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身を引いたつもりが逆効果でした
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ピクニックに向かう当日の朝。
待ち合わせ場所は私達が住んでる屋敷の前だったので、お昼ごはんのサンドイッチが入った籠を持ち、張り切ってリアと待っていたら、ラス様が1番に現れた。
その後、しばらく待っても他の皆が来ないので、しびれをきらしたリアがユウマくん達を呼びにいったため、私とラス様の2人で待つ事になった。
「ユーニさん、遅くなりましたが、ご婚約おめでとうございます」
「ありがとうございます。愛想つかされないように頑張ります」
「そんな事はありえないですよ」
「わかりませんよ。世の中には性格が良くて可愛い子なんて、いっぱいいますから」
「相変わらずですね」
ラス様が微笑んで言うけれど、意味がわからずに聞き返す。
「どういう意味ですか」
「そのままの意味です」
「教えて下さいよ!」
「教えれば、1つ願いをきいてくれますか?」
「出来ることであれば」
ラス様のお願いなんて珍しい。
出来るなら叶えてあげたいけど、わざわざ、そんな前置きがあるくらいだから、難しい事なんだろうか?
「簡単ですよ。私が言う言葉に対して、私に答えを返さずに忘れてしまって下さい」
「それだけでいいんですか?」
「それだけでいいです」
「なら、良いですよ! で、相変わらず、の意味は?」
首を傾げて尋ねると、ラス様はさらりと答える。
「ユーニさんは自己評価が低いんですよ」
「う。だって、周りがすごいじゃないですか。イケメンは多いし、可愛い子も多いし」
「では、普通の人はだめなんですか?」
「そんな事ないですよ! 人によって好みがあって、って」
そこまで言って、私は思い出す。
こんな話をユウヤくんともしていた事を。
「ユウヤにはあなたしかいないんです。自信を持って下さい」
「ありがとうございます」
籠を抱きしめるようにして持ち直してから、ラス様に促す。
「で、ラス様は何を聞いてほしいんですか? 聞いた事に答えを返さなくて忘れたらいいんですよね?」
「そうです」
「では、ラス様、どうぞ!」
私の言葉にラス様は優しく笑うと、
「耳を貸して下さい」
そう言って、私の耳の位置に彼の口がくるように屈んだ。
「ドキドキしますね」
人に聞かれたくない話なのかな?
ラス様が耳元で囁いた。
「━━━っ?!」
驚きのあまり、持っていた籠を地面に落としてしまう。
「何してるんですか」
ラス様が呆れた声で言い、地面に転がったサンドイッチを拾い始める。
本来なら、私が拾わないといけないのに。
でも。
すぐには動けなかった。
聞き間違いでなければ、ラス様はこう言った。
『あなたが好きです』
「うあああ?! え、ラス様、えっ?!」
熱が出たの? と自分で思うくらいに身体が熱くなる。
「答えないし、忘れるという約束ですよ」
「いや、えっ、だ、えっ?!」
「どれだけ動揺してるんですか」
ラス様はまた呆れた顔でそう言うと、屋敷に向かって歩き出す。
「・・・・・ラス様?」
「これでは食べられないでしょう。新しいものをもらってきます」
「なら私が!」
「大丈夫ですから。ユウヤ達が来たら先に向かって下さい。後から追いかけます」
「でも!」
言いかけてやめた。
ラス様の耳が赤くなっているのに気が付いたから。
ここは、素直にお願いする事にしよう。
私もどんな顔したら良いかわからないし。
「お願いします。でも、待ってますから」
「先に行っていいですよ」
ラス様は振り返らずに、屋敷の中に入っていった。
1人残された私は、嫌でもさっきの出来事を思い出す。
「うわあああ」
ラス様が私を?
え?
もしかして、聞き間違い?
え?
どういう事?
好き?
恋愛の意味でって事であってる?!
忘れるなんて無理でしょ!
「うう~っ!」
しゃがみ込んで唸っていると、戻ってきたリアから声をかけられた。
「どうしたの? 気分悪いの?」
「いや、ううん。大丈夫」
慌てて立ち上がると少し離れた所で、こちらの様子をうかがっていた、ユウマくんとアレン王子が手を振ってくれた。
2人の足元には白いパラソルがたたんで置かれている。
もしかして、王子達が運ぶの?
