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恋もですが、親友も大事です

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 あたしとユウヤくんの仲が進展したその日。
 リアは高熱を出した。
 命にかかわるほどではなかったけれど、リアがあまりにも苦しそうで見ていられなかった。
 リアの高熱は2日も続いたというのに、ユウマくんは1度もリアの部屋を訪れなかった。
 というよりか、ユウマくんも病気ではないけれど、その日から部屋を出ず、食事もほとんどとっていないらしい。

 あの日、2人に何があったのか…。
 ユウヤくんは知っているみたいだけど、あたしから聞く事はできないし。
 とりあえず、あたしに出来る事をしよう。

「おはよう、ユーニ」

 3日目の朝、リアがベッドの上で上半身を起こして、いつもの明るい笑顔を見せてくれた。
 ポニーテールの髪をおろしているせいか、なんだかいつもより可愛い感じがする。

 まあ、リアはいつも可愛いんだけど!

「良かった、リア!」
「あたし、まるまる2日近くも寝てたんだね」
「ほんと心配したよ」
「ごめんごめん」

 リアに話す元気がありそうなので、あたしはベッドの近くに椅子を持ってきて座る。

 お医者さんが言うには過労と心労がたたったのだろうと。
 それって、ユウマくんのせいじゃない?

「で、ユーニはあれからどうだったの? 侍女さんからはラブラブですよ、って聞いたけど」

 リアがにやにやして言う。

「ラブラブではないけど、仲直りはしたよ。だけど、しばらくはそういうの考える気持ちになれない」
「なんで?」
「だって、リアがこんな状態なのにあたしだけ…」
「何言ってんの! 友達の幸せを喜ばないでどうすんの! ほんと、気にせずイチャイチャしてね!」
「実はね、リア」

 とりあえず、ユウヤくんと意思疎通はしたけれど、お互いに、好き、とは言っていないことや、お付き合いする旨の話にはなっていない事を正直に話した。

「何やってんの・・・・・」
「なんか、あたしも意地になっちゃって…」
「まあ、お互いに両思いな自覚があるだけマシね」
「それは、リアとユウマくんも認識したらいいだけだよ」
「アイツはあたしの事なんて好きじゃないわよ」

 リアが投げ捨てるように言う。

 どこまでこじらせたのよ、ユウマくん!

「リア、言いたくないなら言わなくていいけど、あの後、ユウマくんとどうなったの?」

 聞かない方がいいかもしれない。
 でも、ユウマくんのあの言葉は本心じゃない事がわかってるだけに、どうにかできるものならどうにかしてあげたい。

「・・・・・」

「あ、いいんだよ、リア。話したくないなら話さなくていいし。それに病み上がりなのにごめんね!」

 言いにくそうにしていたリアに、手を横に振って椅子から立ち上がる。

「また、改めて来るね。ゆっくり休んで!」
「待って!」

 リアが強い口調で叫んだので、あたしは驚いて固まってしまう。

「言いすぎたかもしれない・・・・・」
「え?」
「あたし、アイツに、あんたなんか大嫌いだし、顔も見たくないって言っちゃった」
「ええ?! な、なんてベタな台詞を!」
「あの時はそんな言葉しか出てこなかったのよ!」

 リアが頭を抱えて叫ぶ。
 病人を興奮させるのはあまり良くないのはわかってるけど、なんで、そんな物語で関係をこじらせてしまうありきたりな発言をしたの?なんて事を思ってしまう。

 しかも、ユウマくんも真に受けてしまったわけね…。

「う~ん、ちなみにどんな事を言われて、その言葉を返したの?」
「とにかく腹が立ってて、ユウマくんの話をまったく聞いてない状態で言っちゃったんだよね」
「ユウマくんが何か言ってたっていうのは確かなの?」
「うん。それは確か。だけど、ほんと、あの時は頭に血が上ってて話もしたくなかったのよ。だから、喚き散らしたというか」

 癇癪おこしちゃったのか。
 う~ん。
 わからない訳でもないけど、ユウマくんが何を言っていたかも問題かな。
 もし、告白とかしてたなら、そりゃあ、もう。
 いや、あながち間違ってないかも?

