけられるんだモノ。他の人も気付いている可能性が高いわネ」
「ということは、ここにはもういられないということですね」
せっかく住み慣れてきたのにと、気が重くなったけど、ラシルくんの安全が大事ですもの。
ラシルくんもきっと、理解してくれるはず。
そう思って、窓の外をもう一度見ると、お姉様とポッコエ様が門兵と話をしている姿が見えた。
ラシルくんの勉強を見ている時に、私だけ別室に呼び出して話をしてくれた。
「あの野郎とミリアーナに良く似た女性が屋敷に向かっているわヨ」
「……あの野郎というのが誰だかわからないんですが? それに、私に良く似た女性もいるんですか?」
「エエ。遠目だからはっきりとは見えてないけど、ドレス姿で森の中を歩いていたワ。あの野郎っていうのは、キールの兄のことヨ」
「ポッコエ様がこちらに向かってきているんですか!?」
別荘の周りは森に囲まれているので、窓から見ても見えるわけがない。
それなのに、思わず窓から外を見てしまった。
「門兵に伝えておいたほうがよいですよね」
「それなら、もう伝えてあるから大丈夫ヨ」
「ありがとうございます。本当に助かります。でも、2人は何をしにここに来るのでしょうか」
「わからないワ。キールから連絡がないということは、彼も2人が来ていることを知らないみたいだし、ひとっ飛びして連絡してくるけど、一人でだいじょうブ?」
「任せてください! 使っても良い相手がいなかったので、ちょうど実験台になる弱い人が来てくれたのは助かります」
ここに来てから、キール様は自分の休みの日に顔を出しに来てくれていた。
その時に、シルバートレイの扱い方や、簡単な護身術を教えてもらった。
といっても、こういう場合はこのような動きをすれば良いというお手本を見せてもらっただけなので、実践はまだだった。
相手が戦いに慣れた人なら、私が敵うわけがない。
でも、ポッコエ様は貴族の令息なのに、剣の鍛錬が嫌いでサボってばかりいた。
だから、前回もティアトレイで対処できたのだ。
お姉様やポッコエ様が相手なら、昔よりかは、ティアトレイを使いこなせるようになったから迎え撃てると思います!
それにしても、ポッコエ様はティアトレイの餌食になりたいみたいですね。
お姉様も酷い場合はちょっと痛い目に遭ってもらいましょうか。
それとも、お姉様だけ森に放り出そうかしら。
ポッコエ様のことは狼が覚えている可能性はあるけど、お姉様のことは敵とみなすでしょうから。
問題は私とお姉様の匂いが似ていた場合だ。
姉妹だから体の匂いが似ていてもおかしくない。
そうなると、狼は襲っていいのか迷いそうなのよね。
外見が似ていなかったらまだしも、似ているから余計にだわ。
私が黙り込んだからか、カーコさんが私に話しかける。
「やっぱり、気になるからあたしも残るワ。今から報告しに行っても遅いしネ。とにかく、しつこいようなら叩きのめしましょうカ。あたしも手伝うワ」
「カーコさんは戦えるんですか?」
「まあ、見てなさいヨ。あたしは普通のカラスじゃないからネ」
カーコさんは羽を自分の胸に当てて言った。
正確には見た目がカラスの使い魔なんでしょうけど、そこはツッコまないでおくことにした。
「ポッコエ様たちが何をしに来たのか確認しましょう。私やラシルくんを探して来たというのであれば……」
「馬鹿が見つけられるんだモノ。他の人も気付いている可能性が高いわネ」
「ということは、ここにはもういられないということですね」
せっかく住み慣れてきたのにと、気が重くなったけど、ラシルくんの安全が大事ですもの。
ラシルくんもきっと、理解してくれるはず。
そう思って、窓の外をもう一度見ると、お姉様とポッコエ様が門兵と話をしている姿が見えた。
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