でも、行く人は決まってるし、ジンさん一人では辛いよね。
「みんな集まった?」
ユウマくん達に手を振り返してから尋ねると、リアが答えてくれる。
「あとはジンさんとミランダ様、かな。あれ、ラス様は?」
「あ、私がサンドイッチ駄目にしちゃって、新しいのを貰いに行ってくれてる」
「え、ラス様が?」
リアが聞き返してきた時、ユウヤくんがカーペットを持って、近寄ってきたかと思うと言った。
「リアちゃん、ユウマが呼んでる」
「え? なんで?」
「さあ?」
リアは不思議そうにしながらも、ユウマくんの所へ駆けていく。
それを見送ったあと、ユウヤくんが聞いてきた。
「ラスから何か言われたか?」
「へっ?! な、なんで?!」
「いや、ちゃんと気持ちにきりをつけたいって、事前報告があったから」
「ええ?!」
もしかして、ユウヤくん達が遅くなったのは、ラス様の話を知ってたから?
「ユーニ」
「ん?」
ユウヤくんは持っていたカーペットをなぜか、少し広げて、その角を私に差し出す。
「ちょっと持っててくれ」
「うん」
意味がわからないまま、私は腕を上げてカーペットの角を持つ。
ユウヤくんが腕を軽くあげているせいか、カーペットは私の身体を片方包み込むような感じになってしまった。
「ユウヤく」
どうしたの?
と、聞こうとしたけど、聞けなかった。
私の唇がユウヤくんのそれによって塞がれたから。
「う、わ」
唇がはなれると、私はカーペットをはなし、その場にぺたんと座り込んだ。
「大丈夫か?!」
「・・・・・大丈夫」
ラス様の衝撃から冷めてきていた身体がまた、一瞬にして熱くなってしまった。
私は座り込んだ状態で、ユウヤくんを睨む。
人に見られないようにカーペットで隠してくれたんだろうけど、人前は恥ずかしい。
「嫌だったか」
「嫌じゃない、けど」
「そっか」
ユウヤくんの笑顔に心臓が早鐘を打つ。
このままでは、心臓がもたない。
「ユーニ様、どうかなさいました?!」
ミランダ様がジンさんにエスコートされて合流したようで、座り込んでいる私に駆け寄ってきてくれた。
ジンさんも後から来て、私に手を差し出してくれる。
「立てますか?」
「ありがとうございます」
ジンさんの手を借りて立ち上がると、彼は辺りを見回す。
「どうかしました?」
「いや、兄が見当たらないので」
「あ、私がやらかしまして、サンドイッチの新しいのを取りに行ってくれてるんです」
「そうですか。では、僕が兄を待ちますので、皆様は先に行かれますか?」
ジンさんが爽やかな笑みを浮かべて促してくれたけど、私は首を横に振る。
「私が待っておきますよ」
「オレはラスに話したい事があるから待ってるし、先に行けよ」
「じゃあ、私とユウヤくんで待つから、皆は先に行く?」
「私もお待ちしますよ?」
「私も待つよ」
ミランダ様とリアが言うと、アレン王子も続いた。
「僕もラス兄さまを待ちます」
「つーか、ラスを待って、皆で行けばいいだけだろ。オレ、呼んでくるわ」
ユウマくんが屋敷に向かって歩き出す。
なんだろう。
この空気感がとても心地よい。
しばらくすると、ユウマくんがラス様と一緒に外に出てきた。
2人の手には私が持っていたよりも大きな籠。
ラス様は待っている私達を見て言った。
「先に行くように言付けましたが?」
「みんな、ラス様と行きたいんですよう」
リアがおどけて、かごを持っていないラス様の腕にしがみつく。
「ありがとうございます、リア様」
「そろそろ、様はなしにしません? リアでいいですよ」
「では、リアさん、で良いですか?」
「譲歩しましょう」
「おい、リア、いいかげんはなれろ」
不貞腐れるユウマくんなど気にせず、リアとラス様が笑う。
「お気をつけて」
「いってらっしゃいませ!」
エミリーさん達が屋敷の前で手を振ってくれた。
「よし、行くか」
「うん!」
ユウヤくんと並んで歩き出す。
再会した時には、まさかこんな事になるとは思わなかった。
私の試練はまだまだこれから。
でも、きっと大丈夫。
私には、私を支えてくれる人がいるから。
これからも私は、大好きで大切な人達と一緒に前に向かって進んでいく。
end
待ち合わせ場所は私達が住んでる屋敷の前だったので、お昼ごはんのサンドイッチが入った籠を持ち、張り切ってリアと待っていたら、ラス様が1番に現れた。
その後、しばらく待っても他の皆が来ないので、しびれをきらしたリアがユウマくん達を呼びにいったため、私とラス様の2人で待つ事になった。
「ユーニさん、遅くなりましたが、ご婚約おめでとうございます」
「ありがとうございます。愛想つかされないように頑張ります」
「そんな事はありえないですよ」
「わかりませんよ。世の中には性格が良くて可愛い子なんて、いっぱいいますから」
「相変わらずですね」
ラス様が微笑んで言うけれど、意味がわからずに聞き返す。
「どういう意味ですか」
「そのままの意味です」
「教えて下さいよ!」
「教えれば、1つ願いをきいてくれますか?」
「出来ることであれば」
ラス様のお願いなんて珍しい。
出来るなら叶えてあげたいけど、わざわざ、そんな前置きがあるくらいだから、難しい事なんだろうか?
