18 / 40
〖設立〗がインストールされました③
しおりを挟む
「カインツ、それにみんなも……」
「よぉレオルス! 昨日は世話になったな」
「……なんのつもりだ?」
「聞こえなかったかよ。これだから無能は困るんだ」
カインツはいつもの調子で悪態をつき、仲間たちもつられて嘲笑する。
見慣れた光景、もう二度と見ることはないと思っていた。
カインツはあきれ顔で言う。
「その結晶は俺たち、ワイルドハントが攻略したボスのものだ。返してもらうぞ」
「……何を言っているんだ? これは俺が――」
「嘘つくなよ! ゴミスキルしか持ってない無能の癖に!」
「――!!」
いつになく、カインツは怒声を上げる。
感情的になることの多いカインツだけど、ここまで苛立ちを顕著に表したのは初めてかもしれない。
昨夜のことが影響しているのは明白だ。
「支部長さん、こいつは嘘の報告をしてるぜ」
「……ほう、どのあたりが嘘ですか?」
「全部だよ! 全部! こいつがボスモンスターを一人で攻略できるわけねーだろ。文字読み取るしかできないゴミスキル持ちだぜ? どうやって倒すんだ?」
「そうですよー、クビになった腹いせに嘘までついて……情けないですね、レオルス先輩」
カインツに同調して、ロゼがニヤニヤと笑みを浮かべる。
まさかと思うけど、昨夜のことを話していないのか?
知っていればこんな態度は……いや、知っても同じ態度をとる可能性もあるか。
どちらにしろ、彼らの思惑は透けて見える。
「嘘なんて一つもない。俺は自力でボスを倒したんだ。カインツ、君たちが俺をダンジョンで見捨ててくれたおかげだよ」
「見捨てた?」
ピクリと反応したのはラクテルさんだった。
彼は支部長、組合の規定側の人間だ。
ダンジョン内での裏切り行為は禁止されている。
この話は聞き逃せないだろう。
「逆だろうがよぉ。お前が一人で逃げ出したんだ。俺たちを置いて、せっせと一人だけ逃げたんだ。だから運よく助かったんだろ?」
「違う。君があの時、ガーディアンサーペントの前に俺を押し出したんじゃないか」
俺とカインツは言い合う。
どちらも譲らない。
嘘と真実をぶつけ合い、話は平行線だ。
「お二人とも落ち着いてください」
ヒートアップする俺とカインツに、ラクテルさんが割って入る。
「まずはお二人の話を、それぞれ私に聞かせていただけますか?」
「はい」
「いいぜ。どっちを信じるかは明白だからなぁ」
カインツは笑みを浮かべる。
ギルドとしての信用、これまでの貢献度。
ラクテルさんが重視する実績の面で見れば、俺よりもカインツたちを信じることになる。
それれでも、俺は嘘はついていない。
裏切られ、見殺しにされたのは俺のほうなのだから。
「事情は把握しました。どちらの主張も、今のところ完全には信用しかねます」
「は? なんでだよ! 俺たちが倒したんだ!」
「ではなぜ? 結晶を彼が持っているのですか? 一人逃げ出したのなら、倒した現場に彼はいなかったはずでは?」
「っ……後からこっそり戻ったんだ。俺たちは疲れてて、結晶を回収する余裕がなかった」
苦し紛れの主張だ。
ラクテルさんは冷静に、カインツの主張の矛盾をつく。
その次に俺へと視線を向ける。
「レオルス様の主張にも疑問はあります。あなたの情報はワイルドハントから伺っておりますが、確かに単独でボスを攻略するには能力が低い」
「そうだろ? こいつにボス攻略なんて不可能――」
「ですからこうしましょう」
ラクテルさんはカインツの声を遮り、俺に提案する。
「レオルス様には、これよりご自身の力を証明して頂きたいのです」
「証明? どうすればいいんですか?」
「簡単です。レオルス様の実力を私に見せてください。ボスの単独攻略は非常に少ない事例です。幸運だけでは決して成しえない奇跡……英雄の所業です」
英雄……俺が一番ほしい呼び名をラクテルさんは口にした。
「そうですね。では、カインツ様率いるパーティーと模擬戦を行って頂きましょう。そこでレオルス様の実力が主張に見合っているか否か、私の目で確かめさせていただきます。いかがでしょうか?」
ラクテルさんは俺とカインツを交互に見る。
提案を受け行けるか否か。
聞くまでもない。
俺も、カインツも、答えは決まっている。
「やります」
「いいぜ! 手っ取り早いじゃねーか!」
こうして、俺とカインツ率いるパーティーの模擬戦が決定した。
かつての仲間と刃を交えることになる。
躊躇するだろうか?