 だって、ユウヤくんがあんな状態なら兄弟であるユウマくんもあの状態になってた可能性もありえる。

「もしかして、ユウマくん、リアに」
「え、何?」
「あ、えと。ハッキリしてから言う」

 心底、反省している表情のリアに、あたしは落ち着くように頭をなでてから続ける。

「とりあえず今はリアはしっかり休んで? ユウマくんの事はそれからだよ」
「モヤモヤしたままだから眠れなくて…」

 リアが瞳を伏せて言う。

 気持ちはわかる。
 そりゃあ、仲直りしたら、リアもユウマくんも2人共に元気になるから、それが1番いいんだろうけど。

 その時だった。
 コンコン、と扉がノックされた。

「どうぞ」

 リアが返事をすると、開いた扉の向こうにはトレイを持ったユウヤくんがいた。

「あ、ユウヤくん」
「やっぱ、ここにいたか。あんま、リアちゃん無理させんなよ」
「体調に負担がかからない内に帰ろうと思ってましたー」

 口をとがらせて答えると、ユウヤくんは水差しとコップ、軽食ののったトレイをベッドの横にあるテーブルに置いてから、リアに聞いた。

「リアちゃん、お腹は?」
「ちょっと減ってる」
「そっか。1人で食えそう?」
「食べれるよ」

 まるで子供扱いするユウヤくんにリアが笑って答える。
 リアの答えを聞いたユウヤくんは水差しから水をコップに注ぐと、スープとスプーンと一緒にトレイにのせなおし、リアの所へ持ってきた。

「ありがとう、ユウヤくん」
「どういたしまして」
「ふふ、彼女の友達だから優しくしてくれるの?」

 リアがトレイを受け取りながら、ユウヤくんに聞くから、

「彼女じゃないです!」
「だってさ。それに、リアちゃんはオレの友達にはなってくれねぇの?」

 ユウヤくんはあたしの否定の言葉に笑みを浮かべたあと、リアに言った。

「喜んで」

 リアがにっこりと笑う。

 この可愛い笑顔にたくさんの男達がおとされてきたわけですよ。
 本人に自覚ないけど。

 ユウヤくんもそうなるのかな、と思っていたら、ユウヤくんはあたしを持ち上げてお姫様抱っこをし、あたしが座っていた椅子に、そのままの体勢で腰を下ろした。

「何すんの?!」

 抗議もむなしく、あたしの背中からお腹に当たる彼の腕はがっちりと固定されてしまった。

 というわけで、あたしは今、ユウヤくんの太腿の上に座っている。
 リアの前ではこういうのは特にやめてほしいのに!

「あら。病み上がりに興奮するような事しないでよ」
「ごめんな、リアちゃん。6年分取り返したくて」

 くっついたって、離れていた6年が埋まるわけではないのでは???

「いいよ、別に。ただ、その、エロい事は、さすがにやめてね。さすがに、親友のね、それはさ」

 やけに言いよどむな、と思ったらそっちか!

 しかも、水飲むふりしてコップで顔を隠してるけど、ニヤニヤしてるのわかるし!!

「リアちゃん・・・・・」
「なに?」

 ユウヤくんが真剣な声で名を呼んだから、さすがに怒ってくれるのかな、と思ったら。

「もし、我を忘れて、そんな事になったら殴ってくれね?」
「ぶほっ!」

 リアが噴いた。
 そして、すぐに、

「あたしが殴るわ!!」

 ユウヤくんの顎にあたしの頭がヒットした。

「いてー。舌噛むとこだった」
「大丈夫、ユウヤくん?」

 笑いをこらえるのを我慢しているのか、頬を膨らませたリアが、顎を撫でているユウヤくんに言う。

「リアちゃん笑いすぎ」
「あっはは! だって、ユーニが頭突きするだなんて思わなくって!」
「するでしょ! っていうか、ユウヤくんバカなの?」
「バカでいいですよ、オマエといれるんなら」
「はあ?!」
「わ~、もっとやれ!」

 何なの!
 ユウヤくんってこういうキャラじゃなかったでしょ!
 というか、リアも面白がってひどい!

「とまあ、ここから真面目な話をしてぇんだけど」

 ユウヤくんが表情を切り替え、あたしを床に下ろすと、リアに向かって言った。

「リアちゃんがよっぽど嫌じゃなければ」
「な、なに?」
「ユウマにご飯手作りしてくれね?」
「「はあ?!」」

 ユウヤくんの言葉にリアだけでなく、あたしまでもが聞き返してしまった。
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