「簡単ですよ。私が言う言葉に対して、私に答えを返さずに忘れてしまって下さい」
「それだけでいいんですか?」
「それだけでいいです」
「なら、良いですよ! で、相変わらず、の意味は?」
首を傾げて尋ねると、ラス様はさらりと答える。
「ユーニさんは自己評価が低いんですよ」
「う。だって、周りがすごいじゃないですか。イケメンは多いし、可愛い子も多いし」
「では、普通の人はだめなんですか?」
「そんな事ないですよ! 人によって好みがあって、って」
そこまで言って、私は思い出す。
こんな話をユウヤくんともしていた事を。
「ユウヤにはあなたしかいないんです。自信を持って下さい」
「ありがとうございます」
籠を抱きしめるようにして持ち直してから、ラス様に促す。
「で、ラス様は何を聞いてほしいんですか? 聞いた事に答えを返さなくて忘れたらいいんですよね?」
「そうです」
「では、ラス様、どうぞ!」
私の言葉にラス様は優しく笑うと、
「耳を貸して下さい」
そう言って、私の耳の位置に彼の口がくるように屈んだ。
「ドキドキしますね」
人に聞かれたくない話なのかな?
ラス様が耳元で囁いた。
「━━━っ?!」
驚きのあまり、持っていた籠を地面に落としてしまう。
「何してるんですか」
ラス様が呆れた声で言い、地面に転がったサンドイッチを拾い始める。
本来なら、私が拾わないといけないのに。
でも。
すぐには動けなかった。
聞き間違いでなければ、ラス様はこう言った。
『あなたが好きです』
「うあああ?! え、ラス様、えっ?!」
熱が出たの? と自分で思うくらいに身体が熱くなる。
「答えないし、忘れるという約束ですよ」
「いや、えっ、だ、えっ?!」
「どれだけ動揺してるんですか」
ラス様はまた呆れた顔でそう言うと、屋敷に向かって歩き出す。
「・・・・・ラス様?」
「これでは食べられないでしょう。新しいものをもらってきます」
「なら私が!」
「大丈夫ですから。ユウヤ達が来たら先に向かって下さい。後から追いかけます」
「でも!」
言いかけてやめた。
ラス様の耳が赤くなっているのに気が付いたから。
ここは、素直にお願いする事にしよう。
私もどんな顔したら良いかわからないし。
「お願いします。でも、待ってますから」
「先に行っていいですよ」
ラス様は振り返らずに、屋敷の中に入っていった。
1人残された私は、嫌でもさっきの出来事を思い出す。
「うわあああ」
ラス様が私を?
え?
もしかして、聞き間違い?
え?
どういう事?
好き?
恋愛の意味でって事であってる?!
忘れるなんて無理でしょ!
「うう~っ!」
しゃがみ込んで唸っていると、戻ってきたリアから声をかけられた。
「どうしたの? 気分悪いの?」
「いや、ううん。大丈夫」
慌てて立ち上がると少し離れた所で、こちらの様子をうかがっていた、ユウマくんとアレン王子が手を振ってくれた。
2人の足元には白いパラソルがたたんで置かれている。
もしかして、王子達が運ぶの?
