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40  「断る理由はありませんわね」 

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「裏切る? 何を言っているんだ。裏切ったのはお前だろう」
「……どういうことですか」

 サディールが尋ねると、皇帝陛下は笑みを浮かべる。

「ジーナリアを監禁していただなんて、オレへの裏切り以外のなにものでもないだろ」
「……私も知りませんでした」
「なんだって」
「皇帝陛下、私も知らなかったのです」

 サディールは皇帝陛下とやり合うのではなく、お互いの立場を守ることを選んだ。

 仲間割れしてくれなかったのは残念だわ。

 苦しい言い訳だけど、それを無理矢理、事実だと押し通してくるつもりだ。

 ……となると、ジーナリア様が口封じされる可能性がある。

 そう思って追いかけようとすると、フェイク様が止める。

「彼女には俺の影の護衛をつけているから心配するな」

 サディールたちに聞こえないように、小声で教えてくれた。

「……ありがとうございます」

 それなら安心だと思い、皇帝陛下たちに集中しようとすると、皇帝陛下が話しかけてきた。

「……そうか。そうだったのか。おい、セリーナ、そういうことだ」
「そういうことだ、とは?」
「オレもサディールも
「そういうことです。兵士が勝手に女性を連れ込んだと思っていたら、ジーナリア様だったというわけです」

 皇帝陛下の話を継いだサディールがにやりと笑う。

「ふざけないで。そんな話が通じると思っているの? 大体、兵士が勝手に地下牢に出入りして良いわけではないし、女性を監禁するだなんて!」
「事実ですから、通じる通じないの問題ではありません。私は、兵士を止めようとしていたところだったのです」

 ジーナリア様に確認すればわかることなのに、彼女に脅しをかける、もしくは口封じするつもりなのね。

「では、陛下がここに食事を運ばせていた理由はなんなのです?」
「オレはここにシロがよく遊びに来ているから食事を運ばせるように言っただけだ」
「どうしてシロが地下牢に来るんですか。興味をひくものがなければ、わざわざ来ないでしょう」

 もし、本当にシロが来ていたなら、ジーナリア様の匂いを辿ってきたんだと思われる。

「セリーナはどうしてもオレを疑いたいみたいだな」

 皇帝陛下は鼻で笑うと、右手の人さし指を立てる。

「お前はオレを疑っているようだが、それが不敬罪に当たることはわかっているのか?」
「事実でなければそうなるでしょう」
「なら、事実ではなかった時、お前は大人しく不敬罪を受け入れて処刑されるのか」
「そうですわね。確信がないのに言ったことになりますから」

 絶対に処刑されるつもりはない。

 それにしても、皇帝陛下は一体何を考えているのかしら。
 
「オレが何も知らなかったことを証明できた時、処刑ではなく、オレの正妃になれ。お前にとっては処刑よりもそちらのほうが嫌だろうからな」

 とんでもない申し出に、私は眉根を寄せる。

 最悪だわ。

「では、兄上たちがかかわっているという証拠を見せれば素直に罪を認めるのですか?」

 フェイク様が尋ねると、皇帝陛下は大きく頷く。

「そうだ。証言ではなく、証拠を見せろ」
「わかりました」

 フェイク様が頷いたので、私は慌てて彼を見つめる。

「心配するな」

 と言われましても……って、もう、やるしかないわよね。

「証拠を提示できた時は、潔く罪を認めてくださいませね」

 微笑んで言うと、皇帝陛下は少し躊躇する様子を見せる。

 この様子だと証拠は見つかりそうね。

「無関係だとおっしゃるのであれば、この条件を断る理由はありませんわね?」
「……わかった」

 皇帝陛下は渋々といった様子で頷いた。

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