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神無月編
サンライズ その11 神無月編
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サンライズ その11 神無月編1
夏休みがあっという間に終わり二学期がやってきてしまった。足りない。全然足りない。部活動をやってる人はもっと足りないだろうけど、やってなくても足りないのだ。うぐーっ!
結構久しぶりな、そしていつもの通りの姉さんとの通学路。
「ひさしぶり過ぎて早起きがきつい・・・・・・」
「昨日宿題やるのに徹夜してたからだよ、計画的にやらないとダメだよ」
「そうは言ってもな・・・・・・」
「私は最後の一週間でやったから、そのくらい計画的に」
「どこが計画的なんだよ」
なんて会話をしながら、久しぶりの学校へ。
「おはよ横手」
「お、東海か、よく聞け、うちに転校生がやってくるらしいぜ」
「転校生だって!?マジか!」
「しかも女らしいぜ」
「すっげぇ」
転校生なんて久しぶりの響きだ。横手がどの程度情報を仕入れているのかはわからないが、まあ無理に調べるより、朝のホームルームまでわくわくをとっておいたほうがいいな。
朝八時半、いつもよりざわついた中ホームルームが始まった。そして先生が入ってくると、その後ろに女子生徒。この人が転校生らしい。クラスの(主に男子の)興奮は最高潮に達した。
「そこ、静かに!」
威厳の無さげな若い担任の大久保先生は必死だ。
「それじゃ初めてくれ」
「湯殿たもとといいます。家の仕事の都合で引っ越してきました。よろしくお願いします」
「うおおおお」
クラスの中は大歓声。今日一日は間違いなくこの騒ぎが続きそうだ。しかし・・・・・・あいつ、この前の誘拐犯だろう・・・なぜこんなところに。
大久保先生は転入生の席を空いていた窓際の一番後ろに指定した。横手の真後ろ。休み時間になるたびに人が殺到する。主に男子。お昼休みにはついに前の席の横手が人混みから追放される始末。
「東海、今日は学食に行こうぜ・・・学食の混み具合のがマシだ・・・・・・」
「そうだな、行こうぜ」
よく分からない転入生に、理由は違っても困惑しているのは同じだった。食堂でカレーを食べながら雑談する。
「あいつ、なんか、言葉には表せないけど、不気味だぜ」
「そうか」
横手の直感は確からしい。そんな能力があったのか。ただ、今はあの誘拐の話はだまっておこう。いくら不気味だとか、誘拐の前科があろうが、新しく来た土地での生活をいきなりぶち壊すことはないだろう。
相変わらず人混みは消えないまま放課後。掃除当番で、箒をはきながら様子を伺う。・・・・・・目が合った。あわてて逸らす。掃除を終えてさっさと駅に向かう。が、惜しいところで電車を逃し、待合室で待っていると、姉さんと湯殿がそろって現れたのだ。
「ひーくんのクラスにきた転校生のたもとちゃん、同じ電車なんだって、よかったよね」
「ひので君ひさしぶり、一緒に通学しようね」
ぎょっとしたが姉さんはまったく警戒してないので、俺もそんなに警戒心を見せないようにはしよう。
「湯殿、せっかくクラスメイトになったんだし仲良くしようぜ」
「そうだね、仲良くしようねっ」
湯殿が笑うと警戒心とは別にどきっとさせられる。確かにクラスのみんなが群がるのは別におかしくもなんともないことが解る。俺だって誘拐とか絡まなければあの中の一員なのかもしれない。
電車に乗って、最寄り駅で降りると湯殿はまだついてきている。
「家はどこなんだ」
「九尾さんのところ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「九尾さんと友達なんだね」
姉さんが口を開く。
「そう、友達なんだよ」
「九尾とねぇ」
九尾がこんなところで出てくるとは。九尾のすみかの分かれ道で別れると、俺の家はもうすぐそこだった。
夜、姉さんがはるかに話したらしく、湯殿さんに会いたい!と大騒ぎ。明日の放課後に会わせることにした。
続きます
夏休みがあっという間に終わり二学期がやってきてしまった。足りない。全然足りない。部活動をやってる人はもっと足りないだろうけど、やってなくても足りないのだ。うぐーっ!