でも、行く人は決まってるし、ジンさん一人では辛いよね。
「みんな集まった?」
ユウマくん達に手を振り返してから尋ねると、リアが答えてくれる。
「あとはジンさんとミランダ様、かな。あれ、ラス様は?」
「あ、私がサンドイッチ駄目にしちゃって、新しいのを貰いに行ってくれてる」
「え、ラス様が?」
リアが聞き返してきた時、ユウヤくんがカーペットを持って、近寄ってきたかと思うと言った。
「リアちゃん、ユウマが呼んでる」
「え? なんで?」
「さあ?」
リアは不思議そうにしながらも、ユウマくんの所へ駆けていく。
それを見送ったあと、ユウヤくんが聞いてきた。
「ラスから何か言われたか?」
「へっ?! な、なんで?!」
「いや、ちゃんと気持ちにきりをつけたいって、事前報告があったから」
「ええ?!」
もしかして、ユウヤくん達が遅くなったのは、ラス様の話を知ってたから?
「ユーニ」
「ん?」
ユウヤくんは持っていたカーペットをなぜか、少し広げて、その角を私に差し出す。
「ちょっと持っててくれ」
「うん」
意味がわからないまま、私は腕を上げてカーペットの角を持つ。
ユウヤくんが腕を軽くあげているせいか、カーペットは私の身体を片方包み込むような感じになってしまった。
「ユウヤく」
どうしたの?
と、聞こうとしたけど、聞けなかった。
私の唇がユウヤくんのそれによって塞がれたから。
「う、わ」
唇がはなれると、私はカーペットをはなし、その場にぺたんと座り込んだ。
「大丈夫か?!」
「・・・・・大丈夫」
ラス様の衝撃から冷めてきていた身体がまた、一瞬にして熱くなってしまった。
私は座り込んだ状態で、ユウヤくんを睨む。
人に見られないようにカーペットで隠してくれたんだろうけど、人前は恥ずかしい。
「嫌だったか」
「嫌じゃない、けど」
「そっか」
ユウヤくんの笑顔に心臓が早鐘を打つ。
このままでは、心臓がもたない。
「ユーニ様、どうかなさいました?!」
ミランダ様がジンさんにエスコートされて合流したようで、座り込んでいる私に駆け寄ってきてくれた。
ジンさんも後から来て、私に手を差し出してくれる。
「立てますか?」
「ありがとうございます」
ジンさんの手を借りて立ち上がると、彼は辺りを見回す。
「どうかしました?」
「いや、兄が見当たらないので」
「あ、私がやらかしまして、サンドイッチの新しいのを取りに行ってくれてるんです」
「そうですか。では、僕が兄を待ちますので、皆様は先に行かれますか?」
ジンさんが爽やかな笑みを浮かべて促してくれたけど、私は首を横に振る。
「私が待っておきますよ」
「オレはラスに話したい事があるから待ってるし、先に行けよ」
「じゃあ、私とユウヤくんで待つから、皆は先に行く?」
「私もお待ちしますよ?」
「私も待つよ」
ミランダ様とリアが言うと、アレン王子も続いた。
「僕もラス兄さまを待ちます」
「つーか、ラスを待って、皆で行けばいいだけだろ。オレ、呼んでくるわ」
ユウマくんが屋敷に向かって歩き出す。
なんだろう。
この空気感がとても心地よい。
しばらくすると、ユウマくんがラス様と一緒に外に出てきた。
2人の手には私が持っていたよりも大きな籠。
ラス様は待っている私達を見て言った。
「先に行くように言付けましたが?」
「みんな、ラス様と行きたいんですよう」
リアがおどけて、かごを持っていないラス様の腕にしがみつく。
「ありがとうございます、リア様」
「そろそろ、様はなしにしません? リアでいいですよ」
「では、リアさん、で良いですか?」
「譲歩しましょう」
「おい、リア、いいかげんはなれろ」
不貞腐れるユウマくんなど気にせず、リアとラス様が笑う。
「お気をつけて」
「いってらっしゃいませ!」
エミリーさん達が屋敷の前で手を振ってくれた。
「よし、行くか」
「うん!」
ユウヤくんと並んで歩き出す。
再会した時には、まさかこんな事になるとは思わなかった。
私の試練はまだまだこれから。
でも、きっと大丈夫。
私には、私を支えてくれる人がいるから。
これからも私は、大好きで大切な人達と一緒に前に向かって進んでいく。
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