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20.ドラゴンの目覚め
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「――【鉄剣乱舞】」
背後に生成された無数の剣。
一本一本が鋼鉄を貫く威力を有している。
対しるイザベラも同じ魔法を展開。
同質同量の剣を背後に生成し、待機させた。
「私の真似っこかな? いいよじゃあ、どっちが上手くできたか勝負しよう!」
生成した剣を一斉に発射する。
それとほぼ同時にイザベラも剣を放つ。
互いの剣同士がぶつかり合い、鉄が衝突する高い音が響く。
「へぇ、なるほどね。全部撃ち落とされた」
「先生と互角の魔法……さすが国を築いた魔女ですね」
アレクの言う通りだけど、なんとなく違和感を感じる。
凄まじい魔力とよどみない魔力操作は凄いし、それを再現しているドラゴンの力にも感服する。
でも……
「また弾幕勝負だよ! 【元素砲撃】!」
今度は背後に無数の魔法陣を展開。
発動した魔法陣から発射されるのは、魔力をそのまま高濃度に圧縮したエネルギー。
破壊力はさっきの剣にも勝る。
それを惜しむなく、魔力が続く限り放ち続ける。
魔女イザベラも同様に魔法を展開して相殺し始める。
「さっきと同じ……」
剣を撃ち落とした時のように、同威力の魔法で相殺されている。
同じ魔女なら魔力量で劣ることは考えにくい。
差が生まれるとすれば熟練度。
魔法の発動にかかる時間やタイミング、複数の制御や微細な調整なら、長い時間を過ごした者に軍配が上がるだろう。
その点で私が彼女に勝っているとは思えない。
だからこその全力、最初から本気で挑んでいるのだけど……
「確かめてみようかな」
砲撃を撃ち合う最中、唐突に転移魔法を発動。
彼女の背後を取る。
しかしこれも彼女は躱す。
同じく転移魔法を発動させ、私と位置が入れ替わる。
発動者の位置が変わっても砲撃の雨は継続していた。
お互いに手を緩めない。
「これにも対応するんだ。少し遅れたけど……じゃあこれはどうかな?」
私は天へ手をかざす。
狙いは彼女が発動している魔法陣。
「【権限簒奪】」
発動中の相手の魔法陣を奪い、自身の制御下に置く。
彼女が使っていた魔法をはこれで私が自由に使える。
単純に砲撃の雨が二倍になれば、いくら彼女でも対応できないだろう。
もっとも、私の予想が正しければこれにも対応してくるはず。
彼女は私の魔法の制御を奪う。
位置関係が変わっただけで、砲撃戦は再開された。
「やっぱり……そういうこと」
今までの攻防を分析する。
初撃を除き、彼女は私の魔法を再現しているだけだ。
動きも単調で、突発的な行動には対応できるけど、そこからの反撃はない。
わかった。
彼女はやっぱり、本物の魔女イザベラとは別人だ。
いかにドラゴンの力でも、他人の戦闘を完全に再現することはできないんだ。
姿形、魔力量は似せられても、魔法戦までは再現できないから、相対する私の動きで保管している。
だからできるのは、私が見せた魔法を打ち返すことだけ。
「それなら」
私は全ての魔法陣を解除し、攻撃を止める。
すると彼女も同じように攻撃を止めてしまった。
「彼女に挑戦なんて言ってたけど、本当は違うね。挑戦すべきは彼女じゃなくて、私自身なんだ」
まさに鏡写しの存在と戦っている。
彼女は私の力を再現しているだけだ。
違いがあるとすれば、本人か真似ているだけかという点。
ならば攻略法は――
再現できない威力と速度の魔法を放てば良い。
「すぅー……はぁー……」
集中するんだ。
彼女を越える威力を発揮するには、私が持てる全ての魔力を注ぎ込むしかない。
さらには、彼女が魔法を発動するよりも早く打ち込めれば。
「破壊力なら爆発系……速度なら光……一番速くて強い魔法……」
どれを使う?
どう使う?
思考を回らせ導き出す。
「決めた」
初撃に使った爆裂の魔法――【連鎖爆殺】。
光を収束させて放つ魔法――【光仰追閃】。
空気を高振動させる魔法――【震天動空】。
彼女も同様に三種の魔法陣を展開した。
ここまではすんなりいく。
難しいのはこの先、複合して放つこと。
事前に理解した上で複合するのと、見てから合わせるのに必ず大きな差が生まれる。
相手が彼女なら一瞬だろうけど、この魔法ならその一瞬を――
「複合魔法――【閃光一星】」
貫ける!
相手が同様の複合を開始した直後、発動するより先に私が放った光の線が彼女の胸を貫通した。
重なった魔法陣も一緒に貫いたことで消滅する。
そのまま光は拡散し、彼女の身体は霧のように消えていく。
「さすがですね先生。お見事でした」
「うん」
「――見事じゃ」
少女の声と共に、最後の扉が現れる。
「試練を全て乗り越えた者よ。この先に眠るワシに触れるのじゃ。さすればワシは目覚める。待っておるのじゃ」
「だそうですよ?」
「行こう。ドラゴンの許可も貰えたんだから」
「はい」
五つの試練を突破して、ドラゴンの声に従い先へ進む。
最後の扉は錆びついていて、妙に年季を感じさせる。
ギギギと音を立てた先で待っていたのは、暗く静かな自然の空洞だった。
そこに、彼女は眠っていた。
赤い鱗のドラゴンが、地に伏し瞳を閉じて。
私たちはゆっくり近寄り、言われた通りにする。
「目覚めてください赤きドラゴン。私たちには貴女の力が必要なんです」
語りかけ、眠っている頭に触れた。
すると、彼女の身体はパキパキと砕ける音がして、表面がひび割れていく。
長い年月を眠り、鱗の表面は石化していたらしい。
その石化部分が剥がれていく。
のっしりと動きながら、閉じていた瞳を開ける。
ドラゴンの身体がまばゆい光を放ちだす。
「ついにドラゴンが復活……え?」
予想していた姿と違う。
起き上がったドラゴンは光の中で、なぜか少女の姿に変化していた。
十二歳くらいの女の子が腰に手を当て、ニカリと笑っている。
「うむ! ワシ復活じゃ! さぁ人間よ! 共にこの世界をぶち壊しにゆくのじゃ!」
「……え」
えええええええええええええええええ!?
私たちはもしかして、とんでもない物を呼び起こしてしまったのだろうか。
波乱の予感が全身を駆け抜ける。
ドラゴンの復活と共に、新たな時代の幕を開けようとしていた。
背後に生成された無数の剣。
一本一本が鋼鉄を貫く威力を有している。
対しるイザベラも同じ魔法を展開。
同質同量の剣を背後に生成し、待機させた。
「私の真似っこかな? いいよじゃあ、どっちが上手くできたか勝負しよう!」
生成した剣を一斉に発射する。
それとほぼ同時にイザベラも剣を放つ。
互いの剣同士がぶつかり合い、鉄が衝突する高い音が響く。
「へぇ、なるほどね。全部撃ち落とされた」
「先生と互角の魔法……さすが国を築いた魔女ですね」
アレクの言う通りだけど、なんとなく違和感を感じる。
凄まじい魔力とよどみない魔力操作は凄いし、それを再現しているドラゴンの力にも感服する。
でも……
「また弾幕勝負だよ! 【元素砲撃】!」
今度は背後に無数の魔法陣を展開。
発動した魔法陣から発射されるのは、魔力をそのまま高濃度に圧縮したエネルギー。
破壊力はさっきの剣にも勝る。
それを惜しむなく、魔力が続く限り放ち続ける。
魔女イザベラも同様に魔法を展開して相殺し始める。
「さっきと同じ……」
剣を撃ち落とした時のように、同威力の魔法で相殺されている。
同じ魔女なら魔力量で劣ることは考えにくい。
差が生まれるとすれば熟練度。
魔法の発動にかかる時間やタイミング、複数の制御や微細な調整なら、長い時間を過ごした者に軍配が上がるだろう。
その点で私が彼女に勝っているとは思えない。
だからこその全力、最初から本気で挑んでいるのだけど……
「確かめてみようかな」
砲撃を撃ち合う最中、唐突に転移魔法を発動。
彼女の背後を取る。
しかしこれも彼女は躱す。
同じく転移魔法を発動させ、私と位置が入れ替わる。
発動者の位置が変わっても砲撃の雨は継続していた。
お互いに手を緩めない。
「これにも対応するんだ。少し遅れたけど……じゃあこれはどうかな?」
私は天へ手をかざす。
狙いは彼女が発動している魔法陣。
「【権限簒奪】」
発動中の相手の魔法陣を奪い、自身の制御下に置く。
彼女が使っていた魔法をはこれで私が自由に使える。
単純に砲撃の雨が二倍になれば、いくら彼女でも対応できないだろう。
もっとも、私の予想が正しければこれにも対応してくるはず。
彼女は私の魔法の制御を奪う。
位置関係が変わっただけで、砲撃戦は再開された。
「やっぱり……そういうこと」
今までの攻防を分析する。
初撃を除き、彼女は私の魔法を再現しているだけだ。
動きも単調で、突発的な行動には対応できるけど、そこからの反撃はない。
わかった。
彼女はやっぱり、本物の魔女イザベラとは別人だ。
いかにドラゴンの力でも、他人の戦闘を完全に再現することはできないんだ。
姿形、魔力量は似せられても、魔法戦までは再現できないから、相対する私の動きで保管している。
だからできるのは、私が見せた魔法を打ち返すことだけ。
「それなら」
私は全ての魔法陣を解除し、攻撃を止める。
すると彼女も同じように攻撃を止めてしまった。
「彼女に挑戦なんて言ってたけど、本当は違うね。挑戦すべきは彼女じゃなくて、私自身なんだ」
まさに鏡写しの存在と戦っている。
彼女は私の力を再現しているだけだ。
違いがあるとすれば、本人か真似ているだけかという点。
ならば攻略法は――
再現できない威力と速度の魔法を放てば良い。
「すぅー……はぁー……」
集中するんだ。
彼女を越える威力を発揮するには、私が持てる全ての魔力を注ぎ込むしかない。
さらには、彼女が魔法を発動するよりも早く打ち込めれば。
「破壊力なら爆発系……速度なら光……一番速くて強い魔法……」
どれを使う?
どう使う?
思考を回らせ導き出す。
「決めた」
初撃に使った爆裂の魔法――【連鎖爆殺】。
光を収束させて放つ魔法――【光仰追閃】。
空気を高振動させる魔法――【震天動空】。
彼女も同様に三種の魔法陣を展開した。
ここまではすんなりいく。
難しいのはこの先、複合して放つこと。
事前に理解した上で複合するのと、見てから合わせるのに必ず大きな差が生まれる。
相手が彼女なら一瞬だろうけど、この魔法ならその一瞬を――
「複合魔法――【閃光一星】」
貫ける!
相手が同様の複合を開始した直後、発動するより先に私が放った光の線が彼女の胸を貫通した。
重なった魔法陣も一緒に貫いたことで消滅する。
そのまま光は拡散し、彼女の身体は霧のように消えていく。
「さすがですね先生。お見事でした」
「うん」
「――見事じゃ」
少女の声と共に、最後の扉が現れる。
「試練を全て乗り越えた者よ。この先に眠るワシに触れるのじゃ。さすればワシは目覚める。待っておるのじゃ」
「だそうですよ?」
「行こう。ドラゴンの許可も貰えたんだから」
「はい」
五つの試練を突破して、ドラゴンの声に従い先へ進む。
最後の扉は錆びついていて、妙に年季を感じさせる。
ギギギと音を立てた先で待っていたのは、暗く静かな自然の空洞だった。
そこに、彼女は眠っていた。
赤い鱗のドラゴンが、地に伏し瞳を閉じて。
私たちはゆっくり近寄り、言われた通りにする。
「目覚めてください赤きドラゴン。私たちには貴女の力が必要なんです」
語りかけ、眠っている頭に触れた。
すると、彼女の身体はパキパキと砕ける音がして、表面がひび割れていく。
長い年月を眠り、鱗の表面は石化していたらしい。
その石化部分が剥がれていく。
のっしりと動きながら、閉じていた瞳を開ける。
ドラゴンの身体がまばゆい光を放ちだす。
「ついにドラゴンが復活……え?」
予想していた姿と違う。
起き上がったドラゴンは光の中で、なぜか少女の姿に変化していた。
十二歳くらいの女の子が腰に手を当て、ニカリと笑っている。
「うむ! ワシ復活じゃ! さぁ人間よ! 共にこの世界をぶち壊しにゆくのじゃ!」
「……え」
えええええええええええええええええ!?
私たちはもしかして、とんでもない物を呼び起こしてしまったのだろうか。
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