4 / 19
第3話 運気が変わる午後
しおりを挟む
次の日の朝、ビューホ様からは何もしなくて良いと言われていたけれど、シェーラ様からは伯爵の妻としての仕事はする様にと言われた。
断る事も出来たのかもしれないけれど、実家でこき使われる事に慣れてしまった私には、ゆっくりするという事が出来ず、暇を持て余してしまいそうだし、トライト家の内情を知れるという利点もあったので引き受ける事にした。
トライト伯爵家での夫人のやる仕事は、現在はシェーラ様がしていらしたのだけど、金銭感覚があまりない方の様だった。
大雑把な性格というか、数字を合わせようという気がない様で、経理には向いていないと思われる。
帳簿を見せてもらったけれど、明らかに収支が合っていないのに、無理矢理、数字を合わせていて、実際、トライト家の財産がどれくらいあるのかわからない状態になっていた。
とにかく、まずは今ある財産、特に家に置いてある現金と銀行に預けてあるお金が帳簿と合っているか確認しなければならない。
数字が合わなくなっているのは、先代の当主様が亡くなってからなので何年も前になる。
銀行に連絡すれば今の預金残高、借入金などの詳しい資料は送ってくれるはず。
家の中にある現金については金庫の中に入っていると思うのだけれど、金庫はビューホ様の部屋の中にある為、どうやって確認すれば良いのか考える。
トライト家で私の味方になってくれそうな人は、今のところミオナだけ。
他のメイド達は私の事をどう扱って良いのかわからないといった感じで、当たり障りのない対応をしてくる。
もちろん、それが当たり前で彼女達の仕事をこなしてくれているから、それに関しての文句はない。
トライト家の執事は私の事を奥様と呼んでくれて、フィナさんの事を良く思っていないみたいだから、ビューホ様の金庫の中身を彼に調べてもらう様に頼んでみようかしら?
それとも、ビューホ様に素直に頼んでみるべき?
「金を盗むつもりだろう」とか言われる様な気がするから、出来れば、第三者に頼みたい。
ビューホ様に頼んでも、しっかり金額を確認せずに大雑把に答えてくるだけの様な気がするから。
トライト家の内情を調べながらも私は私でやらないといけない事があるので、早めの昼食をとり、外出しようとすると、エントランスホールでビューホ様から話しかけられた。
「……どこへ行くんだ?」
「少し街に出てこようかと思いまして」
「それなら、ちょっと遠出をして、フィナの好きな店のお菓子を買ってきてくれ」
「……フィナ様のお好きなお菓子というものを私は存じ上げないのですが、どの様なものなのでしょうか?」
「有名な洋菓子店のお菓子だよ! 貴族しか行かない店だ!」
「……それだけではわかりかねます」
「わかれよ! フィナの事だぞ!? 普通はわかるだろう!? 本当に頭が悪いな!」
何をもって普通なのかが全くわからないわ。
フィナさんの事をどうして私が詳しく知っていると思い込んでいるのかしら。
「あの、フィナさんは今、どちらに?」
「フィナさん、じゃない、フィナ様だ!」
「……で、どちらにいらっしゃるのですか?」
ため息を吐かない様に何とかこらえてから尋ねると、ビューホ様は答える。
「俺の部屋に決まっているだろう! 傍に置いておけと言ったのはお前じゃないか!」
「では、ビューホ様がフィナ様の好みをご存知ない様ですので聞いてまいります」
「はあ!? 知らないわけがないだろう! フィナはイツースという名前の店のマドレーヌが大好物なんだ!」
「イツースという店のマドレーヌですわね? プレーンでよろしいでしょうか?」
「当たり前だ! その店にマドレーヌはプレーンしか販売していないからな!」
ビューホ様は胸の前で腕を組み、ふんと鼻を鳴らした。
「承知いたしました。馬車はお借りしてもよろしいですわよね?」
