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夜明け編
サンライズその19 夜明け編
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サンライズその19 夜明け編1
十二月。師走という字が示すように忙しい日々が続いていた。定期テストは熾烈な戦いで多くのクラスメイト(横手とか)が散っていった中、なんとか命は助かり、そして平和な戦後が始まろうとしていたある日のこと。
姉さんと湯殿はテスト明けの女子会があるらしいのでひとりで校門を出る。男子どものボーリング大会は今度の日曜日。楽しみだ。楽しみは後にとっておくべきだはははは。ははは。は。ん?なんだこれ。
学校を出ると町の様子がおかしい。こんな町並みではなかったはずだ。振り返ってみる。振り返ってみる。学校もまったく違っていた。
目を閉じて十秒してまた開く。さっきと変わらない。なんだっそら。
仕方がないのでいつもの道(?)を歩いて駅に向かう。駅は建物こそ違うけれどそこにちゃんと存在していた。いや、何がちゃんとだ、おかしい。改札を通ろうとすると、駅員のおっさんに睨まれる。ICカードは使えないらしい。しょうがなく券売機で切符を買おうとするも、硬貨が戻ってきてしまい買えない。なんだこりゃ。一度駅を出て、また再び目をつぶってみる。今度は一分。・・・・・・やはり変わらなかった。なんなんだこれは。
学校に戻れば湯殿がいるかもしれない。この前変な幽霊に異空間に連れていかれたときはあいつが助けてくれたのだ。
が、湯殿はいっこうに現れなかった。そして日が完全に暮れてしまい。途方にくれる。
「あなた、何してるの」
突然誰かに話しかけられる。そこにいたのは、暗くて顔はよくわからないが、俺と背の同じくらいの女性。そして後ろにもうひとり。
「・・・・・・きっとこの人が例の遭難者ですよ」
「そうっぽいね、あなた、もしかして何かおかしな所に連れてこられて困惑してない?」
なぜわかるんだこの人たちは。もしかして、以前のような、この空間を作り出した人たちなのか。
「相当困惑してるっぽいね、私は箒川夜明、」
「・・・・・・安芸はとば」
「東海ひのでです」
「あなた、途方にくれてない?私のところに来ない?」
何が目的なのだ・・・・・・しかしここで断ったら、どうしようもない気がする。リスクを承知で頼ってみるほかないな。
「お願いします」
「じゃあ、ついてきて」
二人は車できていたらしく、箒川が運転してついたのは、・・・学校?
「着いたよ」
「ここは・・・・・・」
「学校よ、ここに寮があって、空き部屋、というか空き建物があるから、そこを使っていいよ」
「申し訳ないです」
「いいっていいって」
指定された建物は、寮としては使っていないのか、静まり返っていた。安芸という男が倉庫と化していた部屋から荷物を運び出し、布団をどこからか持ってくる。
「・・・・・・出来た・・・ここに寝ろ」
「ありがとうございます」
と、男の顔を見ると、以前俺を襲った幽霊の顔にそっくりだったのだ。ぎょっとするも、それ以上態度に出さないでおいた。すでに十分出てたとは思うが、仕方ない。
部屋が埃っぽいので廊下に積んであった掃除機をかけ、あらかた綺麗にしてからやっと休憩。
「どう?えーと、東海くん」
「快適です、ありがとうございます」
「そういえば、東海くんは晩御飯食べたの?」
「いや、食べてないです」
「だろうと思って、用意してあるのよ、一緒に食べましょう?」
本当に申し訳ない。学校の敷地内にある、さっきの寮にそっくりの建物に入る。そこはさっきと違ってやたら生活感があり、華やかだった。
「ここは女子寮。もうご飯は出来てるから」
「ありがとうございます」
一階の食堂でオムライスをご馳走になる。ここのオムライスは俺の研究より先に行ってるなと味わっていると、箒川さんがいろいろ話し出す。ここはもともと俺がいた世界とはおそらく違う世界だということ。箒川さんはここの学校の校長だということ。いや、そうは見えない。むしろ生徒と変わらないくらい若く見える。それはおいといて。
「異世界に来ちゃう人っていうのは、ときどきいるんだよ、でも安心して、どこから来たかわかれば、きっと帰れるから、それまであの部屋を使うといいよ」
「ありがとうございます」
「何かあったら、私かさっき一緒だった安芸に頼むといいよ」
箒川さんはやたら親切で、そして豪快というかなんというか、細かいことを気にしなさそうな人だった。勇気づけられるが、心のなかでは本当は敵の罠に嵌められているのでは、などとも思っている。
