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 その命令に、私は耳を疑った。

「リベル、お前には明日から学校に通って貰う」
「……はい?」

 一日休みを貰った翌日。
 朝食を終えて、彼の仕事の手伝いを始めようとした時だった。
 話があると言われ、座っている彼の前に立ち、話を聞く姿勢をとっていたのだが……。

「えっと、もう一度お願いできる?」
「学校に行って貰う」
「意味がわからない」

 本当に意味がわからなかった。
 何の脈絡もない。
 事前に相談があったわけでもなければ、必要性も感じていない。
 
 何を言っているんだこの人は……。

「理由を聞いてもいいかしら?」
「そうだな。王都には国中から志願者を集めた学園がある。貴族、平民、国外からでも試験を突破すれば入学は可能だ。もちろん、種族は問わない」
「カイノス王立学園のことでしょ? そんなことは知っているわよ」

 隣国でも有名だ。
 アルザード王国一の教育機関。
 設立から長い歴史を誇る由緒正しき学び舎で、先々代国王の方針で国外や種族を問わず、様々な人に門を開いたのは五十年ほど前。
 それまでは国内の、特に貴族たちが通う学び舎だった。
 しかしそれでは優秀な人材を取りこぼしてしまう。
 人は生まれながらに、教育を受ける権利を持つと先々代国王は主張し、改革を行った。
 結果、多くの学問が増え、生徒数も急増。
 世界でも有数の学び舎の一つとして数えられている。
 先々代国王が行った政策の成功例だが、これも現国王は気に入らないらしい。

「その学園に、なんで私が入らないといけないわけ? 確かに今の私の見た目は、適正年齢ではあるけど」

 中身はもう成人済み、元女王だ。
 学園で学ぶ内容なんて、すでに網羅している。
 自慢じゃないけど、小さいころから英才教育を受けたおかげで、勉強はそれなりにできる。
 そもそも、学園に通いたいなんて一言も話していない。

「ただ通って貰うわけじゃないぞ? これも側役としての任務だ」
「任務って……教養が足りないから学べと?」
「そんなわけあるか。お前に学ぶ必要がないことはわかってる。目的は、人探し……いいや、魔女探しだ」
「――! 学園にいるの?」

 レントは難しい表情を見せる。
 私も背筋を伸ばし、真面目な話を聞く姿勢をとる。

「昨日、天啓があったんだ」

 彼は女神の加護を受ける聖人だ。
 その身には女神の力が宿り、時折声を聞くことがある。
 未来に起こる何か、その前触れ。
 彼にとって重要なことを伝えてくれる……女神の助言。
 それが天啓だ。
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