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ifストーリー(クズーズの王位継承権が剥奪された場合)
第24話 王太子の提案
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「…兄上、自分が一体何を言っているのかわかっているんですか? まさか、気が触れられたんじゃないでしょうね」
階段近くでは声が響く為、少し場所を移動してクズーズ殿下の部屋の前までやって来たところで、アレク殿下が不機嫌そうな顔で尋ねた。
「わかってるさ! だけど、アレク、お前は僕から全てを奪うというのか? せめてエリナだけでも僕に譲ってくれてもいいだろう!」
「何を馬鹿な事を言っているんですか!」
叫ぶアレク殿下の後に、私が口を開く。
「クズーズ殿下、私はもうあなたの婚約者ではないのですよ? どうして私があなたと結婚しなければならないのです? 意味がわかりません」
「エリナの可愛さはわかる人にしかわからないが、エイナの可愛さは全ての人がわかるから、彼女は王妃に向いていると思うんだ。顔が可愛ければ頭が悪くても王妃になれるからな」
私の質門に対してのクズーズ殿下の返答に思わずため息を吐く。
自分の母親の事をまるで顔がいいだけと言っている事に気付けないのかしら。
「クズーズ殿下…」
その事を伝える為に口を開こうとすると、クズーズ殿下が首を横に振って止めてくる。
「返事は5日後でかまわない! それまでに良い案が思いついたら、その時は返事の期限を延長する!」
「はい?」
「兄上! ふざけた事を言うのは止めてください!」
アレク殿下が声を荒らげて、クズーズ殿下の襟首を掴むと、クズーズ殿下が叫ぶ。
「ひいっ! 兄に暴力をふるうつもりか!?」
「暴力をふるいたくなる様な事を仰るからです!」
「うるさい! アレクには関係ない! じゃあな、エリナ、気を付けて帰るんだぞ!」
クズーズ殿下はアレク殿下の手を振り払い、言いたい事だけ述べて、自分の部屋の扉に手を掛ける。
「クズーズ殿下! どんな状況でもあなたとの結婚なんてお断りですわ!」
叫んだ時には、クズーズ殿下は部屋の中に入ってしまっていた。
クズーズ殿下の部屋の前で立っていた騎士達が私達を気の毒そうな目で見ているのがわかった。
「兄上が申し訳ない。何を言っているのか本人も理解していないと思う」
「アレク殿下に謝っていただく事ではありませんわ」
「当たり前の話だが、どんな事があっても、君が望まない限り、君を兄上に渡すつもりはないから」
アレク殿下の言葉がまるで小説の王子様の様な発言に聞こえてしまって、深い意味はないとわかっていながらも、胸の鼓動が早くなるのを感じた。
アレク殿下に家まで送り届けてもらって少ししてから、お父様がエイナよりも先に帰ってきた。
エイナがまだ帰ってきてない事を告げると、お父様もすでに事情は把握されていて、自由気ままな王妃殿下とエイナに呆れてエイナは置いて帰ってきたらしかった。
さすがに城の馬車を出してくれるだろうから、エイナが帰ってこれなくなる事はないだろうとの判断みたいね。
お父様に陛下からの話は何だったのか聞いてみると、まだ私達には言えないらしく、内容は教えてはもらえなかったのだけれど、私に不利な話ではないという事なのでホッとした。
「お父様、クズーズ殿下の件なんですが…」
「どうかしたのか?」
「実は…」
お父様の執務室にはピート兄様もいて、2人に先程のクズーズ殿下の話をすると、お父様は執務机を叩き、ピート兄様は呆れた顔をした。
「何を考えてるんだ! クズーズ殿下は自分の置かれている立場をわかってなさすぎる!」
「昔から脳天気な一面はありましたが、大人になって、より顕著になったのかもしれませんね」
ピート兄様はお父様の背中を撫でながら、大きくため息を吐いた。
「お父様、クズーズ殿下と結婚なんてしなくてもいいですよね? 言ってらっしゃる事が無茶苦茶ですもの」
「当たり前だ。それに、アレク殿下も認めたりしないと言ってくれたんだろう?」
「あ、はい」
その時の事を思い出すと頬が熱くなってしまうわ。
冷たい手を頬に当てて冷やしていると、ピート兄様が笑う。
「エリナがアレク殿下と上手くいっているみたいで良かったよ」
「政略結婚みたいなものですから、上手くいくもいかないもありません」
「エイナとクズーズ殿下は上手くいってないみたいだけどね?」