「勝手にしろ! 絶対に買ってこいよ! フィナの分だけじゃなく俺や母上の分も買ってくるんだ。最低6個は買ってくるんだぞ! イツースのマドレーヌを買ってこない限り、この家には入れないからな!」
面倒くさい人だわ…。
大きな唾を飛ばしながら叫ぶビューホ様を冷めた目で見た後、一礼してから、馬車を出してもらう為に馭者が待機している部屋に向かった。
「イツースのマドレーヌは、今の時間じゃ売り切れていると思います。人気商品ですから…」
馭者に目的地を伝えると、申し訳無さそうな顔をして、そう教えてくれた。
「じゃあ、ビューホ様は絶対に買えない事がわかっていて、私に買ってこいと言ったのね…」
ビューホ様の事を常識のない、いいかげんな人だと思っていたけれど、性格が悪いという事も再認識した。
今はティータイムよりもかなり早い時間。
でも、人気店なら売り切れの可能性も無きにしもあらずとは思ってはいたけれど、馭者が教えてくれた話ではイツースのマドレーヌは朝早くから並んで買うか、10個以上の注文だと前日までなら予約を受け付けてくれるらしいから、貴族の場合は予約する人が多いのだそう。
これまた腹が立つ事に、イツースがあるのは、トライト伯爵領内ではなく、隣の公爵領にあるらしい。
どうせ、そちらに行こうと思っていたから良いのだけれど、マドレーヌを手に入れるのは今日は無理そうね…。
イツースの近くに安い宿があれば良いのだけど…。
お店の近くに宿があれば、前日予約をして宿に泊まって、マドレーヌを買ってから帰れば良いでしょう。
本当は宿に泊まるという無駄使いはしたくないけれど、買って帰らなければ家にいれてはくれないでしょうし。
とにかく、馭者には目的の店に向かってもらう事にした。
トライト伯爵領は伯爵といっても弱小で管理している土地も狹い範囲なのと、トライト家がイシュル公爵領に近い場所にあるので、目的の店までは馬車で1時間とちょっとで行けた。
お店には無事に辿り着いて、外から中を見ると、店の中には客はおらず、全て売り切れてしまったのか他のお菓子さえも置かれていなかった。
予約をする為に、私が店に入っていくと、中年の女性が申し訳なさげな顔をして出てきて、何度も頭を下げてくれながら言う。
「申し訳ございません。今日の分はもう売り切れでして、予約のお客様の分しかないのです」
「この時間に来た私が悪いんですから謝らないで下さい。あの、明日の分の予約は出来ますか?」
「それはもちろんです。ですが、また明日、こちらに足を運んでいただく事になりますが…」
「それはかまいません。あの、もし知っておられましたら、この近くにある宿がどの辺りにあるのか教えていただけませんか? 出来れば女性一人で泊まっても安全なところが良いのですが…」
買ってこないと帰ってくるなと言われたと説明すると、女性はまた困った顔をした後、「あんた、ちょっとこっちに来てよ!」と店の奥に向かって叫んだ。
店の奥から旦那さんらしき中年の男性が出てくると、私に一礼してから女性の方を見た。
「何だよ、お客様の前で…」
「マドレーヌ、まだ坊っちゃんの分は残ってたよね? この人に少し分けてあげようと思うんだけど」
「残っているけど、長い付き合いとはいえ、彼は貴族の息子さんだぞ。何より、人のものを勝手にあげるわけにはいかんだろ。それに坊っちゃん好みに仕上げたマドレーヌだし」
「勝手にあげたりはしないわよ。坊っちゃんにお願いしてからに決まってるでしょ!」
奥さんが叫んだ時だった。
「俺がどうかしたのか?」
どこか幼さを感じさせる声が聞こえて振り返ると、長身痩躯の綺麗な顔立ちに、腰に剣を携えた騎士の様な服装の男性がいた。
彼は、私と目が合うと小首を傾げた。
断る事も出来たのかもしれないけれど、実家でこき使われる事に慣れてしまった私には、ゆっくりするという事が出来ず、暇を持て余してしまいそうだし、トライト家の内情を知れるという利点もあったので引き受ける事にした。
