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51 「考えればわかることです」
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呆気にとられていると、先に我に返ったフェイク様が尋ねる。
「兄上、あなたは一体、何を言っているのですか?」
「そのままの意味だ。このまま罪を認めたら、オレは処分されてしまうのだろう?」
「……そうですね。皇帝のままではいられないでしょう」
「それは嫌だと言っているんだ! オレは皇帝なんだ。少しくらい悪いことをしたって許されるだろう!」
「皇帝陛下、何をおっしゃっておられるのですか? 皇帝だからこそ、国民の手本になるような動きをしなければならないのです」
子どもしか言わないようなことを言うので窘めると、皇帝陛下は私を睨みつける。
「何を言ってるんだ。皇帝だからこそ好き勝手できるんだろう! 国民に知られることが厄介だというのであれば、なおさら、オレの罪をもみ消すべきだ」
開き直るだなんて思っていなかったわ。
呆れて物が言えなくなっていると、皇帝陛下は勝ち誇った笑みを浮かべる。
「約束通りに罪は認めた。だから見なかったことにしろ。そうしてくれれば、お前たちには不自由のない生活をさせてやる」
「そんなことを言われましても、魅力的だとは思いません」
「俺も同意見です」
私たちに冷たくあしらわれた皇帝陛下は声を荒らげて訴える。
「お前たちは本当に馬鹿だな! 俺が罪を犯していたなんて知ったら、国民たちはショックを受けるぞ! 他国にだって示しがつかない! わかるだろう! 一番賢い方法は、お前たちが何も言わないことなんだ!」
「開き直りにもほどがありますわ。そこまでわかっているのであれば、どうして馬鹿なことをしたんですか。あなたにとって馬鹿な私でさえ、そんなことをすれば自分の立場が悪くなるということくらいわかります」
「オレを馬鹿にするな!」
「馬鹿にしているように聞こえたのであれば申し訳ございません。ですが、考えればわかることです」
きっぱりと答えると、皇帝陛下はフェイク様に尋ねる。
「……フェイク、お前、まさか、オレの代わりに皇帝になろうとしているのか!?」
「いいえ。兄上が皇帝の座を退いた時には、兄上を止められなかった責任を取って、皇位の継承を辞退します」
「何だと!?」
「兄上が皇位についた時点で、この家系は終わりだったんですよ。次の皇帝は違う家に任せましょう」
「いい、い、嫌だ! オレは皇帝なんだ!」
皇帝陛下は何度も首を横に振ったあと、急に笑顔になって叫ぶ。
「あ、ああ、そうだ。フェイク! セリーナ! 発言を撤回しなければ、俺に無礼を働いた罪でお前らを処刑してやる!」
本当にこの人は救いようのない人ね。
「残念ですが兄上、あなたの願いは叶いません」
「な、何だと?」
「あなたがどんなに俺たちの処刑を願っても、その前にあなたを皇帝の座から引きずりおろすからです」
フェイク様が微笑むと、「それなら今すぐに決めてやる!」そう言って、皇帝陛下は部屋から出て行った。
「兄上、あなたは一体、何を言っているのですか?」
「そのままの意味だ。このまま罪を認めたら、オレは処分されてしまうのだろう?」
「……そうですね。皇帝のままではいられないでしょう」
「それは嫌だと言っているんだ! オレは皇帝なんだ。少しくらい悪いことをしたって許されるだろう!」
「皇帝陛下、何をおっしゃっておられるのですか? 皇帝だからこそ、国民の手本になるような動きをしなければならないのです」
子どもしか言わないようなことを言うので窘めると、皇帝陛下は私を睨みつける。
「何を言ってるんだ。皇帝だからこそ好き勝手できるんだろう! 国民に知られることが厄介だというのであれば、なおさら、オレの罪をもみ消すべきだ」
開き直るだなんて思っていなかったわ。
呆れて物が言えなくなっていると、皇帝陛下は勝ち誇った笑みを浮かべる。
「約束通りに罪は認めた。だから見なかったことにしろ。そうしてくれれば、お前たちには不自由のない生活をさせてやる」
「そんなことを言われましても、魅力的だとは思いません」
「俺も同意見です」
私たちに冷たくあしらわれた皇帝陛下は声を荒らげて訴える。
「お前たちは本当に馬鹿だな! 俺が罪を犯していたなんて知ったら、国民たちはショックを受けるぞ! 他国にだって示しがつかない! わかるだろう! 一番賢い方法は、お前たちが何も言わないことなんだ!」
「開き直りにもほどがありますわ。そこまでわかっているのであれば、どうして馬鹿なことをしたんですか。あなたにとって馬鹿な私でさえ、そんなことをすれば自分の立場が悪くなるということくらいわかります」
「オレを馬鹿にするな!」
「馬鹿にしているように聞こえたのであれば申し訳ございません。ですが、考えればわかることです」
きっぱりと答えると、皇帝陛下はフェイク様に尋ねる。
「……フェイク、お前、まさか、オレの代わりに皇帝になろうとしているのか!?」
「いいえ。兄上が皇帝の座を退いた時には、兄上を止められなかった責任を取って、皇位の継承を辞退します」
「何だと!?」
「兄上が皇位についた時点で、この家系は終わりだったんですよ。次の皇帝は違う家に任せましょう」
「いい、い、嫌だ! オレは皇帝なんだ!」
皇帝陛下は何度も首を横に振ったあと、急に笑顔になって叫ぶ。
「あ、ああ、そうだ。フェイク! セリーナ! 発言を撤回しなければ、俺に無礼を働いた罪でお前らを処刑してやる!」
本当にこの人は救いようのない人ね。
「残念ですが兄上、あなたの願いは叶いません」
「な、何だと?」
「あなたがどんなに俺たちの処刑を願っても、その前にあなたを皇帝の座から引きずりおろすからです」
フェイク様が微笑むと、「それなら今すぐに決めてやる!」そう言って、皇帝陛下は部屋から出て行った。
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