2 / 46
【追放】三姉妹聖女
2
しおりを挟む
聖女に選ばれる人間には条件がある。
一つ、正しき心を持つ者であること。
二つ、清らかな身体であること。
三つ、穢れなき魂を持つ者であること。
そして四つ、神に愛される容姿であること。
即ち、金髪に蒼眼の乙女であることだ。
この条件に当てはまり、尚且つ神の気まぐれによって聖女は誕生する。
つまり、聖女が一人であるとは限らない。
最初に聖女が誕生して数百年が経過した現代にて、これも一つの奇跡と言えるだろう。
此度の聖女は三人。
長女である私アイラと、次女カリナ、三女サーシャ。
王国の人々は私たちを、聖女三姉妹と呼ぶ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
自室に戻った私を出迎えてくれたのは、二人の妹たちだった。
「おっつかれさま! アイラお姉ちゃんはいつも通り時間ぴったりだね!」
「当然よ。聖女たるもの、時間の管理くらい出来なきゃね」
「そうなの? じゃあボクは聖女じゃないのかな?」
なんて冗談を言っている三女のサーシャ。
年は私の二つ下の十五歳で、一番小柄で髪も短い。
「サーシャは何をしていたの?」
「ボクは騎士のおじさんたちに混ざって訓練してたよ!」
「またそんなことしていたのね……」
「だって楽しいんだもん。僕には身体を動かすほうが合ってるしね」
サーシャは三姉妹の中で一番のお転婆だ。
運動神経も高くて、聖女として祈りを捧げているより、身体を動かす方が好きだという。
一般的な聖女のイメージであるお淑やかさは欠けているけど、彼女も立派な聖女の一人。
明るく人懐っこい性格は、国民だけでなく王城の使用人たちからも好評だったりする。
「カリナは?」
「わたしは……本を読んでた」
「でしょうね。その手に持っている本も書斎から借りてきたものでしょ?」
「そう。薬学の本」
「また難しそうな本ね……そういう本って読んでいて面白いの?」
「面白い、と思う」
次女のカリナはサーシャとは全く違うタイプ。
元々引っ込み思案で、人と関わるのも好きではなかった。
聖女に選ばれる以前から、暇があれば本を読んでいることが多い。
「明日はカリナの担当よ? 聖女としてしっかり務めを果たすのよ」
「わ、わかってる……」
「声が小さいわね。そんなんじゃ聖堂に来た人も心配するわよ?」
「うぅ……大きな声を出すのは苦手なのに」
「あっははははは! カリナお姉ちゃんもボクと一緒に、お腹から声を出す練習しようよ!」
「え、えぇ……」
「サーシャはちょっと声が大き過ぎよ」
普段はこんな感じで頼りなさげなカリナだけど、何だかんだで聖女として頑張ってくれている。
祈りの力はもちろん、本から得た知識も豊富にあって、街の人たちの相談によくのったりもしているみたい。
そのお陰もあって、街の人からの信頼は厚い。
オドオドした様子も、無垢な感じがして好かれているという噂も聞いたことがある。
「やっぱりアイラお姉ちゃんが一番聖女っぽいよね~」
「それは当然でしょ。そう見えるように注意しているんだもの」
「もうアイラ一人でいいのに……」
「ダメよ。私たちは三人で聖女でしょ」
妹たち二人もそうだけど、私も彼女たちとは違う。
自分で言うのも恥ずかしいけど、長女だから二人よりもしっかりしているつもり。
性格はもちろん、好きなことや嫌いなこともバラバラだ。
そんな私たちの共通点は、聖女であることと容姿。
三人とも、濃さや長さに違いはあれ、金色の髪と青い瞳をもっている。
そしてもう一つの共通点は、三人とも孤児だということ。
私が二歳、カリナが一歳、サーシャが生後間もない頃。
魔法の力で眠らされて、三人で同じゆりかごに入れられたまま、街の小さな教会に捨てられていた。
ご丁寧にそれぞれの名前と、養育費も添えてあったそうだ。
そこに私たちが三人姉妹だということも書かれていて、五年前までは捨てられていた教会でお世話になっていた。
私たちは自分の両親を知らない。
それどころか、この国の人間だったかも定かではないほど。
