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「リベルさん!」
「何?」

 ルイスがちょんとんと背中をつつき、耳元で語りかけてくる。

「協力してもらいましょう! せっかくの機会じゃないですか!」
「……あなた、仲良くなりたいだけでしょ」
「ギクっ! そ、そんなわけないですよ! 私はリベルさんの下僕です! リベル様サイコー!」
「はぁ……」

 ため息をこぼし、少し考える。
 このまま私たちだけで探すのは、ハッキリ言って難易度が高い。
 しかし彼女はただの生徒だ。
 巻き込むリスクもあるし……。

「私たちは、ある人の命令でこの学園に潜んでいるスパイを探しています」
「スパイ?」
「はい。隣国に情報を流している人間がいます」
「うっ……」

 隣でルイスが反応した。
 あなたの場合は過去形でしょう。

「それは由々しき事態ですね……お二人に依頼した方を聞いてもよろしいですか?」
「申し訳ありませんが言えません。許可を取っていないので」
「そうですか」
「協力して頂けるならありがたいですが、無理なら不干渉で頂きたい」
「……わかりました。協力させてください」

 彼女は少し悩んで、返答した。

「いいのですか?」
「はい。この学園の代表として、そのような方がいるのは見過ごせませんので」
「やりましたよリベルさん! 強力な味方です!」
「そうね……」

 そうなるといいわね。

  ◇◇◇

「――というわけで、フレーリアさんが協力してくれるそうよ」
「だから、脈絡なく結論だけ言わないでくれるか?」

 今日も放課後、レントに報告するため彼の執務室を訪れた。
 ルイスは帰宅している。
 今は私たちだけだ。

「フレーリアか」
「知り合いでしょう? パーティーでも仲良しって聞いたわ」
「別にそういうわけじゃないんだが……ひょっとして嫉妬してくれるのか?」
「私がすると思う?」
「……想像できないな」

 彼は呆れたように笑う。

「大丈夫なのか?」
「レントのことは伝えていないわ」
「だとしても、いずれバレると思うんだが」
「その時はその時よ」

 彼はいつになく難しい顔をしている。
 
「彼女に問題があった?」
「いや、そういうわけじゃ……個人的に少し苦手なんだ」
「――へぇ、意外ね」

 彼は苦手意識を持つ相手がいたのか。
 その眼で魂すら認識できる彼が、他人を苦手だというのは少し驚かされる。
 しかも相手は、あのフレーリアだ。

「なんで苦手なの?」
「……魂も、表情も、いつ見ても変わらないからだよ」
「変化がないのはおかしいことなの?」
「ああ、誰しも魂が動く。人と話したり、感情が動けば呼応する。彼女にはそれがない。まるで人形のようで、笑っているのに……」
「不気味?」
「……理解できないかもしれないけどね」
「そんなことないわ」

 同じだ。
 私もずっと感じていた。
 常に笑顔を絶やさず、明るく丁寧に接する。
 だけど、私を見ていないように見えた。

 まるで……人形と話しているようだった。
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