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35  『あからさますぎるわ』

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 次の日の朝、フェイク様からの手紙をロニナが出勤と同時に届けてくれた。
 皇帝陛下のベッドの下には、犬のおもちゃやおやつが隠されていただけでなく、髪に結ぶリボンもあった。

 皇帝陛下が髪の毛を結んだことは今までに一度もないという確認が取れたため、ジーナリア様の侍女に確認を取ったところ、ジーナリア様のものに間違いないということだった。

 なぜ、それがすぐにわかったのかというと、特注の生地で作らせたものだったため、侍女の記憶に深く刻まれていたからだ。

 どうすれば地下牢にいるジーナリア様を偶然を装って見つけ出すことができるのか考え、一つの作戦を思いついた。

 誰にでも考えつくようなものだけど、ちゃんと段取りをしておけば、不自然には思われないはずだ。

「ロニナ、宮殿の料理長と連絡を取りたいの。申し訳ないけど、今から書く手紙を料理長に持っていってくれないかしら」
「お任せください!」

 私がメイドの格好をするのは無理があるし、たとえメイドだと思ってもらえたとしても、食事を地下牢まで運ぶことはさせないはずだ。

 それなら――

 手紙を書き終えて、ロニナを見送った私は、上手く偶然を装えるように、段取りを整えることにした。


******


 側妃は宮殿内に住むことはできないけれど、プライベートな場所や禁止エリア以外は、自由に動くことが可能だ。

 だから、私は料理長に連絡を取り、犬用の食事を地下牢に持って行く時間帯がわかれば教えてほしいと伝えた。

 犬用の食事は、料理長があんな小さな犬が食べるには量が多すぎると訴えたところ、皇帝陛下から、かなりの剣幕で怒られたそうだ。

 だから、皇帝陛下が何か悪いことをしているのかもしれないと疑っているようだった。

 他言することはないと思うが、この件は他言しないようにとも書いておいた。

 料理長から返事が来ると、早速、行動を開始することにしたけど、気になることがあった。

 宮殿に着き、目的地に向かっていると、誰かに尾行されているような気がして、足を止めて振り返った。

 すると、そこにはメイド姿の中年の女性が立っていた。
 私と目が合うと、慌てて一礼する。

 軽く会釈してから無言で私が歩き出すと、彼女も歩き出し、私が足を止めると、また足を止める。

 あからさますぎるわ。

 近くにいた兵士に頼んで、そのメイドを捕まえて話をさせると、彼女はジュリエッタから私を監視するように頼まれたのだと言う。

 ジュリエッタはまだ私を、浮気相手だと疑っているということだった。

 ジュリエッタがここまでバカだったとは予想外だったわ。

 メイドから色々と話を聞きたかったけれど、時間がない。

 彼女を兵士に預け、私は目的地に急いだ。




昨日から「その場限りの謝罪なんていりません!」という過去作のリメイク版を投稿しております。
ご興味ありましたら読んでやってくださいませ。
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