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 ルストワール家は王都でも名のある公爵家だった。
 王国誕生から脈々と代を重ね、王家の信頼を獲得し、少なからず国政への影響力を有していた。
 積み重ねてきた信頼と実績は、ルストワール家の誇りそのものだった。
 だけど私の両親の代で、その誇りは失われてしまった。
 五年前に私の父が突然の病に倒れ、治療法もわからないまま流れる様に亡くなった。
 その後を追うように、母も謎の病に倒れてしまった。
 家を支える柱を失ったことで、ルストワール家は没落してしまった。
 まだ幼い私にはどうすることもできなかった。
 管理できないならと領地も国に取り上げられ、仕えていた人たちも次々に辞めていった。
 当時から懇意にしていたアイスバーグ家の支援のおかげで、なんとか屋敷だけは失わずに済んだけど、それ以外のほぼ全てを失った。
 どれだけ時間をかけ、慎重に積み重ねていようとも、崩れるのは一瞬だと思い知らされた。

 一人になった私は途方に暮れた。
 大好きだった両親がいなくなって、心に大きな穴が空いた気分だった。
 これからどうやって生きていけばいいのだろう。
 泣きながら悩み、苦しんで思い出したのは……毎日忙しそうに働く両親の姿だった。
 二人とも、ルストワール家を誇りに思っていた。
 世代を超えて受け継がれてきたこの家を守るために必死だった。
 そんな二人を見ていた私は、早く大きくなって二人を手伝いたいと思うようになっていた。
 病に倒れ、命を失うその時まで、二人は必死に抗っていた。
 誰よりも身近で見てきた私には、二人の無念さが嫌というほどわかる。
 だからこそ思った。

 私が守らなきゃいけないんだ。

 ルストワール家の令嬢として、最後の一人として。
 この家を終わらせて溜まるものか。
 父と母が守ろうとした場所を、二人のせいで失ったなんて言われたくない。
 私は目標ができた。
 ルストワール家を再興し、二人が守りたかったものを取り戻す。
 この決意は生きる活力になった。

 そこから私の戦いは始まった。
 ルストワール家を再興するには何が必要なのか。
 一番はお金だった。
 二人が病死したことで、担当していた仕事が全て滞り、各方面に多大な迷惑をかけている。
 その埋め合わせをするため、家に残っていたお金は全て使ってしまった。
 財源だった土地や物も王に回収されている。
 屋敷はアイスバーグ家が買い取る形で維持してもらっている。
 つまり、この時の私はほぼ無一文だった。
 何をするにもまずはお金がいる。
 お金を稼ぐ方法を考え、自分には何ができるのかを探った。

 そして、私は街で小さなお店を開くことにした。
 建物や設備はアイスバーグ家に借金をして揃えてもらい、開業したのはアイテム屋さんだ。
 ポーション、魔導具、素材、食品などなど。
 様々なものを取り扱うお店だ。
 開業に一年、それから四年……。

「――ふぅ、今日も頑張らないと」

 私はこのお店で働いている。
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