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九尾の狐編
サンライズ その1 九尾の狐
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サンライズ 1
「サンライズは日の出っていう意味。広島ではメロンパンのことをサンライズというらしいぞ」
「知らないよ」
俺は東海ひので。今年高校に通い始めた高校一年生。今日も電車とバスで学校へむかう。約一ヶ月たって大分学校にも慣れてきたところ。友達も出来たし、春休みに培われたぐうたら生活も見事に崩壊した。
「そんなの崩壊したほうがいいじゃん?」
「そうだけど」
双子の姉、きぼう姉さんも同じ学校なので、くだらないようなことを話ながら学校に向かうことが多い。帰りは掃除当番や、友達との付き合いがあるからなかなか一緒に帰ることはないのだけど。
「でもさぁ、好きなときに好きなだけ寝て、好きなことして、暮らすのがいちばんいいと思うんだよ」
「まあねぇ、現実が許してくれないけど確かにそっちのがいいよねぇ」
「そうだろ」
「死んだあとに天国にいけば出来るから、地獄に落ちないように気を付けないとね~」
「落ちるようなことはしないよ」
「わかんないよ~?結構シビアなのかもしれないよ」
「もしそうだったら姉さんだってあやしいぞ」
「確かにねぇ」
何か心当たりがあるような反応をする。まさか。
自分はわりとめんどくさがりだけど、姉さんもそうだと思う。育った環境によるのだろうか。いや?遺伝か?そんなことを話しているうちに駅へ。家から駅まで二十分、そこから電車で学校の最寄り駅まで十五分、そこからバスで十分。わりと遠いからか、中学生のころよりよく喋っている。双子といってもきっかけがないと話さないものだと思う。そんなきっかけが高校生活で生まれた一番不思議な事だった。
学校で一番話す友達は横手という男子学生。入学式のときに久保田が話しかけてきて、それ以来よく話す。お互いに話が合うしギャグも言える間柄になった。よく昼飯も一緒に食べたりしている。
「なあ東海」
「なんだ」
「部活何かはいるのか?」
「家が遠いしだるいなぁ、横手は?」
「俺は帰宅部だな、スポーツは中学でさんざんやって嫌になったし、だからといって文化部もこれっていうものが無いな」
「確かに」
明後日はこの学校のさまざまな部活が勧誘を行う日だという。何かに入るつもりはないけれど、それくらいは見ておこうか、とも思う。
放課後、駅に一人で向かい、電車に揺られて最寄りの駅に降り立つ。ここから二十分のいなか道を歩く。のほほんとしたところを歩いていると、前から見慣れない女の子が歩いてくる。
「ねえひので君」
「どうした」
「このへんで、鶴島悠って人を見なかった?」
「名前じゃわからないな、どんな人なんだ?」
「背が高くて、ちょっとひょろってしたタイプのイケメン」
「このあたりでイケメンを見たことは無いな」
「そっか。ありがとう、もし見かけたら教えてね」
そう言って走って行ってしまった。
背の高いイケメンねえ。・・・・・・そういやあの子供はいったい誰だ?面識はないけど俺の名前を知っているってことは、この町の子どもか?まず子供のことをわからないと仮にその尋ね人を見つけたとしても伝えられない。子供が駆けていった方へ向かってみたが見つけられなかった。
家に帰って、妹のはるかにその子供と男を知っているかと聞いたら知らないという。もしかして隣の小学校の子供が歩いてきたのだろうか。親が近くにいるようには見えなかった。
姉さんが帰って来た後に同じように聞いてみたけれど同じ返答だった。うーん、いったい何者なんだろうか。
翌日は学校が終わると早めの電車で帰って来た。が、その子供は見つからない。時間が普段より早いので遠回りしてみるか。
ずいぶんと久しぶりな道に入る。小学生のころは何度も通った道だけど、最近はまったく通ってなかった。ほとんど変わっていない道を春の中歩いていく。気分は良くなったけど、探している人はいない。結果的にただのお散歩を終えて家に帰ってくると、はるかの友達が来ているようで靴がいつもより多かった。