トライト伯爵家での夫人のやる仕事は、現在はシェーラ様がしていらしたのだけど、金銭感覚があまりない方の様だった。
大雑把な性格というか、数字を合わせようという気がない様で、経理には向いていないと思われる。
帳簿を見せてもらったけれど、明らかに収支が合っていないのに、無理矢理、数字を合わせていて、実際、トライト家の財産がどれくらいあるのかわからない状態になっていた。
とにかく、まずは今ある財産、特に家に置いてある現金と銀行に預けてあるお金が帳簿と合っているか確認しなければならない。
数字が合わなくなっているのは、先代の当主様が亡くなってからなので何年も前になる。
銀行に連絡すれば今の預金残高、借入金などの詳しい資料は送ってくれるはず。
家の中にある現金については金庫の中に入っていると思うのだけれど、金庫はビューホ様の部屋の中にある為、どうやって確認すれば良いのか考える。
トライト家で私の味方になってくれそうな人は、今のところミオナだけ。
他のメイド達は私の事をどう扱って良いのかわからないといった感じで、当たり障りのない対応をしてくる。
もちろん、それが当たり前で彼女達の仕事をこなしてくれているから、それに関しての文句はない。
トライト家の執事は私の事を奥様と呼んでくれて、フィナさんの事を良く思っていないみたいだから、ビューホ様の金庫の中身を彼に調べてもらう様に頼んでみようかしら?
それとも、ビューホ様に素直に頼んでみるべき?
「金を盗むつもりだろう」とか言われる様な気がするから、出来れば、第三者に頼みたい。
ビューホ様に頼んでも、しっかり金額を確認せずに大雑把に答えてくるだけの様な気がするから。
トライト家の内情を調べながらも私は私でやらないといけない事があるので、早めの昼食をとり、外出しようとすると、エントランスホールでビューホ様から話しかけられた。
「……どこへ行くんだ?」
「少し街に出てこようかと思いまして」
「それなら、ちょっと遠出をして、フィナの好きな店のお菓子を買ってきてくれ」
「……フィナ様のお好きなお菓子というものを私は存じ上げないのですが、どの様なものなのでしょうか?」
「有名な洋菓子店のお菓子だよ! 貴族しか行かない店だ!」
「……それだけではわかりかねます」
「わかれよ! フィナの事だぞ!? 普通はわかるだろう!? 本当に頭が悪いな!」
何をもって普通なのかが全くわからないわ。
フィナさんの事をどうして私が詳しく知っていると思い込んでいるのかしら。
「あの、フィナさんは今、どちらに?」
「フィナさん、じゃない、フィナ様だ!」
「……で、どちらにいらっしゃるのですか?」
ため息を吐かない様に何とかこらえてから尋ねると、ビューホ様は答える。
「俺の部屋に決まっているだろう! 傍に置いておけと言ったのはお前じゃないか!」
「では、ビューホ様がフィナ様の好みをご存知ない様ですので聞いてまいります」
「はあ!? 知らないわけがないだろう! フィナはイツースという名前の店のマドレーヌが大好物なんだ!」
「イツースという店のマドレーヌですわね? プレーンでよろしいでしょうか?」
「当たり前だ! その店にマドレーヌはプレーンしか販売していないからな!」
ビューホ様は胸の前で腕を組み、ふんと鼻を鳴らした。
「承知いたしました。馬車はお借りしてもよろしいですわよね?」
「勝手にしろ! 絶対に買ってこいよ! フィナの分だけじゃなく俺や母上の分も買ってくるんだ。最低6個は買ってくるんだぞ! イツースのマドレーヌを買ってこない限り、この家には入れないからな!」
面倒くさい人だわ…。
大きな唾を飛ばしながら叫ぶビューホ様を冷めた目で見た後、一礼してから、馬車を出してもらう為に馭者が待機している部屋に向かった。
「イツースのマドレーヌは、今の時間じゃ売り切れていると思います。人気商品ですから…」
馭者に目的地を伝えると、申し訳無さそうな顔をして、そう教えてくれた。
「じゃあ、ビューホ様は絶対に買えない事がわかっていて、私に買ってこいと言ったのね…」
ビューホ様の事を常識のない、いいかげんな人だと思っていたけれど、性格が悪いという事も再認識した。
今はティータイムよりもかなり早い時間。
でも、人気店なら売り切れの可能性も無きにしもあらずとは思ってはいたけれど、馭者が教えてくれた話ではイツースのマドレーヌは朝早くから並んで買うか、10個以上の注文だと前日までなら予約を受け付けてくれるらしいから、貴族の場合は予約する人が多いのだそう。
これまた腹が立つ事に、イツースがあるのは、トライト伯爵領内ではなく、隣の公爵領にあるらしい。
どうせ、そちらに行こうと思っていたから良いのだけれど、マドレーヌを手に入れるのは今日は無理そうね…。
イツースの近くに安い宿があれば良いのだけど…。
お店の近くに宿があれば、前日予約をして宿に泊まって、マドレーヌを買ってから帰れば良いでしょう。
本当は宿に泊まるという無駄使いはしたくないけれど、買って帰らなければ家にいれてはくれないでしょうし。
とにかく、馭者には目的の店に向かってもらう事にした。
トライト伯爵領は伯爵といっても弱小で管理している土地も狹い範囲なのと、トライト家がイシュル公爵領に近い場所にあるので、目的の店までは馬車で1時間とちょっとで行けた。
お店には無事に辿り着いて、外から中を見ると、店の中には客はおらず、全て売り切れてしまったのか他のお菓子さえも置かれていなかった。
予約をする為に、私が店に入っていくと、中年の女性が申し訳なさげな顔をして出てきて、何度も頭を下げてくれながら言う。
「申し訳ございません。今日の分はもう売り切れでして、予約のお客様の分しかないのです」
「この時間に来た私が悪いんですから謝らないで下さい。あの、明日の分の予約は出来ますか?」
「それはもちろんです。ですが、また明日、こちらに足を運んでいただく事になりますが…」
「それはかまいません。あの、もし知っておられましたら、この近くにある宿がどの辺りにあるのか教えていただけませんか? 出来れば女性一人で泊まっても安全なところが良いのですが…」
買ってこないと帰ってくるなと言われたと説明すると、女性はまた困った顔をした後、「あんた、ちょっとこっちに来てよ!」と店の奥に向かって叫んだ。
店の奥から旦那さんらしき中年の男性が出てくると、私に一礼してから女性の方を見た。
「何だよ、お客様の前で…」
「マドレーヌ、まだ坊っちゃんの分は残ってたよね? この人に少し分けてあげようと思うんだけど」
「残っているけど、長い付き合いとはいえ、彼は貴族の息子さんだぞ。何より、人のものを勝手にあげるわけにはいかんだろ。それに坊っちゃん好みに仕上げたマドレーヌだし」
「勝手にあげたりはしないわよ。坊っちゃんにお願いしてからに決まってるでしょ!」
奥さんが叫んだ時だった。
「俺がどうかしたのか?」
どこか幼さを感じさせる声が聞こえて振り返ると、長身痩躯の綺麗な顔立ちに、腰に剣を携えた騎士の様な服装の男性がいた。
彼は、私と目が合うと小首を傾げた。
31
お気に入りに追加
1,811
あなたにおすすめの小説
〖完結〗私が死ねばいいのですね。
藍川みいな
恋愛
侯爵令嬢に生まれた、クレア・コール。
両親が亡くなり、叔父の養子になった。叔父のカーターは、クレアを使用人のように使い、気に入らないと殴りつける。
それでも懸命に生きていたが、ある日濡れ衣を着せられ連行される。
冤罪で地下牢に入れられたクレアを、この国を影で牛耳るデリード公爵が訪ねて来て愛人になれと言って来た。
クレアは愛するホルス王子をずっと待っていた。彼以外のものになる気はない。愛人にはならないと断ったが、デリード公爵は諦めるつもりはなかった。処刑される前日にまた来ると言い残し、デリード公爵は去って行く。