「あの2人は特殊だと思います」
私が答えるとピート兄様だけでなく、お父様までもが苦笑した。
多くの貴族は親の決められた相手と結婚する。
中には恋愛結婚をする人もいるけれど、小さい頃に決められた婚約者が変わる事はそうない。
相手がよっぽどでない限り、結婚するのが当たり前だけれど、クズーズ殿下はよっぽどの部類に入るのかしら。
入るわよね、きっと。
そういえば…。
「ピート兄様は結婚はなさらないんですか?」
「ああ、僕は今のところは考えてないよ」
「婚約者はいらっしゃいませんし、もしかして、好きな人がいらっしゃるとか…?」
「あー、うーん、まあ、そうかな。中々難しいんだけどね」
「もしかして、お兄様が勉強に行ってらっしゃる公爵家の方ですか!?」
ピート兄様の恋の話が聞けるかもしれないと思い、クズーズ殿下の事をすっかり忘れて、ピート兄様に話しかけると、お父様が咳払いをする。
「その話はあとにしなさい。それよりもクズーズ殿下の件だが…」
「申し訳ございません」
お父様に謝ってから、次の言葉を待つ。
「クズーズ殿下がたとえ、エリナと結婚したがっても、クズーズ殿下とエイナの結婚は決まっている事だから安心しなさい」
「ありがとうございます、お父様」
私達が話し合っていても状況は変わらないという事で、この話はここで終わりにして、ピート兄様の話を別の部屋で私だけ聞かせてもらう事になった。
そして3日後、私達は国王陛下から呼び出され、登城する事になった。
呼び出されたのはお父様、私、エイナの3人。
登城して案内された部屋に入ると、すでに国王陛下、クズーズ殿下、アレク殿下がソファーに座っていて、前回に話し合いをした時と同じ配置だったので、私達も前回と同じ様に座った。
今回はメイドにお茶を入れてもらい、部屋から出ていくのを確認し、国王陛下は私達の顔を見回してから口を開く。
「クズーズが良い案を思いついたんだそうだ」
「……」
無言でクズーズ殿下の方を見ると、なぜか勝ち誇ったような顔をしていた。
よっぽど良い案を思いついたのかしら?
そう思って、クズーズ殿下が口を開くのを待っていると、誇らしげな顔はそのままに話し始める。
「やはり、国王に必要なものは信頼性だと思うんです」
「信頼性?」
陛下が聞き返すと、クズーズ殿下は頷いて続ける。
「民に慕われているのもそうですが、まずは貴族に信用してもらっているかが大事だと思うんです」
そこまで話を聞いて、クズーズ殿下が何を言おうとしているかに気付き、私だけじゃなく向かい側に座っているアレク殿下も眉根を寄せた。
「僕が優れいているか、アレクが優れているか、貴族に判断してもらおうと思います」
「どちらを国王にするかを投票か何かで決めるつもりか?」
「さすが、父上です! 話が早い!」
クズーズ殿下は頷くと、私達の顔を見回して言う。
「夜会を開こうと思うんです。一日では無理だろうから、5日程続けて、そこで貴族達に僕とアレク、どちらが国王にふさわしいか投票してもらうんです。貴族であれば誰が参加してもかまわない。招待状は全ての貴族に送るんです」
お金の無駄だわ。
一瞬、そんな考えが頭をよぎったけれど、陛下は面白がっている様な顔をされているし、この案を許可されるように思えた。
「いいだろう。それでアレクが勝ったらお前は国王の座を諦めるんだな?」
陛下が足を組み替え、肘置きに肘を置いて尋ねると、クズーズ殿下は大きく首を縦に振った。
「ええ! もちろんです!」
クズーズ殿下は勝つ自信があるみたいね。
もちろん、これに関しては彼に分があるのは私にもわかるわ。
クズーズ殿下もエイナも外面が良いので貴族には人気があるのは、私だって知っている。
そして、私とアレク殿下が貴族に評判が悪いという事も。
以前よりかはマシになってきているとはいえ、まだクズーズ殿下達の方が評価は高い。
アレク殿下もそれを考えている様で難しい顔をされていた。
「いいだろう。そうだ、エイナ。夜会の手配についてはお前がやればいい」
「何をですか?」
「招待客のリストなどを作る作業だ。あと、夜会は何日行うのか、料理などの手配も考えろ」
「そんな難しい事、私には出来ません!」
陛下の言葉にきっぱりと答えたエイナに、お父様はぎょっとした顔をされたけれど、陛下は笑っただけだった。
「誰かに助けを借りればいいだろう。君の母にお願いしたらどうだ?」
「そうですね! そうします! ありがとうございます陛下!」
そうしますじゃないわよ。
一体、何を考えてるの?
