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しおりを挟む「と言っても、使い方くらいならもうわかっているわ。実戦で試したし」
「魔物に襲われていた時か」
「ええ。助けられる前までは、自分で魔物と戦っていたのよ」
あの時は、連戦に続く連戦と疲労。
それによって限界に達し、ついに魔力が枯渇してしまった。
もしも彼が駆け付けなければ、私は今頃魔物のお腹の中にいただろう。
そう思うとぞっとする。
「試しに使ってみてくれないか?」
「いいけど、魔物が寄ってきても知らないわよ?」
「この辺りに魔物はいないよ。俺が修行で狩っていたら、いつの間にかいなくなったんだ」
「狩り尽くしたのね……」
子供の頃から魔物と戦っていたらしい。
一歩間違えば命を落とすようなことを……。
レントは見かけによらず、命知らずなのかもしれない。
少し呆れてため息をこぼし、私は池のほうへと歩み寄る。
「ふぅ……」
私の身体には、魔力が流れている。
魔力は感情によって増減し、コントロールすることができる。
女王時代、魔女については学んだ。
数ある国の中には、魔女を戦力や相談役として囲い、力をつけている国もある。
もしもそういう国と敵対したら、魔女と戦わなければならない。
実際に戦うのは騎士団になるけど、私も知識としては頭に入れておきたかった。
「まさか、自分の身体で役に立つなんてね」
人生、何が役立つかなんてわからないものだ。
私は右手を前に突き出す。
魔法はイメージだ。
身体に流れる魔力を手のひらに集めて、イメージした現象を引き起こす。
イメージするのは炎。
猛々しく燃える炎が、池の水を蒸発させるように。
「燃えろ」
瞬間、手のひらから火炎が発生する。
火炎は球体となり、池の中心に生成され、わずか一秒ほどで拡散された。
周りは木々だ。
下手に放てば大惨事になるから、池の上で留めて消えるようにイメージした。
上手くいってホッとする。
「凄いな。他にもできるだろ?」
「そうね。あんまり試したことなかったけど」
逃げている時は炎の魔法ばかり使った。
イメージしやすかったし、魔物を一瞬で燃やせるから便利で多用している。
別に炎しか使えないわけじゃない。
目の前には水があるし、ちょっと別のイメージをしよう。
私は池に手を突っ込み、肌で水を感じながらイメージする。
「水よ――走れ」
池に大きな波が発生し、瞬く間に池の外へと流れていく。
池の向こう側の木々がびちゃびちゃになり、池の水は半分以下になってしまった。
「ちょっとやりすぎたわね」
可哀想だから、水を戻そう。
イメージさえ明確なら、ゼロから水を生み出すこともできる。
私は池の上に水球を生成し、そのまま落下させた。
「冷たっ」
勢いがよすぎて水が跳ねて、少し顔にかかってしまった。
しかしこれで池の水は元通りだ。
「これでよし」
「……何がよしだ?」
「あっ……」
池の端に、水を浴びたレントがムスッとした顔で立っていた。
どうやらさっきの衝撃で、思いっきり水を被ったらしい。
「何か言うことは?」
「……ごめんなさい」
まだ制御は難しい。
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