少なくともカインツ相手に、その心配はなさそうだ。
「よぉレオルス! 昨日は世話になったな」
「……なんのつもりだ?」
「聞こえなかったかよ。これだから無能は困るんだ」
カインツはいつもの調子で悪態をつき、仲間たちもつられて嘲笑する。
見慣れた光景、もう二度と見ることはないと思っていた。
カインツはあきれ顔で言う。
「その結晶は俺たち、ワイルドハントが攻略したボスのものだ。返してもらうぞ」
「……何を言っているんだ? これは俺が――」
「嘘つくなよ! ゴミスキルしか持ってない無能の癖に!」
「――!!」
いつになく、カインツは怒声を上げる。
感情的になることの多いカインツだけど、ここまで苛立ちを顕著に表したのは初めてかもしれない。
昨夜のことが影響しているのは明白だ。
「支部長さん、こいつは嘘の報告をしてるぜ」
「……ほう、どのあたりが嘘ですか?」
「全部だよ! 全部! こいつがボスモンスターを一人で攻略できるわけねーだろ。文字読み取るしかできないゴミスキル持ちだぜ? どうやって倒すんだ?」
「そうですよー、クビになった腹いせに嘘までついて……情けないですね、レオルス先輩」
カインツに同調して、ロゼがニヤニヤと笑みを浮かべる。
まさかと思うけど、昨夜のことを話していないのか?
知っていればこんな態度は……いや、知っても同じ態度をとる可能性もあるか。
どちらにしろ、彼らの思惑は透けて見える。
「嘘なんて一つもない。俺は自力でボスを倒したんだ。カインツ、君たちが俺をダンジョンで見捨ててくれたおかげだよ」
「見捨てた?」
ピクリと反応したのはラクテルさんだった。
彼は支部長、組合の規定側の人間だ。
ダンジョン内での裏切り行為は禁止されている。
この話は聞き逃せないだろう。
「逆だろうがよぉ。お前が一人で逃げ出したんだ。俺たちを置いて、せっせと一人だけ逃げたんだ。だから運よく助かったんだろ?」
「違う。君があの時、ガーディアンサーペントの前に俺を押し出したんじゃないか」
俺とカインツは言い合う。
どちらも譲らない。
嘘と真実をぶつけ合い、話は平行線だ。
「お二人とも落ち着いてください」
ヒートアップする俺とカインツに、ラクテルさんが割って入る。
「まずはお二人の話を、それぞれ私に聞かせていただけますか?」
「はい」
「いいぜ。どっちを信じるかは明白だからなぁ」
カインツは笑みを浮かべる。
ギルドとしての信用、これまでの貢献度。
ラクテルさんが重視する実績の面で見れば、俺よりもカインツたちを信じることになる。
それれでも、俺は嘘はついていない。
裏切られ、見殺しにされたのは俺のほうなのだから。
「事情は把握しました。どちらの主張も、今のところ完全には信用しかねます」
「は? なんでだよ! 俺たちが倒したんだ!」
「ではなぜ? 結晶を彼が持っているのですか? 一人逃げ出したのなら、倒した現場に彼はいなかったはずでは?」
「っ……後からこっそり戻ったんだ。俺たちは疲れてて、結晶を回収する余裕がなかった」
苦し紛れの主張だ。
ラクテルさんは冷静に、カインツの主張の矛盾をつく。
その次に俺へと視線を向ける。
「レオルス様の主張にも疑問はあります。あなたの情報はワイルドハントから伺っておりますが、確かに単独でボスを攻略するには能力が低い」
「そうだろ? こいつにボス攻略なんて不可能――」
「ですからこうしましょう」
ラクテルさんはカインツの声を遮り、俺に提案する。
「レオルス様には、これよりご自身の力を証明して頂きたいのです」
「証明? どうすればいいんですか?」
「簡単です。レオルス様の実力を私に見せてください。ボスの単独攻略は非常に少ない事例です。幸運だけでは決して成しえない奇跡……英雄の所業です」
英雄……俺が一番ほしい呼び名をラクテルさんは口にした。
「そうですね。では、カインツ様率いるパーティーと模擬戦を行って頂きましょう。そこでレオルス様の実力が主張に見合っているか否か、私の目で確かめさせていただきます。いかがでしょうか?」