私がやると言ったほうが良いのかしら?
それともエイナにやらせて無茶苦茶な夜会になったほうが良いのかしら。
そんな事を考えている間に、陛下の方では終わった話になってしまったらしく、膝を手で叩くと言う。
「この話はこれで終わりだ。日程などはまたエイナの方から連絡があるだろう。もちろん、その間に色々と動く事はかまわない」
陛下の言葉に含みがある気がして、私がアレク殿下の方を見ると、彼も私の方を見て頷いた。
陛下が一番先に部屋から出ていくと、クズーズ殿下が立ち上がる。
「悪かったな、アレク。僕の勝ちだ」
「まだわかりませんよ」
「何を言っているんだ。貴族の間での君の評価が悪い事は知っているぞ」
「昔よりかはマシにはなっていますよ」
「昔よりか、だろ」
クズーズ殿下は鼻で笑うと、座っている私を見下ろして言う。
「エリナ。絶対に君の方から僕の婚約者に戻りたいと言わせてみせるからな」
「そんな事は絶対にありえません」
「そんな事を言っていられるのも今のうちだ」
クズーズ殿下は笑みを浮かべると部屋を出て行った。
「一体、何を考えているのかわからん」
お父様が呟くと、エイナが言う。
「お父様、パーティー楽しみですね!」
その言葉を聞いたお父様は頭を抱え、私とアレク殿下は呆れ顔になった。
結婚式の日取りまで時間もなくなってきているから、夜会も近い内に行われるはず。
私達もそれまでにやれる事をしなくてはいけないわね。
相手がこんなに呑気なのであれば、今からだって間に合うはずだわ。
階段近くでは声が響く為、少し場所を移動してクズーズ殿下の部屋の前までやって来たところで、アレク殿下が不機嫌そうな顔で尋ねた。
「わかってるさ! だけど、アレク、お前は僕から全てを奪うというのか? せめてエリナだけでも僕に譲ってくれてもいいだろう!」
「何を馬鹿な事を言っているんですか!」
叫ぶアレク殿下の後に、私が口を開く。
「クズーズ殿下、私はもうあなたの婚約者ではないのですよ? どうして私があなたと結婚しなければならないのです? 意味がわかりません」
「エリナの可愛さはわかる人にしかわからないが、エイナの可愛さは全ての人がわかるから、彼女は王妃に向いていると思うんだ。顔が可愛ければ頭が悪くても王妃になれるからな」
私の質門に対してのクズーズ殿下の返答に思わずため息を吐く。
自分の母親の事をまるで顔がいいだけと言っている事に気付けないのかしら。
「クズーズ殿下…」
その事を伝える為に口を開こうとすると、クズーズ殿下が首を横に振って止めてくる。
「返事は5日後でかまわない! それまでに良い案が思いついたら、その時は返事の期限を延長する!」
「はい?」
「兄上! ふざけた事を言うのは止めてください!」
アレク殿下が声を荒らげて、クズーズ殿下の襟首を掴むと、クズーズ殿下が叫ぶ。
「ひいっ! 兄に暴力をふるうつもりか!?」
「暴力をふるいたくなる様な事を仰るからです!」
「うるさい! アレクには関係ない! じゃあな、エリナ、気を付けて帰るんだぞ!」
クズーズ殿下はアレク殿下の手を振り払い、言いたい事だけ述べて、自分の部屋の扉に手を掛ける。
「クズーズ殿下! どんな状況でもあなたとの結婚なんてお断りですわ!」
叫んだ時には、クズーズ殿下は部屋の中に入ってしまっていた。
クズーズ殿下の部屋の前で立っていた騎士達が私達を気の毒そうな目で見ているのがわかった。
「兄上が申し訳ない。何を言っているのか本人も理解していないと思う」
「アレク殿下に謝っていただく事ではありませんわ」
「当たり前の話だが、どんな事があっても、君が望まない限り、君を兄上に渡すつもりはないから」
アレク殿下の言葉がまるで小説の王子様の様な発言に聞こえてしまって、深い意味はないとわかっていながらも、胸の鼓動が早くなるのを感じた。
アレク殿下に家まで送り届けてもらって少ししてから、お父様がエイナよりも先に帰ってきた。
エイナがまだ帰ってきてない事を告げると、お父様もすでに事情は把握されていて、自由気ままな王妃殿下とエイナに呆れてエイナは置いて帰ってきたらしかった。
さすがに城の馬車を出してくれるだろうから、エイナが帰ってこれなくなる事はないだろうとの判断みたいね。
お父様に陛下からの話は何だったのか聞いてみると、まだ私達には言えないらしく、内容は教えてはもらえなかったのだけれど、私に不利な話ではないという事なのでホッとした。
「お父様、クズーズ殿下の件なんですが…」
「どうかしたのか?」
「実は…」
お父様の執務室にはピート兄様もいて、2人に先程のクズーズ殿下の話をすると、お父様は執務机を叩き、ピート兄様は呆れた顔をした。
「何を考えてるんだ! クズーズ殿下は自分の置かれている立場をわかってなさすぎる!」
「昔から脳天気な一面はありましたが、大人になって、より顕著になったのかもしれませんね」
ピート兄様はお父様の背中を撫でながら、大きくため息を吐いた。
「お父様、クズーズ殿下と結婚なんてしなくてもいいですよね? 言ってらっしゃる事が無茶苦茶ですもの」
「当たり前だ。それに、アレク殿下も認めたりしないと言ってくれたんだろう?」
「あ、はい」
その時の事を思い出すと頬が熱くなってしまうわ。
冷たい手を頬に当てて冷やしていると、ピート兄様が笑う。
「エリナがアレク殿下と上手くいっているみたいで良かったよ」
「政略結婚みたいなものですから、上手くいくもいかないもありません」
「エイナとクズーズ殿下は上手くいってないみたいだけどね?」
「あの2人は特殊だと思います」
私が答えるとピート兄様だけでなく、お父様までもが苦笑した。
多くの貴族は親の決められた相手と結婚する。
中には恋愛結婚をする人もいるけれど、小さい頃に決められた婚約者が変わる事はそうない。
相手がよっぽどでない限り、結婚するのが当たり前だけれど、クズーズ殿下はよっぽどの部類に入るのかしら。
入るわよね、きっと。
そういえば…。
「ピート兄様は結婚はなさらないんですか?」
「ああ、僕は今のところは考えてないよ」
「婚約者はいらっしゃいませんし、もしかして、好きな人がいらっしゃるとか…?」
「あー、うーん、まあ、そうかな。中々難しいんだけどね」
「もしかして、お兄様が勉強に行ってらっしゃる公爵家の方ですか!?」
ピート兄様の恋の話が聞けるかもしれないと思い、クズーズ殿下の事をすっかり忘れて、ピート兄様に話しかけると、お父様が咳払いをする。
「その話はあとにしなさい。それよりもクズーズ殿下の件だが…」
「申し訳ございません」
お父様に謝ってから、次の言葉を待つ。
「クズーズ殿下がたとえ、エリナと結婚したがっても、クズーズ殿下とエイナの結婚は決まっている事だから安心しなさい」
「ありがとうございます、お父様」
私達が話し合っていても状況は変わらないという事で、この話はここで終わりにして、ピート兄様の話を別の部屋で私だけ聞かせてもらう事になった。
そして3日後、私達は国王陛下から呼び出され、登城する事になった。
呼び出されたのはお父様、私、エイナの3人。
登城して案内された部屋に入ると、すでに国王陛下、クズーズ殿下、アレク殿下がソファーに座っていて、前回に話し合いをした時と同じ配置だったので、私達も前回と同じ様に座った。
今回はメイドにお茶を入れてもらい、部屋から出ていくのを確認し、国王陛下は私達の顔を見回してから口を開く。
「クズーズが良い案を思いついたんだそうだ」
「……」
無言でクズーズ殿下の方を見ると、なぜか勝ち誇ったような顔をしていた。
よっぽど良い案を思いついたのかしら?
