サンライズ

湯殿たもと

文字の大きさ
上 下
11 / 20
神無月編

サンライズ その11 神無月編

しおりを挟む
サンライズ その11 神無月編1



夏休みがあっという間に終わり二学期がやってきてしまった。足りない。全然足りない。部活動をやってる人はもっと足りないだろうけど、やってなくても足りないのだ。うぐーっ!

結構久しぶりな、そしていつもの通りの姉さんとの通学路。

「ひさしぶり過ぎて早起きがきつい・・・・・・」

「昨日宿題やるのに徹夜してたからだよ、計画的にやらないとダメだよ」

「そうは言ってもな・・・・・・」

「私は最後の一週間でやったから、そのくらい計画的に」

「どこが計画的なんだよ」

なんて会話をしながら、久しぶりの学校へ。

「おはよ横手」

「お、東海か、よく聞け、うちに転校生がやってくるらしいぜ」

「転校生だって!?マジか!」

「しかも女らしいぜ」

「すっげぇ」

転校生なんて久しぶりの響きだ。横手がどの程度情報を仕入れているのかはわからないが、まあ無理に調べるより、朝のホームルームまでわくわくをとっておいたほうがいいな。

朝八時半、いつもよりざわついた中ホームルームが始まった。そして先生が入ってくると、その後ろに女子生徒。この人が転校生らしい。クラスの(主に男子の)興奮は最高潮に達した。

「そこ、静かに!」

威厳の無さげな若い担任の大久保先生は必死だ。

「それじゃ初めてくれ」

「湯殿たもとといいます。家の仕事の都合で引っ越してきました。よろしくお願いします」

「うおおおお」

クラスの中は大歓声。今日一日は間違いなくこの騒ぎが続きそうだ。しかし・・・・・・あいつ、この前の誘拐犯だろう・・・なぜこんなところに。

大久保先生は転入生の席を空いていた窓際の一番後ろに指定した。横手の真後ろ。休み時間になるたびに人が殺到する。主に男子。お昼休みにはついに前の席の横手が人混みから追放される始末。

「東海、今日は学食に行こうぜ・・・学食の混み具合のがマシだ・・・・・・」

「そうだな、行こうぜ」

よく分からない転入生に、理由は違っても困惑しているのは同じだった。食堂でカレーを食べながら雑談する。

「あいつ、なんか、言葉には表せないけど、不気味だぜ」

「そうか」

横手の直感は確からしい。そんな能力があったのか。ただ、今はあの誘拐の話はだまっておこう。いくら不気味だとか、誘拐の前科があろうが、新しく来た土地での生活をいきなりぶち壊すことはないだろう。

相変わらず人混みは消えないまま放課後。掃除当番で、箒をはきながら様子を伺う。・・・・・・目が合った。あわてて逸らす。掃除を終えてさっさと駅に向かう。が、惜しいところで電車を逃し、待合室で待っていると、姉さんと湯殿がそろって現れたのだ。

「ひーくんのクラスにきた転校生のたもとちゃん、同じ電車なんだって、よかったよね」

「ひので君ひさしぶり、一緒に通学しようね」

ぎょっとしたが姉さんはまったく警戒してないので、俺もそんなに警戒心を見せないようにはしよう。

「湯殿、せっかくクラスメイトになったんだし仲良くしようぜ」

「そうだね、仲良くしようねっ」

湯殿が笑うと警戒心とは別にどきっとさせられる。確かにクラスのみんなが群がるのは別におかしくもなんともないことが解る。俺だって誘拐とか絡まなければあの中の一員なのかもしれない。

電車に乗って、最寄り駅で降りると湯殿はまだついてきている。

「家はどこなんだ」

「九尾さんのところ」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「九尾さんと友達なんだね」

姉さんが口を開く。

「そう、友達なんだよ」

「九尾とねぇ」

九尾がこんなところで出てくるとは。九尾のすみかの分かれ道で別れると、俺の家はもうすぐそこだった。

夜、姉さんがはるかに話したらしく、湯殿さんに会いたい!と大騒ぎ。明日の放課後に会わせることにした。



続きます



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

処理中です...