が、疲れた。俺は与えられた部屋に戻るとあっという間に眠りについたのだった。
続きます
十二月。師走という字が示すように忙しい日々が続いていた。定期テストは熾烈な戦いで多くのクラスメイト(横手とか)が散っていった中、なんとか命は助かり、そして平和な戦後が始まろうとしていたある日のこと。
姉さんと湯殿はテスト明けの女子会があるらしいのでひとりで校門を出る。男子どものボーリング大会は今度の日曜日。楽しみだ。楽しみは後にとっておくべきだはははは。ははは。は。ん?なんだこれ。
学校を出ると町の様子がおかしい。こんな町並みではなかったはずだ。振り返ってみる。振り返ってみる。学校もまったく違っていた。
目を閉じて十秒してまた開く。さっきと変わらない。なんだっそら。
仕方がないのでいつもの道(?)を歩いて駅に向かう。駅は建物こそ違うけれどそこにちゃんと存在していた。いや、何がちゃんとだ、おかしい。改札を通ろうとすると、駅員のおっさんに睨まれる。ICカードは使えないらしい。しょうがなく券売機で切符を買おうとするも、硬貨が戻ってきてしまい買えない。なんだこりゃ。一度駅を出て、また再び目をつぶってみる。今度は一分。・・・・・・やはり変わらなかった。なんなんだこれは。
学校に戻れば湯殿がいるかもしれない。この前変な幽霊に異空間に連れていかれたときはあいつが助けてくれたのだ。
が、湯殿はいっこうに現れなかった。そして日が完全に暮れてしまい。途方にくれる。
「あなた、何してるの」
突然誰かに話しかけられる。そこにいたのは、暗くて顔はよくわからないが、俺と背の同じくらいの女性。そして後ろにもうひとり。
「・・・・・・きっとこの人が例の遭難者ですよ」
「そうっぽいね、あなた、もしかして何かおかしな所に連れてこられて困惑してない?」
なぜわかるんだこの人たちは。もしかして、以前のような、この空間を作り出した人たちなのか。
「相当困惑してるっぽいね、私は箒川夜明、」
「・・・・・・安芸はとば」
「東海ひのでです」
「あなた、途方にくれてない?私のところに来ない?」
何が目的なのだ・・・・・・しかしここで断ったら、どうしようもない気がする。リスクを承知で頼ってみるほかないな。
「お願いします」
「じゃあ、ついてきて」
二人は車できていたらしく、箒川が運転してついたのは、・・・学校?
「着いたよ」
「ここは・・・・・・」
「学校よ、ここに寮があって、空き部屋、というか空き建物があるから、そこを使っていいよ」
「申し訳ないです」
「いいっていいって」
指定された建物は、寮としては使っていないのか、静まり返っていた。安芸という男が倉庫と化していた部屋から荷物を運び出し、布団をどこからか持ってくる。
「・・・・・・出来た・・・ここに寝ろ」
「ありがとうございます」
と、男の顔を見ると、以前俺を襲った幽霊の顔にそっくりだったのだ。ぎょっとするも、それ以上態度に出さないでおいた。すでに十分出てたとは思うが、仕方ない。
部屋が埃っぽいので廊下に積んであった掃除機をかけ、あらかた綺麗にしてからやっと休憩。
「どう?えーと、東海くん」
「快適です、ありがとうございます」
「そういえば、東海くんは晩御飯食べたの?」
「いや、食べてないです」
「だろうと思って、用意してあるのよ、一緒に食べましょう?」
本当に申し訳ない。学校の敷地内にある、さっきの寮にそっくりの建物に入る。そこはさっきと違ってやたら生活感があり、華やかだった。
「ここは女子寮。もうご飯は出来てるから」
「ありがとうございます」
一階の食堂でオムライスをご馳走になる。ここのオムライスは俺の研究より先に行ってるなと味わっていると、箒川さんがいろいろ話し出す。ここはもともと俺がいた世界とはおそらく違う世界だということ。箒川さんはここの学校の校長だということ。いや、そうは見えない。むしろ生徒と変わらないくらい若く見える。それはおいといて。
「異世界に来ちゃう人っていうのは、ときどきいるんだよ、でも安心して、どこから来たかわかれば、きっと帰れるから、それまであの部屋を使うといいよ」
「ありがとうございます」
「何かあったら、私かさっき一緒だった安芸に頼むといいよ」
箒川さんはやたら親切で、そして豪快というかなんというか、細かいことを気にしなさそうな人だった。勇気づけられるが、心のなかでは本当は敵の罠に嵌められているのでは、などとも思っている。
が、疲れた。俺は与えられた部屋に戻るとあっという間に眠りについたのだった。
続きます
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