「やっほーひので君」
なんで、探してる人がこんなところにいるのでしょうか。うぐぅ。
「はるかの知り合いなのか」
「お兄ちゃんの知り合いじゃないの?」
「違う」
「私は知ってるよ」
「ほら」
その少女がいうには、俺が小さいときに会ったことがあるという。そんなわけないだろう。奴は俺やはるかよりもずっと年下に見える。俺が小さいときには生まれていないはず。
「まあそう思うよね、でも、私はね・・・・・・妖怪だから」
「妖怪?」
「そう、東洋の大妖怪、九尾の狐!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「信じてないね?」
「そりゃそうだろ、いきなり妖怪なんて言われたって。ドラキュラや狼男の仲間なのか?そんな風には見えないぞ」
「んー、まあ、そうだよね。それじゃ、今から化けて見せるよ、それなら妖怪って信じる?」
「それなら信じてやろう」
「何に化けるの?」
いつの間にかはるかは目を輝かせて狐を見ていた。化けたのが事実かはわからないが、催眠術でそう見せたとしてもかなりの実力者には違いないからただ者ではないかもしれない。
まず狐に化けた。これが本来の姿だという。しっぽが九本。九尾の狐とはこういうことか。次にイケメンの男に化けた。
「探してるのはこの人だから覚えていてね」
「わかった」
ケータイで写真に撮っておく。次にみかんに化けた。植物にも化けられるのか。
「みかんの実じゃなくて、木に化けたりは出来るのか?」
「出来るよ、外じゃないとやらないけど」
「すげえな」
これはガチで妖怪かもしれない。いいものを見たものだ。最後にベジータに化け、著作権的にやばくなったのでやめさせた。
「お茶、ありがとうね」
「ああ」
九尾の狐はそう言って、そして探している人の写真を何枚か置いて帰っていった。入れ替わりに姉さんが帰ってくる。
「ただいま、あの人だれ?」
「うーん、変な人」
「変な人?」
続きます。
「サンライズは日の出っていう意味。広島ではメロンパンのことをサンライズというらしいぞ」
「知らないよ」
俺は東海ひので。今年高校に通い始めた高校一年生。今日も電車とバスで学校へむかう。約一ヶ月たって大分学校にも慣れてきたところ。友達も出来たし、春休みに培われたぐうたら生活も見事に崩壊した。
「そんなの崩壊したほうがいいじゃん?」
「そうだけど」
双子の姉、きぼう姉さんも同じ学校なので、くだらないようなことを話ながら学校に向かうことが多い。帰りは掃除当番や、友達との付き合いがあるからなかなか一緒に帰ることはないのだけど。
「でもさぁ、好きなときに好きなだけ寝て、好きなことして、暮らすのがいちばんいいと思うんだよ」
「まあねぇ、現実が許してくれないけど確かにそっちのがいいよねぇ」
「そうだろ」
「死んだあとに天国にいけば出来るから、地獄に落ちないように気を付けないとね~」
「落ちるようなことはしないよ」
「わかんないよ~?結構シビアなのかもしれないよ」
「もしそうだったら姉さんだってあやしいぞ」
「確かにねぇ」
何か心当たりがあるような反応をする。まさか。
自分はわりとめんどくさがりだけど、姉さんもそうだと思う。育った環境によるのだろうか。いや?遺伝か?そんなことを話しているうちに駅へ。家から駅まで二十分、そこから電車で学校の最寄り駅まで十五分、そこからバスで十分。わりと遠いからか、中学生のころよりよく喋っている。双子といってもきっかけがないと話さないものだと思う。そんなきっかけが高校生活で生まれた一番不思議な事だった。
学校で一番話す友達は横手という男子学生。入学式のときに久保田が話しかけてきて、それ以来よく話す。お互いに話が合うしギャグも言える間柄になった。よく昼飯も一緒に食べたりしている。
「なあ東海」
「なんだ」
「部活何かはいるのか?」
「家が遠いしだるいなぁ、横手は?」
「俺は帰宅部だな、スポーツは中学でさんざんやって嫌になったし、だからといって文化部もこれっていうものが無いな」
「確かに」
明後日はこの学校のさまざまな部活が勧誘を行う日だという。何かに入るつもりはないけれど、それくらいは見ておこうか、とも思う。
放課後、駅に一人で向かい、電車に揺られて最寄りの駅に降り立つ。ここから二十分のいなか道を歩く。のほほんとしたところを歩いていると、前から見慣れない女の子が歩いてくる。
「ねえひので君」
「どうした」
「このへんで、鶴島悠って人を見なかった?」
「名前じゃわからないな、どんな人なんだ?」
「背が高くて、ちょっとひょろってしたタイプのイケメン」
「このあたりでイケメンを見たことは無いな」
「そっか。ありがとう、もし見かけたら教えてね」
そう言って走って行ってしまった。
背の高いイケメンねえ。・・・・・・そういやあの子供はいったい誰だ?面識はないけど俺の名前を知っているってことは、この町の子どもか?まず子供のことをわからないと仮にその尋ね人を見つけたとしても伝えられない。子供が駆けていった方へ向かってみたが見つけられなかった。
家に帰って、妹のはるかにその子供と男を知っているかと聞いたら知らないという。もしかして隣の小学校の子供が歩いてきたのだろうか。親が近くにいるようには見えなかった。
姉さんが帰って来た後に同じように聞いてみたけれど同じ返答だった。うーん、いったい何者なんだろうか。
翌日は学校が終わると早めの電車で帰って来た。が、その子供は見つからない。時間が普段より早いので遠回りしてみるか。
ずいぶんと久しぶりな道に入る。小学生のころは何度も通った道だけど、最近はまったく通ってなかった。ほとんど変わっていない道を春の中歩いていく。気分は良くなったけど、探している人はいない。結果的にただのお散歩を終えて家に帰ってくると、はるかの友達が来ているようで靴がいつもより多かった。
「やっほーひので君」
なんで、探してる人がこんなところにいるのでしょうか。うぐぅ。
「はるかの知り合いなのか」
「お兄ちゃんの知り合いじゃないの?」
「違う」
「私は知ってるよ」
「ほら」
その少女がいうには、俺が小さいときに会ったことがあるという。そんなわけないだろう。奴は俺やはるかよりもずっと年下に見える。俺が小さいときには生まれていないはず。
「まあそう思うよね、でも、私はね・・・・・・妖怪だから」
「妖怪?」
「そう、東洋の大妖怪、九尾の狐!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「信じてないね?」
「そりゃそうだろ、いきなり妖怪なんて言われたって。ドラキュラや狼男の仲間なのか?そんな風には見えないぞ」
「んー、まあ、そうだよね。それじゃ、今から化けて見せるよ、それなら妖怪って信じる?」
「それなら信じてやろう」
「何に化けるの?」
いつの間にかはるかは目を輝かせて狐を見ていた。化けたのが事実かはわからないが、催眠術でそう見せたとしてもかなりの実力者には違いないからただ者ではないかもしれない。
まず狐に化けた。これが本来の姿だという。しっぽが九本。九尾の狐とはこういうことか。次にイケメンの男に化けた。
「探してるのはこの人だから覚えていてね」
「わかった」
ケータイで写真に撮っておく。次にみかんに化けた。植物にも化けられるのか。
「みかんの実じゃなくて、木に化けたりは出来るのか?」
「出来るよ、外じゃないとやらないけど」
「すげえな」
これはガチで妖怪かもしれない。いいものを見たものだ。最後にベジータに化け、著作権的にやばくなったのでやめさせた。
「お茶、ありがとうね」
「ああ」
九尾の狐はそう言って、そして探している人の写真を何枚か置いて帰っていった。入れ替わりに姉さんが帰ってくる。
「ただいま、あの人だれ?」
「うーん、変な人」
「変な人?」
続きます。
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