月日が流れ、聖女になってからは、この屋敷で三人とも暮らしている。
一日交替で大聖堂に赴き、聖女として振舞って役目を果たしながら、それなりに充実した毎日を送っている。
戸惑いのほうが多かった日々も、少しは慣れてきた頃合いだろう。
「明日は何して遊ぼうかな~」
「人前は嫌だなぁ」
「はぁ……この子たちは本当にもう」
二人とも小さい頃から変わらない。
私たちが聖女なんて、最初は何かの間違いだと思った。
だけど、選ばれてしまったからには逃げられない。
足りない部分の多い私たちだけど、三人もいれば補い合える。
カリナとサーシャの分まで、私が聖女らしく振舞えば良い。
その代わり二人には、私にも出来ない方法で、聖女として頑張ってもらうから。
そうやって助け合って生きていく。
この先もずっと、聖女として、姉妹として。
一つ、正しき心を持つ者であること。
二つ、清らかな身体であること。
三つ、穢れなき魂を持つ者であること。
そして四つ、神に愛される容姿であること。
即ち、金髪に蒼眼の乙女であることだ。
この条件に当てはまり、尚且つ神の気まぐれによって聖女は誕生する。
つまり、聖女が一人であるとは限らない。
最初に聖女が誕生して数百年が経過した現代にて、これも一つの奇跡と言えるだろう。
此度の聖女は三人。
長女である私アイラと、次女カリナ、三女サーシャ。
王国の人々は私たちを、聖女三姉妹と呼ぶ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
自室に戻った私を出迎えてくれたのは、二人の妹たちだった。
「おっつかれさま! アイラお姉ちゃんはいつも通り時間ぴったりだね!」
「当然よ。聖女たるもの、時間の管理くらい出来なきゃね」
「そうなの? じゃあボクは聖女じゃないのかな?」
なんて冗談を言っている三女のサーシャ。
年は私の二つ下の十五歳で、一番小柄で髪も短い。
「サーシャは何をしていたの?」
「ボクは騎士のおじさんたちに混ざって訓練してたよ!」
「またそんなことしていたのね……」
「だって楽しいんだもん。僕には身体を動かすほうが合ってるしね」
サーシャは三姉妹の中で一番のお転婆だ。
運動神経も高くて、聖女として祈りを捧げているより、身体を動かす方が好きだという。
一般的な聖女のイメージであるお淑やかさは欠けているけど、彼女も立派な聖女の一人。
明るく人懐っこい性格は、国民だけでなく王城の使用人たちからも好評だったりする。
「カリナは?」
「わたしは……本を読んでた」
「でしょうね。その手に持っている本も書斎から借りてきたものでしょ?」
「そう。薬学の本」
「また難しそうな本ね……そういう本って読んでいて面白いの?」
「面白い、と思う」
次女のカリナはサーシャとは全く違うタイプ。
元々引っ込み思案で、人と関わるのも好きではなかった。
聖女に選ばれる以前から、暇があれば本を読んでいることが多い。
「明日はカリナの担当よ? 聖女としてしっかり務めを果たすのよ」
「わ、わかってる……」
「声が小さいわね。そんなんじゃ聖堂に来た人も心配するわよ?」
「うぅ……大きな声を出すのは苦手なのに」
「あっははははは! カリナお姉ちゃんもボクと一緒に、お腹から声を出す練習しようよ!」
「え、えぇ……」
「サーシャはちょっと声が大き過ぎよ」
普段はこんな感じで頼りなさげなカリナだけど、何だかんだで聖女として頑張ってくれている。
祈りの力はもちろん、本から得た知識も豊富にあって、街の人たちの相談によくのったりもしているみたい。
そのお陰もあって、街の人からの信頼は厚い。
オドオドした様子も、無垢な感じがして好かれているという噂も聞いたことがある。
「やっぱりアイラお姉ちゃんが一番聖女っぽいよね~」
「それは当然でしょ。そう見えるように注意しているんだもの」
「もうアイラ一人でいいのに……」
「ダメよ。私たちは三人で聖女でしょ」
妹たち二人もそうだけど、私も彼女たちとは違う。
