念願の異世界転生！ただ転生先は土でした。

1.ケイ素、故に我在り

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名前:None(未設定)
年齢:不明
種族:土
主成分:ケイ素
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どうやら俺は土に転生したらしい。

そもそもで土が生物判定なのかなどの疑問があるが...
我思う故に我ありということだろう。

ここからどうしようか...

脳(?)内に再び電子音声が響く。
《転生者応援特別プレゼント、「探知」スキル贈呈！！》

えらくRPGにありがちなものな気がするが、まあいい、
探知スキルだ！誰かわからんけどありがとう！

体に何かが流れる感覚が広がると同時に眼の前に景色が広がる。

圧倒的大自然、一面のクソミドリ。

どうやら異世界にありがちのだだっぴろい草原にいるらしい。

足元には、ちょっと色が違う土が。

これが俺かよ。

周りがわかっても、いったいどうすれば。

ザッザッ。

何かが歩いているような音がする。

いったいなんなんだ？


その正体は、農夫らしきおっさんだった。
本来ならば初めて人と出会ったので喜ぶべきであろうが、
陰キャオブザイヤーの俺には、荷が重すぎた。

「この辺の土、滋養豊富だし持って帰るべ」

急にこのおじさんは、足元の土を掘り始めていった。
ときおりスコップの端っこがかすって痛い。

まずい、逃げなければ！

三十六計逃げるにしかず、
こちとら帰宅部エース！
そこらの農夫のおっさんに負けるはずがない！
頑張れ自分、逃げるのだ！


.....そういえば自分、土なので足がないんでした。

どうする、どうする！？

《熟練度が一定に達したため、スキル『分身操作Lv.1』を獲得しました。》

このタイミングでスキル！？

この新しいスキルで起死回生の一手を....

《このスキルでは、自分の体の一部を自由に操ることができます。》

おお、まさしく土による土の土のためのスキル！

ただ...

このスキルどうやって使うんだ。

そんなこんなしていると、

痛っ！

なにこれ！？

足元に激痛が走った。
先ほどまでとは比べ物にならない痛み。

何が起こったんだ！？

眼の前には受け止めきれない事実が広がっていた。

自分の体の一部が切り裂かれていたのだ。

痛い。

恐怖の感情が体中を巡る。

俺はこのまま死んでしまうのだろうか。

クソッ！

どうしたらいいんだ。

農夫のおっさんに対する怒りが沸々と湧いてくる。
 
≪スキル『分身操作Lv.１』を使用しますか？≫
 

あれ？

そういえばまだこのスキル使っていなかったな。

こんな状況だ、使ってみるほかないだろう。

しかし、このスキルどうやって使うんだ？

とりあえず感知スキルのときみたいにやってみるか。

んむむ！

 体全体に力を込める。

モコモコモコ...

おじさんのスコップの土がにわかに持ち上がり、おじさんの口に入った！！！

「オエッ　ぺっぺ」

どうやら本当にこのスキルは自分の体の破片を操作できるらしい。

おじさんはむせながらどこかへと去っていった。

ふぅ。

なんとか助かった。

でもこいつ絶対に弱いんだよなぁ。

初勝利がこれだとかなり先が思いやられるな。

どうやら私はこいつらの獲物らしいし...。

まぁ、勝てたしいっか！

これでこれからのスローライフもといダートライフが落ち着くといったものだ。

あれ？

そういえばもしかしてこれって...。
 
引き裂かれた土の破片マイブラザー治らない感じ？