そう思って、クズーズ殿下が口を開くのを待っていると、誇らしげな顔はそのままに話し始める。
「やはり、国王に必要なものは信頼性だと思うんです」
「信頼性?」
陛下が聞き返すと、クズーズ殿下は頷いて続ける。
「民に慕われているのもそうですが、まずは貴族に信用してもらっているかが大事だと思うんです」
そこまで話を聞いて、クズーズ殿下が何を言おうとしているかに気付き、私だけじゃなく向かい側に座っているアレク殿下も眉根を寄せた。
「僕が優れいているか、アレクが優れているか、貴族に判断してもらおうと思います」
「どちらを国王にするかを投票か何かで決めるつもりか?」
「さすが、父上です! 話が早い!」
クズーズ殿下は頷くと、私達の顔を見回して言う。
「夜会を開こうと思うんです。一日では無理だろうから、5日程続けて、そこで貴族達に僕とアレク、どちらが国王にふさわしいか投票してもらうんです。貴族であれば誰が参加してもかまわない。招待状は全ての貴族に送るんです」
お金の無駄だわ。
一瞬、そんな考えが頭をよぎったけれど、陛下は面白がっている様な顔をされているし、この案を許可されるように思えた。
「いいだろう。それでアレクが勝ったらお前は国王の座を諦めるんだな?」
陛下が足を組み替え、肘置きに肘を置いて尋ねると、クズーズ殿下は大きく首を縦に振った。
「ええ! もちろんです!」
クズーズ殿下は勝つ自信があるみたいね。
もちろん、これに関しては彼に分があるのは私にもわかるわ。
クズーズ殿下もエイナも外面が良いので貴族には人気があるのは、私だって知っている。
そして、私とアレク殿下が貴族に評判が悪いという事も。
以前よりかはマシになってきているとはいえ、まだクズーズ殿下達の方が評価は高い。
アレク殿下もそれを考えている様で難しい顔をされていた。
「いいだろう。そうだ、エイナ。夜会の手配についてはお前がやればいい」
「何をですか?」
「招待客のリストなどを作る作業だ。あと、夜会は何日行うのか、料理などの手配も考えろ」
「そんな難しい事、私には出来ません!」
陛下の言葉にきっぱりと答えたエイナに、お父様はぎょっとした顔をされたけれど、陛下は笑っただけだった。
「誰かに助けを借りればいいだろう。君の母にお願いしたらどうだ?」
「そうですね! そうします! ありがとうございます陛下!」
そうしますじゃないわよ。
一体、何を考えてるの?
私がやると言ったほうが良いのかしら?
それともエイナにやらせて無茶苦茶な夜会になったほうが良いのかしら。
そんな事を考えている間に、陛下の方では終わった話になってしまったらしく、膝を手で叩くと言う。
「この話はこれで終わりだ。日程などはまたエイナの方から連絡があるだろう。もちろん、その間に色々と動く事はかまわない」
陛下の言葉に含みがある気がして、私がアレク殿下の方を見ると、彼も私の方を見て頷いた。
陛下が一番先に部屋から出ていくと、クズーズ殿下が立ち上がる。
「悪かったな、アレク。僕の勝ちだ」
「まだわかりませんよ」
「何を言っているんだ。貴族の間での君の評価が悪い事は知っているぞ」
「昔よりかはマシにはなっていますよ」
「昔よりか、だろ」
クズーズ殿下は鼻で笑うと、座っている私を見下ろして言う。
「エリナ。絶対に君の方から僕の婚約者に戻りたいと言わせてみせるからな」
「そんな事は絶対にありえません」
「そんな事を言っていられるのも今のうちだ」
クズーズ殿下は笑みを浮かべると部屋を出て行った。
「一体、何を考えているのかわからん」
お父様が呟くと、エイナが言う。
「お父様、パーティー楽しみですね!」
その言葉を聞いたお父様は頭を抱え、私とアレク殿下は呆れ顔になった。
結婚式の日取りまで時間もなくなってきているから、夜会も近い内に行われるはず。
私達もそれまでにやれる事をしなくてはいけないわね。
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