ラクテルさんは俺とカインツを交互に見る。
提案を受け行けるか否か。
聞くまでもない。
俺も、カインツも、答えは決まっている。
「やります」
「いいぜ! 手っ取り早いじゃねーか!」
こうして、俺とカインツ率いるパーティーの模擬戦が決定した。
かつての仲間と刃を交えることになる。
躊躇するだろうか?
少なくともカインツ相手に、その心配はなさそうだ。
0
お気に入りに追加
361
あなたにおすすめの小説
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
生まれてすぐ捨てられた王子の僕ですが、水神様に拾われたので結果的に幸せです。
日之影ソラ
ファンタジー
【第二章随時開始予定】かつて世界を作ったのは神様だった。長い年月をかけて人類は進化し、神様の力がなくても生きて行けるようになった。その所為で神様への信仰を忘れ、現代では神様もほとんど残っていない。
そんな中、生まれてすぐに川に捨てられた王子のアクトは、運よく水の女神ウルネが住まう湖にたどり着いた。ウルネの元ですくすくと育ったアクトは、母親思いの真っすぐな男に成長していく。穏やかで幸せな日常が、いつまでも続いてほしいと思う日々。しかし、その平穏はいずれ終わる。
信仰を失った神様は、存在を保つことが出来なくなるからだ。
十五歳になったアクトは、自分を助けてくれた母親に恩を返すため魔術学園への入学を決意した。自身が強くなり、女神の存在を世界に再認識させるために。
これは神に育てられた子供が神を救い、世界を救う物語だ。
ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ
高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。
タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。
ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。
本編完結済み。
外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。
百花繚乱 〜国の姫から極秘任務を受けた俺のスキルの行くところ〜
幻月日
ファンタジー
ーー時は魔物時代。
魔王を頂点とする闇の群勢が世界中に蔓延る中、勇者という職業は人々にとって希望の光だった。
そんな勇者の一人であるシンは、逃れ行き着いた村で村人たちに魔物を差し向けた勇者だと勘違いされてしまい、滞在中の兵団によってシーラ王国へ送られてしまった。
「勇者、シン。あなたには魔王の城に眠る秘宝、それを盗み出して来て欲しいのです」
唐突にアリス王女に突きつけられたのは、自分のようなランクの勇者に与えられる任務ではなかった。レベル50台の魔物をようやく倒せる勇者にとって、レベル100台がいる魔王の城は未知の領域。
「ーー王女が頼む、その任務。俺が引き受ける」
シンの持つスキルが頼りだと言うアリス王女。快く引き受けたわけではなかったが、シンはアリス王女の頼みを引き受けることになり、魔王の城へ旅立つ。
これは魔物が世界に溢れる時代、シーラ王国の姫に頼まれたのをきっかけに魔王の城を目指す勇者の物語。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
勇者、追放される ~仲間がクズばかりだったので、魔王とお茶してのんびり過ごす。戻ってこいと言われても断固拒否。~
秋鷺 照
ファンタジー
強すぎて勇者になってしまったレッグは、パーティーを追放され、一人で魔王城へ行く。美味しいと噂の、魔族領の茶を飲むために!(ちゃんと人類も守る)
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる