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殿下たちと一緒に外に出る。
今日はとてもいい天気だ。
雲一つない青空で、冬が近づいているけど温かい。
少し暑いくらいだ。
「……いい空気だ」
「そうですね、父上」
「今は秋か?」
「はい。もうすぐ冬がきます。今日は比較的暖かいですが、昨日はそれなりに寒かったです」
「そうか……私が倒れてから、どれくらいの月日が経ったのだ?」
「……? 本格的に部屋から出られなくなったのは、三年ほど前からです」
「……そうか。もうそんなに経つのか」
二人の会話を、少し離れたところから聞いている。
国王陛下はまるで、自身が体調を崩されている間のことを、覚えていない様子だった。
「父上?」
「いや、すまない。覚えていないわけではない。ただ……ずっと夢を見ていた。まだ……彼女が生きていた頃の夢を」
「――! 父上……」
「すまないな。お前が私の代わりに、この国のために汗を流していたというのに……情けない」
「そんなことをおっしゃらないでください! 父上は必死に、病と闘っていたんです。医者も言っていました。これだけ病に侵されながら命を繋いでいるのは、父上の心の強さだと! 父上は今も、立派な国王です」
殿下は力強く言い放ち、陛下の痩せた手を握る。
様々な想いが殿下の表情から溢れ出ていた。
「ありがとう……アクト。そして、立派になったな」
「父上……」
「今のお前ならば、託せるだろう」
「え?」
国王陛下は殿下の手を握り返し、優しく微笑みながら告げる。
「アクト、今日から……お前が国王だ」
「――!」
殿下と同時に、私たちも目を丸くして驚いた。
突然告げられた王位の継承。
驚かないはずがない。
私たちもだが、やはり一番驚いているのは殿下で、耳を疑っていた。
「父上? なぜ今、そんなことを言うんですか? せっかく身体もよくなったのに」
「今だからこそ、だよ。確かに病は完治したようだ。身体から、悪いものが全て消えてしまったような気さえする」
「だったらいいじゃないですか! 国民の皆も、元気な父上が見らえることを楽しみにしています」
「そうだと嬉しいな」
「間違いありません! 皆にとって、父上こそがこの国の国王なのですから」
殿下は声を張り上げていた。
病が治ったのだから、これからリハビリして落ちた体力を戻せばいい。
そうして国王として復帰すれば、皆も喜ぶ。
殿下はそう考えているのだろう。
あるいは、ジンさんやシオンさんも同じ考えかもしれない。
ただし、国王陛下は違う。
陛下は私に視線を向けた。
「聖女様、あなたならわかっているはずですね?」
「――! イリアス?」
殿下も私のほうへ振り向く。
皆に注目される中、私は心苦しさを押し殺して、説明する。
「……殿下、確かに病は完治しました。ですが治ったのは病だけです」
「それは、どういう……」
「病によって蝕まれた時間……寿命は戻りません」
「――!」
奇跡にも限度がある。
例えば、死んだ人間はどれだけ本気で願おうと、蘇ることはない。
命には終わりがあり、人に与えられた時間には限りがある。
それは自然の摂理であり、この世界の法則だ。
聖女の奇跡も、この世界の法則に則っている。
故に、失われた時間は戻らない。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
小説家になろうにて先行公開中です。
いち早く続きが見たいという方は、なろう版をご利用ください!
あらすじのURLをコピー、またPC版の方はページ下部にリンクがございます。
今日はとてもいい天気だ。
雲一つない青空で、冬が近づいているけど温かい。
少し暑いくらいだ。
「……いい空気だ」
「そうですね、父上」
「今は秋か?」
「はい。もうすぐ冬がきます。今日は比較的暖かいですが、昨日はそれなりに寒かったです」
「そうか……私が倒れてから、どれくらいの月日が経ったのだ?」
「……? 本格的に部屋から出られなくなったのは、三年ほど前からです」
「……そうか。もうそんなに経つのか」
二人の会話を、少し離れたところから聞いている。
国王陛下はまるで、自身が体調を崩されている間のことを、覚えていない様子だった。
「父上?」
「いや、すまない。覚えていないわけではない。ただ……ずっと夢を見ていた。まだ……彼女が生きていた頃の夢を」
「――! 父上……」
「すまないな。お前が私の代わりに、この国のために汗を流していたというのに……情けない」
「そんなことをおっしゃらないでください! 父上は必死に、病と闘っていたんです。医者も言っていました。これだけ病に侵されながら命を繋いでいるのは、父上の心の強さだと! 父上は今も、立派な国王です」
殿下は力強く言い放ち、陛下の痩せた手を握る。
様々な想いが殿下の表情から溢れ出ていた。
「ありがとう……アクト。そして、立派になったな」
「父上……」
「今のお前ならば、託せるだろう」
「え?」
国王陛下は殿下の手を握り返し、優しく微笑みながら告げる。
「アクト、今日から……お前が国王だ」
「――!」
殿下と同時に、私たちも目を丸くして驚いた。
突然告げられた王位の継承。
驚かないはずがない。
私たちもだが、やはり一番驚いているのは殿下で、耳を疑っていた。
「父上? なぜ今、そんなことを言うんですか? せっかく身体もよくなったのに」
「今だからこそ、だよ。確かに病は完治したようだ。身体から、悪いものが全て消えてしまったような気さえする」
「だったらいいじゃないですか! 国民の皆も、元気な父上が見らえることを楽しみにしています」
「そうだと嬉しいな」
「間違いありません! 皆にとって、父上こそがこの国の国王なのですから」
殿下は声を張り上げていた。
病が治ったのだから、これからリハビリして落ちた体力を戻せばいい。
そうして国王として復帰すれば、皆も喜ぶ。
殿下はそう考えているのだろう。
あるいは、ジンさんやシオンさんも同じ考えかもしれない。
ただし、国王陛下は違う。
陛下は私に視線を向けた。
「聖女様、あなたならわかっているはずですね?」
「――! イリアス?」
殿下も私のほうへ振り向く。
皆に注目される中、私は心苦しさを押し殺して、説明する。
「……殿下、確かに病は完治しました。ですが治ったのは病だけです」
「それは、どういう……」
「病によって蝕まれた時間……寿命は戻りません」
「――!」
奇跡にも限度がある。
例えば、死んだ人間はどれだけ本気で願おうと、蘇ることはない。
命には終わりがあり、人に与えられた時間には限りがある。
それは自然の摂理であり、この世界の法則だ。
聖女の奇跡も、この世界の法則に則っている。
故に、失われた時間は戻らない。
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