自分で言うのも恥ずかしいけど、長女だから二人よりもしっかりしているつもり。
性格はもちろん、好きなことや嫌いなこともバラバラだ。
そんな私たちの共通点は、聖女であることと容姿。
三人とも、濃さや長さに違いはあれ、金色の髪と青い瞳をもっている。
そしてもう一つの共通点は、三人とも孤児だということ。
私が二歳、カリナが一歳、サーシャが生後間もない頃。
魔法の力で眠らされて、三人で同じゆりかごに入れられたまま、街の小さな教会に捨てられていた。
ご丁寧にそれぞれの名前と、養育費も添えてあったそうだ。
そこに私たちが三人姉妹だということも書かれていて、五年前までは捨てられていた教会でお世話になっていた。
私たちは自分の両親を知らない。
それどころか、この国の人間だったかも定かではないほど。
月日が流れ、聖女になってからは、この屋敷で三人とも暮らしている。
一日交替で大聖堂に赴き、聖女として振舞って役目を果たしながら、それなりに充実した毎日を送っている。
戸惑いのほうが多かった日々も、少しは慣れてきた頃合いだろう。
「明日は何して遊ぼうかな~」
「人前は嫌だなぁ」
「はぁ……この子たちは本当にもう」
二人とも小さい頃から変わらない。
私たちが聖女なんて、最初は何かの間違いだと思った。
だけど、選ばれてしまったからには逃げられない。
足りない部分の多い私たちだけど、三人もいれば補い合える。
カリナとサーシャの分まで、私が聖女らしく振舞えば良い。
その代わり二人には、私にも出来ない方法で、聖女として頑張ってもらうから。
そうやって助け合って生きていく。
この先もずっと、聖女として、姉妹として。
2
お気に入りに追加
768
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
冷遇された王女は隣国で力を発揮する
高瀬ゆみ
恋愛
セシリアは王女でありながら離宮に隔離されている。
父以外の家族にはいないものとして扱われ、唯一顔を見せる妹には好き放題言われて馬鹿にされている。
そんな中、公爵家の子息から求婚され、幸せになれると思ったのも束の間――それを知った妹に相手を奪われてしまう。
今までの鬱憤が爆発したセシリアは、自国での幸せを諦めて、凶帝と恐れられる隣国の皇帝に嫁ぐことを決意する。
自分に正直に生きることを決めたセシリアは、思いがけず隣国で才能が開花する。
一方、セシリアがいなくなった国では様々な異変が起こり始めて……
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。
三葉 空
恋愛
ユリナはバラノン伯爵家の長女であり、公爵子息のブリックス・オメルダと婚約していた。しかし、ブリックスは身勝手な理由で彼女に婚約破棄を言い渡す。さらに、元から妹ばかり可愛がっていた両親にも愛想を尽かされ、家から追放されてしまう。ユリナは全てを失いショックを受けるが、直後に聖女としての力に目覚める。そして、神殿の神職たちだけでなく、王家からも丁重に扱われる。さらに、お祈りをするだけでたんまりと給料をもらえるチート職業、それが聖女。さらに、イケメン王子のレオルドに見初められて求愛を受ける。どん底から一転、一気に幸せを掴み取った。その事実を知った元婚約者と元家族は……
私はモブのはず
シュミー
恋愛
私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。
けど
モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。
モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。
私はモブじゃなかったっけ?
R-15は保険です。
ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。
注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる