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 スローレン王国は、上下左右を大国に囲まれた小国。
 五十年ほど前までは、他の大国家に並ぶ大国だったが、戦争に敗北してしまったことで国土の大半を奪われ、現在は王都周辺の土地だけが残された。
 人口はスパーク王国の王都の半数以下。
 資源は乏しく、人々は厳しい生活を余儀なくされている。
 あと十年もすれば、地図から国の名前がなくなるかもしれない。
 そんな悲しいことを言われている国だった。

「事実、かなり厳しい状況だ。人口は年々減っているし、国の財政も悪化している。このままじゃ、国を今の形に維持することすらままならない」
「そこまで……」

 私は王城の応接室で、アクトール殿下から王国の現状について説明を受けていた。
 思っていた以上に酷い状況らしい。
 資源の枯渇によって、食べ物すら減り続け、他国からの輸入に頼っている。
 しかし他国から見下されているスローレン王国は、対等な条件で貿易ができない。
 食べ物を輸入するにも、通常の三倍近い金額を要求されるらしい。

「酷い話ですね。困っている時こそ、助け合うべきだというのに……」
「聖女の君にはそう見えるだろうね。だが、交流しても何の利益もないのは事実だ。無視されないだけマシだと思っているよ」

 アクトール殿下は諦めたように微笑む。
 その笑みからは苦労が滲み出ていて、素直に笑顔として受け取ることができない。
 すぐ隣に、これほど厳しい現状と戦う人々がいたのか。 

「聖女として恥ずかしいですね」
「そんなことはないだろう? 君はスパークロン王国の大聖堂から自由に出られなかったんだ。こんな機会でもない限り、知ることはできなかった。君が悪いわけじゃない」
「……それでも、聖女は私一人だけですので」

 私の祈りで苦しむ人々を救えたかもしれない。
 奇跡を起こせる聖女は私だけだ。
 見えていなかった。
 気づかなかった……は、いい訳にならない。
 神様の意志を受け取る身として、なんと不甲斐ないことだろう。
 だからこそ、私は協力を惜しまないと決めた。
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