結構久しぶりな、そしていつもの通りの姉さんとの通学路。
「ひさしぶり過ぎて早起きがきつい・・・・・・」
「昨日宿題やるのに徹夜してたからだよ、計画的にやらないとダメだよ」
「そうは言ってもな・・・・・・」
「私は最後の一週間でやったから、そのくらい計画的に」
「どこが計画的なんだよ」
なんて会話をしながら、久しぶりの学校へ。
「おはよ横手」
「お、東海か、よく聞け、うちに転校生がやってくるらしいぜ」
「転校生だって!?マジか!」
「しかも女らしいぜ」
「すっげぇ」
転校生なんて久しぶりの響きだ。横手がどの程度情報を仕入れているのかはわからないが、まあ無理に調べるより、朝のホームルームまでわくわくをとっておいたほうがいいな。
朝八時半、いつもよりざわついた中ホームルームが始まった。そして先生が入ってくると、その後ろに女子生徒。この人が転校生らしい。クラスの(主に男子の)興奮は最高潮に達した。
「そこ、静かに!」
威厳の無さげな若い担任の大久保先生は必死だ。
「それじゃ初めてくれ」
「湯殿たもとといいます。家の仕事の都合で引っ越してきました。よろしくお願いします」
「うおおおお」
クラスの中は大歓声。今日一日は間違いなくこの騒ぎが続きそうだ。しかし・・・・・・あいつ、この前の誘拐犯だろう・・・なぜこんなところに。
大久保先生は転入生の席を空いていた窓際の一番後ろに指定した。横手の真後ろ。休み時間になるたびに人が殺到する。主に男子。お昼休みにはついに前の席の横手が人混みから追放される始末。
「東海、今日は学食に行こうぜ・・・学食の混み具合のがマシだ・・・・・・」
「そうだな、行こうぜ」
よく分からない転入生に、理由は違っても困惑しているのは同じだった。食堂でカレーを食べながら雑談する。
「あいつ、なんか、言葉には表せないけど、不気味だぜ」
「そうか」
横手の直感は確からしい。そんな能力があったのか。ただ、今はあの誘拐の話はだまっておこう。いくら不気味だとか、誘拐の前科があろうが、新しく来た土地での生活をいきなりぶち壊すことはないだろう。
相変わらず人混みは消えないまま放課後。掃除当番で、箒をはきながら様子を伺う。・・・・・・目が合った。あわてて逸らす。掃除を終えてさっさと駅に向かう。が、惜しいところで電車を逃し、待合室で待っていると、姉さんと湯殿がそろって現れたのだ。
「ひーくんのクラスにきた転校生のたもとちゃん、同じ電車なんだって、よかったよね」
「ひので君ひさしぶり、一緒に通学しようね」
ぎょっとしたが姉さんはまったく警戒してないので、俺もそんなに警戒心を見せないようにはしよう。
「湯殿、せっかくクラスメイトになったんだし仲良くしようぜ」
「そうだね、仲良くしようねっ」
湯殿が笑うと警戒心とは別にどきっとさせられる。確かにクラスのみんなが群がるのは別におかしくもなんともないことが解る。俺だって誘拐とか絡まなければあの中の一員なのかもしれない。
電車に乗って、最寄り駅で降りると湯殿はまだついてきている。
「家はどこなんだ」
「九尾さんのところ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「九尾さんと友達なんだね」
姉さんが口を開く。
「そう、友達なんだよ」
「九尾とねぇ」
九尾がこんなところで出てくるとは。九尾のすみかの分かれ道で別れると、俺の家はもうすぐそこだった。
夜、姉さんがはるかに話したらしく、湯殿さんに会いたい!と大騒ぎ。明日の放課後に会わせることにした。
続きます
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