そのことを知ったカーターは、クレアに毒を渡し、死んでくれと頼んで来た。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全21話で完結になります。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。
初恋の兄嫁を優先する私の旦那様へ。惨めな思いをあとどのくらい我慢したらいいですか。
梅雨の人
恋愛
ハーゲンシュタイン公爵の娘ローズは王命で第二王子サミュエルの婚約者となった。
王命でなければ誰もサミュエルの婚約者になろうとする高位貴族の令嬢が現れなかったからだ。
第一王子ウィリアムの婚約者となったブリアナに一目ぼれしてしまったサミュエルは、駄目だと分かっていても次第に互いの距離を近くしていったためだった。
常識のある周囲の冷ややかな視線にも気が付かない愚鈍なサミュエルと義姉ブリアナ。
ローズへの必要最低限の役目はかろうじて行っていたサミュエルだったが、常にその視線の先にはブリアナがいた。
みじめな婚約者時代を経てサミュエルと結婚し、さらに思いがけず王妃になってしまったローズはただひたすらその不遇の境遇を耐えた。
そんな中でもサミュエルが時折見せる優しさに、ローズは胸を高鳴らせてしまうのだった。
しかし、サミュエルとブリアナの愚かな言動がローズを深く傷つけ続け、遂にサミュエルは己の行動を深く後悔することになる―――。
白い結婚の王妃は離縁後に愉快そうに笑う。
三月べに
恋愛
事実ではない噂に惑わされた新国王と、二年だけの白い結婚が決まってしまい、王妃を務めた令嬢。
離縁を署名する神殿にて、別れられた瞬間。
「やったぁー!!!」
儚げな美しき元王妃は、喜びを爆発させて、両手を上げてクルクルと回った。
元夫となった国王と、嘲笑いに来た貴族達は唖然。
耐え忍んできた元王妃は、全てはただの噂だと、ネタバラシをした。
迎えに来たのは、隣国の魔法使い様。小さなダイアモンドが散りばめられた紺色のバラの花束を差し出して、彼は傅く。
(なろうにも、投稿)
忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。
旦那様、離婚しましょう
榎夜
恋愛
私と旦那は、いわゆる『白い結婚』というやつだ。
手を繋いだどころか、夜を共にしたこともありません。
ですが、とある時に浮気相手が懐妊した、との報告がありました。
なので邪魔者は消えさせてもらいますね
*『旦那様、離婚しましょう~私は冒険者になるのでお構いなく!~』と登場人物は同じ
本当はこんな感じにしたかったのに主が詰め込みすぎて......
【完結】妹にあげるわ。
たろ
恋愛
なんでも欲しがる妹。だったら要らないからあげるわ。
婚約者だったケリーと妹のキャサリンが我が家で逢瀬をしていた時、妹の紅茶の味がおかしかった。
それだけでわたしが殺そうとしたと両親に責められた。
いやいやわたし出かけていたから!知らないわ。
それに婚約は半年前に解消しているのよ!書類すら見ていないのね?お父様。
なんでも欲しがる妹。可愛い妹が大切な両親。
浮気症のケリーなんて喜んで妹にあげるわ。ついでにわたしのドレスも宝石もどうぞ。
家を追い出されて意気揚々と一人で暮らし始めたアリスティア。
もともと家を出る計画を立てていたので、ここから幸せに………と思ったらまた妹がやってきて、今度はアリスティアの今の生活を欲しがった。
だったら、この生活もあげるわ。
だけどね、キャサリン……わたしの本当に愛する人たちだけはあげられないの。
キャサリン達に痛い目に遭わせて……アリスティアは幸せになります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる