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3章
戦い観戦
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1.「裕次郎。今朝はずいぶん早く登校したのだな」
イザベルは、裕次郎の頭にベルを乗せた。
「うん。ちょっと用事があってね・・・」
裕次郎は、ベルを肩に乗せながら答える。
「ウジウジウジ!」(私を置いていかないでください!)
ベルはいつものように突起を振り回す。
「そうなのか? ならあれは何だ?」
イザベルは、視線で殺せそうな程睨み付けてきているアジオを指差した。
「・・・色々あってね」
裕次郎はそう言うとため息をついた。
なんであんなクソみたいな不良とぶつかったんだろう。美少女だったら良かったのに。ほんとついてない。
「ウジ! ウジウジ!」(なんですか! 何があったんですか!)
ベルが肩の上で暴れ始めた。裕次郎は再びため息をついた。
2.裕次郎達は魔法訓練施設に来ていた。今日も対人戦闘の授業だ。
今日こそは、今日こそは絶対に勝つ! そう心に誓った。
ザークが戦う相手を発表していく。
「――裕次郎とアジオ。以上だ」
そう言われた瞬間、裕次郎は安心した。いける。殺すつもりでいけば、多分勝てる。
「おい。棄権したほうがいいんじゃないか?」
アジオがニヤニヤと笑いながら近づいてきた。
「お前こそ、ぶっ飛ばされんうちに消えろ!」
裕次郎は、余裕の表情でアジオに中指を立ててやった。すると、下からクイクイと袖を引かれる。
「パパ、なんでママのうしろにかくれてるの?」
サキは不思議そうに裕次郎を見つめてきた。
「・・・・・・」
裕次郎は何も言えず、優しくサキの頭を撫でた。
3.今回は、裕次郎の出番は二番目。今は上の観客席から観戦していた。戦っているのは、ルイーゼと・・・誰だっけあれ?
裕次郎は、ルイーゼと戦っている相手の名前を知らなかった。見た感じは、ゴリラっぽい。まあ、ルイーゼなら負けはしないだろう。
「しかし、ルイーゼはずっと裕次郎の事を探していたぞ? 何か言われたか?」
裕次郎の隣で観戦していたイザベルが尋ねてくる。
「え? 今日は会ってないよ・・・あ!」
裕次郎は勢いよく立ち上がった。
そうだ。俺今日ルイーゼに力吸われてない! これヤバイかな・・・
裕次郎はルイーゼに視線をやった。出来るだけ魔法を使わないようにしているのだろう。相手の攻撃をギリギリでかわしながら、隙を狙っている。すると、ゴリラ男が掌を前につきだした。
「雷針!」
相手のゴリラ男が呪文を唱え、雷の矢を三本放った。矢は滑るようにルイーゼを狙う。
「水壁!/大氷流星!」
ルイーゼは避けきれないと判断したのだろう。大きな水の壁を、飛んでくる矢の前に噴出させた。それと同時に巨大な氷塊を降らせていた。氷塊はゴリラ男めがけて落下していく。
「大爆炎斬剣!」
ゴリラ男は腕に火炎を纏わせ、落ちてくる氷塊に向かって手刀を降り下ろした。
『バガァァァン!』
手刀から放たれた斬撃は、氷塊を分断した。二つの氷塊は、地響きを立てて地面にめり込んだ。
「ほう。なかなかやるな。良い戦いだ」
イザベルが感心したようにうなずいた。
しかしその時、ルイーゼが苦しそうに倒れ込んだ。裕次郎は慌ててイザベルに尋ねる。
「魔力が切れたみたい! 止めたほうが良いよね?」
「慌てるな裕次郎。怪我をしても魔法で治療できる。問題ない」
「本当に? 本当に大丈夫なの?」
「何を慌てているんだ。まあ見ていろ」
イザベルがそう言いながら指差しさした。右手を高く上げたゴリラ男が、拳に魔力を込めながら呪文を唱えていた。
「極炎大爆球!」
ゴリラ男が呪文を唱えると、球状の炎が現れ、少しずつ成長していく。ルイーゼはやはり魔力が切れたのだろう。倒れこんだまま動かない。
「イザベル! ルイーゼがやられちゃう!」
「そうだな。勝負あったな」
「あれ、本当に痛くないんだよね!?」
「痛いとは思うが、治るから大丈夫だ」
「え! 痛いの? 全然大丈夫じゃないじゃん!」
「どうしたんだ? 裕次郎も斬られた後、ちゃんと治っただろう?」
「そうだけど・・・そうじゃないというか・・・」
裕次郎とイザベルが話しているうちに、炎の球はどんどん大きくなっていく。
裕次郎は、ルイーゼが助けを求めるようにこちらを見てきた・・・ような気がした。
裕次郎は思わず叫んでいた。
「あああ! これ俺無理なやつじゃん!!」
裕次郎は、治るから大丈夫と達観できるタイプではかったし、倒れている女の子を放置できるタイプでもなかった。
「ちょっと待ってぇぇぇぇ!」
裕次郎が飛び出していった瞬間、ゴリラ男は極炎大爆球を放った。
イザベルは、裕次郎の頭にベルを乗せた。
「うん。ちょっと用事があってね・・・」
裕次郎は、ベルを肩に乗せながら答える。
「ウジウジウジ!」(私を置いていかないでください!)
ベルはいつものように突起を振り回す。
「そうなのか? ならあれは何だ?」
イザベルは、視線で殺せそうな程睨み付けてきているアジオを指差した。
「・・・色々あってね」
裕次郎はそう言うとため息をついた。
なんであんなクソみたいな不良とぶつかったんだろう。美少女だったら良かったのに。ほんとついてない。
「ウジ! ウジウジ!」(なんですか! 何があったんですか!)
ベルが肩の上で暴れ始めた。裕次郎は再びため息をついた。
2.裕次郎達は魔法訓練施設に来ていた。今日も対人戦闘の授業だ。
今日こそは、今日こそは絶対に勝つ! そう心に誓った。
ザークが戦う相手を発表していく。
「――裕次郎とアジオ。以上だ」
そう言われた瞬間、裕次郎は安心した。いける。殺すつもりでいけば、多分勝てる。
「おい。棄権したほうがいいんじゃないか?」
アジオがニヤニヤと笑いながら近づいてきた。
「お前こそ、ぶっ飛ばされんうちに消えろ!」
裕次郎は、余裕の表情でアジオに中指を立ててやった。すると、下からクイクイと袖を引かれる。
「パパ、なんでママのうしろにかくれてるの?」
サキは不思議そうに裕次郎を見つめてきた。
「・・・・・・」
裕次郎は何も言えず、優しくサキの頭を撫でた。
3.今回は、裕次郎の出番は二番目。今は上の観客席から観戦していた。戦っているのは、ルイーゼと・・・誰だっけあれ?
裕次郎は、ルイーゼと戦っている相手の名前を知らなかった。見た感じは、ゴリラっぽい。まあ、ルイーゼなら負けはしないだろう。
「しかし、ルイーゼはずっと裕次郎の事を探していたぞ? 何か言われたか?」
裕次郎の隣で観戦していたイザベルが尋ねてくる。
「え? 今日は会ってないよ・・・あ!」
裕次郎は勢いよく立ち上がった。
そうだ。俺今日ルイーゼに力吸われてない! これヤバイかな・・・
裕次郎はルイーゼに視線をやった。出来るだけ魔法を使わないようにしているのだろう。相手の攻撃をギリギリでかわしながら、隙を狙っている。すると、ゴリラ男が掌を前につきだした。
「雷針!」
相手のゴリラ男が呪文を唱え、雷の矢を三本放った。矢は滑るようにルイーゼを狙う。
「水壁!/大氷流星!」
ルイーゼは避けきれないと判断したのだろう。大きな水の壁を、飛んでくる矢の前に噴出させた。それと同時に巨大な氷塊を降らせていた。氷塊はゴリラ男めがけて落下していく。
「大爆炎斬剣!」
ゴリラ男は腕に火炎を纏わせ、落ちてくる氷塊に向かって手刀を降り下ろした。
『バガァァァン!』
手刀から放たれた斬撃は、氷塊を分断した。二つの氷塊は、地響きを立てて地面にめり込んだ。
「ほう。なかなかやるな。良い戦いだ」
イザベルが感心したようにうなずいた。
しかしその時、ルイーゼが苦しそうに倒れ込んだ。裕次郎は慌ててイザベルに尋ねる。
「魔力が切れたみたい! 止めたほうが良いよね?」
「慌てるな裕次郎。怪我をしても魔法で治療できる。問題ない」
「本当に? 本当に大丈夫なの?」
「何を慌てているんだ。まあ見ていろ」
イザベルがそう言いながら指差しさした。右手を高く上げたゴリラ男が、拳に魔力を込めながら呪文を唱えていた。
「極炎大爆球!」
ゴリラ男が呪文を唱えると、球状の炎が現れ、少しずつ成長していく。ルイーゼはやはり魔力が切れたのだろう。倒れこんだまま動かない。
「イザベル! ルイーゼがやられちゃう!」
「そうだな。勝負あったな」
「あれ、本当に痛くないんだよね!?」
「痛いとは思うが、治るから大丈夫だ」
「え! 痛いの? 全然大丈夫じゃないじゃん!」
「どうしたんだ? 裕次郎も斬られた後、ちゃんと治っただろう?」
「そうだけど・・・そうじゃないというか・・・」
裕次郎とイザベルが話しているうちに、炎の球はどんどん大きくなっていく。
裕次郎は、ルイーゼが助けを求めるようにこちらを見てきた・・・ような気がした。
裕次郎は思わず叫んでいた。
「あああ! これ俺無理なやつじゃん!!」
裕次郎は、治るから大丈夫と達観できるタイプではかったし、倒れている女の子を放置できるタイプでもなかった。
「ちょっと待ってぇぇぇぇ!」
裕次郎が飛び出していった瞬間、ゴリラ男は極炎大爆球を放った。
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