上 下
13 / 40
第一章 転生したけど死にそう

弱点ってそういう意味?①

しおりを挟む
 冒険者のクエストは、大半がモンスター討伐だ。
 人探しや採取のクエストもあるけど、モンスター討伐クエストが圧倒的に多い。
 その理由はシンプル。
 モンスターを倒せばゴールドが手に入り、クエスト達成時にも追加で報酬がもらえる。
 要するにお得なわけだ。
 
「なんでわざわざクエストに出すんですか? どうせモンスターを倒せばゴールドが手に入るんだし、放っておいてもみんな討伐するでしょ」
「それだと討伐モンスターの種類に偏りが出てしまうんです。簡単に倒せるモンスターや、効率のいい相手ばかりが狩られて、そうでないモンスターは放置されてしまいます。だからギルドでクエストを発注し、報酬を出しているんですよ」

 モンスター討伐時に落ちるゴールドの量は、倒したモンスターのレベル、個体値、大きさ、生息地域など様々な状況から変化する。
 中にはめちゃくちゃ強いのに、ドロップする報酬がゴミのように少ないモンスターもいるとか。
 そういうモンスターほど、放置すると生態系に多大な被害を及ぼす。
 冒険者ギルドの存在は、討伐しても美味しくないモンスターに目を向けさせるために不可欠だった。
 
 という話を、受付嬢は表情を引きつりながらしてくれた。
 可能なら話したくないけど、仕事だから仕方なく受け答えをしている。
 そんな感じが表情から溢れ出ていて、とても辛い。
 いつまで誤解は続くのだろう。
 俺は大きくため息をこぼし、受付嬢に挨拶をして二人の元へ戻った。

「パーティーの登録は済ませてきたぞ」
「おかえり! 助かったよ。あーいう面倒な手続きとか苦手でさ」
「俺だって初体験なんだが……」

 無邪気に笑うカナタを見て、俺は小さくため息をこぼす。
 パーティーの結成は冒険者の証であるカード上で簡単に設定できる。
 ただしパーティー結成後、ギルドに報告する義務があるらしい。
 という話を、冒険者になる際に受付嬢が説明してくれた。
 もちろん、とても嫌そうな顔をして……。
 受付嬢が真面目な人で本当によかった。
 頼むからこれ以上誤解しないでほしいな。

「で、いいクエストはあったか?」
「わっかんない!」
「えぇ……」

 俺がパーティーの報告をしている間、二人にはクエストを選んでもらっていた。
 この世界にきて十日目、冒険者になったのはついさっきの俺より、二人に選んでもらったほうが確実だと思ったから。

「あたし冒険者になってからクエスト? 受けたことないんだよな」
「嘘だろ……どうやって活動してたんだ?」
「普通に旅して、見つけたモンスターを倒してた!」
「なるほど……」

 モンスターを倒せばお金は手に入る。
 彼女の目的は、剣術を極めることらしい。
 冒険者になったのは剣士の職につくためで、冒険者そのものに憧れや意味があったわけじゃない。
 理解はできるが、勿体なさすぎるだろ。

「じゃあサラス、お前が選べ」
「はい? 私に決められるわけないじゃないですか。モンスターの違いなんて知りません」
「……」
 
 こいつサポート役だよな?
 今のところ何の役にも立ってないんだが?

 俺はため息をこぼし、自分でクエストを選ぶことにした。
 いろいろごたついてすでに昼過ぎだ。
 大半の冒険者はクエストに出発している。
 クエストボードに貼られているのは、本日の残り物ばかりだろう。
 高額なクエストや、お得なクエストはすでに残っていないと考えるべきだ。

「ギガントマンティスの討伐……デスサーペント討伐……ダークドレイクの討伐……」

 ダメそうだ。
 仲間から強敵なことがわかるモンスター討伐しか残っていない。
 もっと楽な、初心者向けのクエストはないのか?

「あとは採取系か。薬草、毒消し草……報酬は低いけどもうこれでいいか」

 どうせ俺とサラスはレベル1で戦力外だ。
 採取クエストなら、俺たちでも役に立てるだろう。
 本格的に討伐クエストを受けるよりまず、俺たちのレベル上げが必要だ。
 俺はクエストボードから二枚の紙を剥がす。

「採取クエストをこなしながら、襲ってきたモンスターと戦う感じでいこう」
「わかりました!」
「よくわかんねーけど戦闘なら任せろよな!」

 カナタはともかく、なぜか自信満々なサラスに一抹の不安を感じながら、俺たちはクエストを受注して近隣の森へと入ることになった。
 俺たちが迷っていたあの森とは別だ。
 後で聞いた話だが、俺たちが迷い込んだのは迷いの森と呼ばれていて、この辺りでは強めのモンスターが生息する危険地帯らしい。
 モンスターの平均レベルは30前後で、縄張りを統治するエリアボスはもっと高いそうだ。

「改めてよく生き残れたな……カナタのおかげだ」
「ん? なんだ?」
「そういえば、カナタっていくつなんだ?」
「今年で十六歳だぞ!」

 小柄な体格だから俺より年下だろうとは思っていたけど、まさか六つも下だったとは。
 元の世界でいうと高校に入ったばかりの頃か?
 それにしては発育がいいというか……って、何考えてるんだ俺!
 カナタにまで性獣だと思われるぞ!

「って、そうじゃなくてレベルだよ」
「ああ! えーっと、冒険者カードに書いてあるぞ!」
「それは知ってる」

 カナタは自分の冒険者カードを俺に手渡してきた。
 この感じ、自分では確認していないのか。
 ゲームなら、レベル上げって結構楽しくて気にするポイントなんだけどな。
 手渡されたカードに目を向ける。

「レベル35。これって高いのか?」
「さぁ?」

 自分のレベルに興味なさすぎだろ……。
 仕方ない。
 ダメだと思いつつ、役立たずのクソ天使に聞いてみることにする。

「どうなんだ?」
「私に聞かれてもわかりません」
「だろうな」
「なんですかその態度は!」

 怒っているサラスを無視して、俺は冒険者カードに視線を戻す。
 肉体レベルのマックスは100だと聞いた。
 迷いの森のモンスター平均から考えて、この辺りで活動する冒険者の中では高いほうなのだろう。
 カードにはステータスやスキル、加護も記載されている。
 ジョブは剣士、上げているスキルも剣術系が多い。
 というかそれ以外は上げていない。
 ステータスは予想通り、素早さが飛び抜けて高いな。
 あとは筋力が少し高めだ。
 それ以外は平均的かそれ以下で、体力と知能は他と比べて低い。
 知能に関しては、レベル1の俺以下だぞ。
 なんというか……。

「カナタらしいステータスだな」
「そうか? なんか照れるな」

 笑いながら頭を触るカナタ。
 別に褒めたわけじゃないんだが……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する

平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。 しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。 だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。 そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。

Fragment-memory of future-Ⅱ

黒乃
ファンタジー
小説内容の無断転載・無断使用・自作発言厳禁 Repost is prohibited. 무단 전하 금지 禁止擅自转载 W主人公で繰り広げられる冒険譚のような、一昔前のRPGを彷彿させるようなストーリーになります。 バトル要素あり。BL要素あります。苦手な方はご注意を。 今作は前作『Fragment-memory of future-』の二部作目になります。 カクヨム・ノベルアップ+でも投稿しています Copyright 2019 黒乃 ****** 主人公のレイが女神の巫女として覚醒してから2年の月日が経った。 主人公のエイリークが仲間を取り戻してから2年の月日が経った。 平和かと思われていた世界。 しかし裏では確実に不穏な影が蠢いていた。 彼らに訪れる新たな脅威とは──? ──それは過去から未来へ紡ぐ物語

生まれてすぐ捨てられた王子の僕ですが、水神様に拾われたので結果的に幸せです。

日之影ソラ
ファンタジー
【第二章随時開始予定】かつて世界を作ったのは神様だった。長い年月をかけて人類は進化し、神様の力がなくても生きて行けるようになった。その所為で神様への信仰を忘れ、現代では神様もほとんど残っていない。 そんな中、生まれてすぐに川に捨てられた王子のアクトは、運よく水の女神ウルネが住まう湖にたどり着いた。ウルネの元ですくすくと育ったアクトは、母親思いの真っすぐな男に成長していく。穏やかで幸せな日常が、いつまでも続いてほしいと思う日々。しかし、その平穏はいずれ終わる。 信仰を失った神様は、存在を保つことが出来なくなるからだ。 十五歳になったアクトは、自分を助けてくれた母親に恩を返すため魔術学園への入学を決意した。自身が強くなり、女神の存在を世界に再認識させるために。 これは神に育てられた子供が神を救い、世界を救う物語だ。

百花繚乱 〜国の姫から極秘任務を受けた俺のスキルの行くところ〜

幻月日
ファンタジー
ーー時は魔物時代。 魔王を頂点とする闇の群勢が世界中に蔓延る中、勇者という職業は人々にとって希望の光だった。 そんな勇者の一人であるシンは、逃れ行き着いた村で村人たちに魔物を差し向けた勇者だと勘違いされてしまい、滞在中の兵団によってシーラ王国へ送られてしまった。 「勇者、シン。あなたには魔王の城に眠る秘宝、それを盗み出して来て欲しいのです」 唐突にアリス王女に突きつけられたのは、自分のようなランクの勇者に与えられる任務ではなかった。レベル50台の魔物をようやく倒せる勇者にとって、レベル100台がいる魔王の城は未知の領域。 「ーー王女が頼む、その任務。俺が引き受ける」 シンの持つスキルが頼りだと言うアリス王女。快く引き受けたわけではなかったが、シンはアリス王女の頼みを引き受けることになり、魔王の城へ旅立つ。 これは魔物が世界に溢れる時代、シーラ王国の姫に頼まれたのをきっかけに魔王の城を目指す勇者の物語。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

女神の加護 ~強すぎる女神の加護で大変でした~

アキナヌカ
恋愛
僕はウィル・トゥーデ・ファウケース、第一王子で王太子だった。でも僕の周囲の世界はおかしかった、僕が愛の女神アモルの加護を貰って生まれたことでおかしくなったのだ。僕は何をしても許された、僕が何をしても褒められた。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...