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15 「酷いですっ!」
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「どうした、嬉しくて言葉が出ないのか?」
皇帝陛下の発言が信じられなくて、私もジュリエッタも何も言わずに、しばし固まっていた。
皇帝陛下は、私たちの様子を前向きな意味合いで受け取ったらしく、笑顔で私の手を取ろうとした。
「ジュリエッタ様は可愛らしいところがありまして、緊張するとすぐにミスをしてしまうのです。仕事に慣れましたら、すぐにそんなこともなくなりますわ」
我に返った私は皇帝陛下の手から上手く逃れ、ジュリエッタに微笑みかける。
「ねえ、ジュリエッタ様。そうでしょう?」
「……そ、そうです。早く仕事をしなければいけないと思って、焦ってしまったんだと思います」
「……そうか。なら、しょうがないな」
皇帝陛下は納得したのか頷いたあと、ジュリエッタの前に置かれている食事に目を向ける。
「おお、今日も旨そうだな。これから、俺の分も作ってもらおうかな」
迷惑だわ。
でも、私は一応、彼の妻だ。
夫が望んでいるものを何の理由もなしに断るわけにはいかない。
それに、私の分も作っているから一人分増えてもそう変わらない。
でも、気分的に作りたくないわ。
「……私はかまいませんが、そんなことになれば皇帝陛下専属の料理人が悲しむのではないでしょうか」
「そう言われればそうだな。俺の食事を作れるという光栄な仕事を奪われたらショックを受けるに違いない」
皇帝陛下は胸の前で腕を組み、うんうんと頷いた。
この人は自分が好きで、周りにも愛されていると思っている。
……彼を慕っている人もいるから、ただの思いこみというわけでもないわね。
モラルがないのは立場上しょうがないにしても、人の気持ちを考えられる人になってほしいものだわ。
それに私は私で、謝られたからってすぐに許すような、性格の良い人間じゃないのよ。
私はのんびり暮らしたいの。
皇帝陛下に興味を持たれては困る。
そう思った時、大人しくしていたジュリエッタが叫ぶ。
「パクト様、酷いですっ!」
ジュリエッタも私に負けるわけにはいかないようで、必死に訴え始める。
「私だって頑張っているんです! それを認めてくださらないのですか!?」
「ああ、すまなかった。だがな、胃袋をつかまれると、その相手を良く思うようになるんだ」
これから不味く作れと遠回しに言っているととったほうが良いのかもしれない。
「では、私は失礼いたします」
野菜料理をメインにすると、ジュリエッタは嫌な顔をしていた。
だから、私の気分は晴れるし、ジュリエッタも健康にはなるから、それで良いと思っていた。
料理の味付けは料理長にも確認してもらっているから、美味しくなりすぎてしまったのかもしれない。
異国の調味料がとても美味しいので、ついつい使ってしまっていたのよね。
反省しないといけないわ。
「おい、セリーナ」
「お二人で楽しいひとときをお過ごしくださいませ」
扉を開けると、ちょうど皇帝陛下の分の食事が運ばれてきたところだったので、上手く立ち去ることができた。
さあ、料理長に相談しないといけないわ。
それから、ジュリエッタには頑張ってもらわないと駄目ね。
*****
ダイニングルームでの一件から、ジュリエッタは気を引き締めて頑張った。
それでも、皇帝陛下はジュリエッタのことを容姿しか認めなかった。
ただ、皇帝陛下の中での人を見る基準は容姿が一番の判断材料らしく、なんだかんだとジュリエッタを見捨てることはなかった。
問題は皇帝陛下の寝室に、私が呼ばれることになったことだ。
でも、ジュリエッタや他の側妃が邪魔してくれたおかげで、一度も行っていない。
皇帝陛下の好みではないメイクをしたりして、のんびりできない日々を過ごしている内に、問題のパーティーの日になったのだった。
皇帝陛下の発言が信じられなくて、私もジュリエッタも何も言わずに、しばし固まっていた。
皇帝陛下は、私たちの様子を前向きな意味合いで受け取ったらしく、笑顔で私の手を取ろうとした。
「ジュリエッタ様は可愛らしいところがありまして、緊張するとすぐにミスをしてしまうのです。仕事に慣れましたら、すぐにそんなこともなくなりますわ」
我に返った私は皇帝陛下の手から上手く逃れ、ジュリエッタに微笑みかける。
「ねえ、ジュリエッタ様。そうでしょう?」
「……そ、そうです。早く仕事をしなければいけないと思って、焦ってしまったんだと思います」
「……そうか。なら、しょうがないな」
皇帝陛下は納得したのか頷いたあと、ジュリエッタの前に置かれている食事に目を向ける。
「おお、今日も旨そうだな。これから、俺の分も作ってもらおうかな」
迷惑だわ。
でも、私は一応、彼の妻だ。
夫が望んでいるものを何の理由もなしに断るわけにはいかない。
それに、私の分も作っているから一人分増えてもそう変わらない。
でも、気分的に作りたくないわ。
「……私はかまいませんが、そんなことになれば皇帝陛下専属の料理人が悲しむのではないでしょうか」
「そう言われればそうだな。俺の食事を作れるという光栄な仕事を奪われたらショックを受けるに違いない」
皇帝陛下は胸の前で腕を組み、うんうんと頷いた。
この人は自分が好きで、周りにも愛されていると思っている。
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モラルがないのは立場上しょうがないにしても、人の気持ちを考えられる人になってほしいものだわ。
それに私は私で、謝られたからってすぐに許すような、性格の良い人間じゃないのよ。
私はのんびり暮らしたいの。
皇帝陛下に興味を持たれては困る。
そう思った時、大人しくしていたジュリエッタが叫ぶ。
「パクト様、酷いですっ!」
ジュリエッタも私に負けるわけにはいかないようで、必死に訴え始める。
「私だって頑張っているんです! それを認めてくださらないのですか!?」
「ああ、すまなかった。だがな、胃袋をつかまれると、その相手を良く思うようになるんだ」
これから不味く作れと遠回しに言っているととったほうが良いのかもしれない。
「では、私は失礼いたします」
野菜料理をメインにすると、ジュリエッタは嫌な顔をしていた。
だから、私の気分は晴れるし、ジュリエッタも健康にはなるから、それで良いと思っていた。
料理の味付けは料理長にも確認してもらっているから、美味しくなりすぎてしまったのかもしれない。
異国の調味料がとても美味しいので、ついつい使ってしまっていたのよね。
反省しないといけないわ。
「おい、セリーナ」
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扉を開けると、ちょうど皇帝陛下の分の食事が運ばれてきたところだったので、上手く立ち去ることができた。
さあ、料理長に相談しないといけないわ。
それから、ジュリエッタには頑張ってもらわないと駄目ね。
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それでも、皇帝陛下はジュリエッタのことを容姿しか認めなかった。
ただ、皇帝陛下の中での人を見る基準は容姿が一番の判断材料らしく、なんだかんだとジュリエッタを見捨てることはなかった。
問題は皇帝陛下の寝室に、私が呼ばれることになったことだ。
でも、ジュリエッタや他の側妃が邪魔してくれたおかげで、一度も行っていない。
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