月にんじん

笹 慎

文字の大きさ
上 下
1 / 1

月面旅行へGO

しおりを挟む

 サキチは工作がとっても得意!
 将来の夢は発明家。
 サキチの友だちは、ウサギのヨシツネ。
 でも、ヨシツネはウサギだから言葉を話せません。それでも二人は、なかよしです。
 草原の一軒家で、いっしょにくらしています。

 ある日、自転車に乗った郵便屋さんがたずねてきました。
「サキチくん、遠くに住んでいるおばあちゃんからのプレゼントだよ」
「わーい!」
 サキチはよろこびの声をあげて、小包をうけとります。ヨシツネもプレゼントの中身に興味しんしんです。
 さっそく茶色の包み紙を開けると、一冊の本がでてきました。
 サキチとヨシツネはソファーに座って、いっしょに本を読みます。本には都会の一番新しいニュースが書いてありました。
「ヨシツネ、月で新種のニンジンが発見されたって!」
 ヨシツネはサキチを見あげて、鼻をふんふんと動かします。
「食べてみたいのかい?」
 サキチの言葉に、ヨシツネはうなずきます。
「よーし! じゃあ、月に行くロケットを作ろう!」
 ソファーから立ち上がり、サキチはそう宣言しました。

 トンカン トンカン ウィーン ウィーン
 ガッチャン ガッチャン
 サキチのロケット作りは進みます。
 ヨシツネもお手伝い。
 クギ、トンカチ、ネジ、ドライバー。
 サキチに手ぎわよくヨシツネは道具をわたしていきます。
 トンカン トンカン ウィーン ウィーン
 ガッチャン ガッチャン
 サキチとヨシツネのコンビネーションで、ロケットはなんと三日で完成!
 二人はバンザイして喜びました!

 次の日、サキチはおにぎりを作り、水とうにお茶をいれました。
 月への旅の準備はバッチリです!
 そして、できあがったロケットに二人は乗りこみました。
「さぁ、カウントダウンだ! スリー、ツー、ワン……ゼロ!」
 サキチの声に合わせて、ヨシツネはロケットのボタンをポチり。ロケットは火花を散らしながら、空へとまいあがります。

 しばらくすると、ロケットの窓から青い地球が見えてきました。
 二人は興奮して、ぴょんぴょんジャンプ。
 美しい地球を見ながら、おにぎりを食べて、お茶を飲みます。
 そうして、ついに月に到着!

「月にんじんは、どこにあるんだろう?」
 ロケットからおりたサキチとヨシツネは、きょろきょろとあたりを見まわします。
 ヨシツネはサキチの服のそでをひっぱりました。
「何か見つけたのかい?」
 サキチはヨシツネが指さす方を見ます。
 なんとそこには二匹の月ウサギが臼と杵の横でへたりこんでいました。
 かれらと同じウサギであるヨシツネが二匹に理由を質問します。
 そして、聞いた答えをヨシツネは身ぶり手ぶりでサキチに伝えます。
「おもちをついていたら、こしを痛めてしまったのかい!? それは大変だ!」
 サキチは二匹の月ウサギのために、もちつきロボットを作ってあげることにしました。

 クギ、トンカチ、ネジ、ドライバー。
 今回もヨシツネは手ぎわよくサキチに道具をわたしていきます。
 トンカン トンカン ウィーン ウィーン
 ガッチャン ガッチャン
「ロケットに比べたら、カンタン! カンタン!」
 そう言って、サキチはあっという間に、もちつきロボットを完成させました。
 ぺったん ぺったん くるり
 ぺったん ぺったん くるり
 ロボットはおもちを上手について、ひっくりかえします。
 これには二匹の月ウサギも大よろこび!
 ぺったん ぺったん くるり
 ぺったん ぺったん くるり
 すごい発明を聞きつけた他の月ウサギたちも集まってきました。
 みんな興奮して、ぴょんぴょんジャンプ。
 それから、月ウサギたちは感謝のしるしとして、サキチとヨシツネにたくさんの月にんじんをプレゼントしてくれました。

 月にんじんをたくさんゲットして、サキチとヨシツネはロケットに乗りこみます。
「月にんじんはどんな味なんだろうね、楽しみだね」
 操じゅう席にいたサキチがそう言ってふりかえると、ヨシツネはもう月にんじんをつまみ食いしていました。
「まったく、ヨシツネは食いしん坊だなぁ」
 こうして、月への冒険は幕をとじたのです。めでたし、めでたし。
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

三柴 ヲト
2024.12.16 三柴 ヲト

子どもたちにもわかりやすい言葉で、テンポよく綴られたお話。
語感よいため、読み聞かせが楽しそうです。
そしてなにより、うさぎのヨシツネはしゃべりませんが、動作がかわいい!
サキチとヨシツネ、両者の間に言葉はないけれど、かけがえのない相棒であることがひしひしと伝わってきます。
得意な工作で月にいるうさぎを助けてしまうとは、とてもユニークな発想だなと思いました。
子どもと夜空にある月を見上げ、「あそこに月にんじんあるのかな」「どんな味かな」って、楽しく想像したり会話ができそうな、とてもほっこりするお話でした!
素敵なお話をありがとうございました!

解除

あなたにおすすめの小説

とべない鳥

赤鈴
絵本
これは、とある森にすむ2羽のとべない鳥の物語――。 挿絵(イラスト):まつりさん

【親子おはなし絵本】ドングリさんいっぱい(2~4歳向け(漢字えほん):いろいろできたね!)

天渡 香
絵本
「ごちそうさま。ドングリさんをちょうだい」ママは、さっちゃんの小さな手に、ドングリさんをのせます。 +:-:+:-:+ ドングリさんが大好きな我が子ために作った絵本です。 +:-:+:-:+ 「ひとりでトイレに行けたね!」とほめながら、おててにドングリさんを渡すような話しかけをしています(親子のコミュニケーションを目的にしています)。 +:-:+:-:+ 「ドングリさんをちょうだい」のフレーズを繰り返しているうちに、子供の方から「ドングリさんはどうしたらもらえるの?」とたずねてくれたので、「ひとりでお着がえできたら、ドングリさんをもらえるよ~」と、我が家では親子の会話がはずみました。 +:-:+:-:+ 寝る前に、今日の「いろいろできたね!」をお話しするのにもぴったりです! +:-:+:-:+ 2歳の頃から、園で『漢字えほん(漢字が含まれている童話の本)』に親しんでいる我が子。出版数の少ない、低年齢向けの『漢字えほん』を自分で作ってみました。漢字がまじる事で、大人もスラスラ読み聞かせができます。『友達』という漢字を見つけて、子供が喜ぶなど、ひらがなだけの絵本にはない発見の楽しさがあるようです。 +:-:+:-:+ 未満児(1~3歳頃)に漢字のまじった絵本を渡すというのには最初驚きましたが、『街中の看板』『広告』の一つ一つも子供にとっては楽しい童話に見えるようです。漢字の成り立ちなどの『漢字えほん』は多数ありますが、童話に『漢字とひらがなとカタカナ』を含む事で、自然と興味を持って『文字が好き』になったみたいです。

ゆまちゃんとヤン丸の12ヶ月

万揮/マキちん
絵本
まん丸な子犬のヤン丸とゆまちゃんという女の子の一年間の物語です。

ボクはスライム

バナナ男さん
絵本
こんな感じだったら楽しいなと書いてみたので載せてみましたઽ( ´ω`)ઽ 凄く簡単に読める仕様でサクッと読めますのでよかったら暇つぶしに読んでみて下さいませ〜・:*。・:*三( ⊃'ω')⊃

ぞく ちびりゅうと びゃっこくんの だましえ

関谷俊博
絵本
「いい加減にやめろ」とお思いでしょうが、また続けてしまいました…。

【完結】小さな大冒険

衿乃 光希
絵本
動物の子供たちが、勇気を出して一歩を踏み出す、小さくても大きな冒険物語。主人公は毎回変わります。作者は絵を描けないので、あなたの中でお好きな絵を想像して読んでくださいね。漢字にルビは振っていません。絵本大賞にエントリーしています。

絵本 メリーさん

るい
絵本
夜遅くまで遊んでいるこの元には、メリーさんがやってくる。 有名なホラー話「メリーさん」を絵本にしてみました。

どんなうどん?

天仕事屋(てしごとや)
絵本
今街で人気のうどん屋さんのお話です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。