2 / 6
ふるさとの花2
しおりを挟む
ふるさとの花2
八月二十一日。
昨日は八時半でみんな集まっているので昨日より早めに出る。教室の時計は八時十五分。それでも半分くらいの生徒が来てきた。よく考えた普段からこの時間に登校しているしラジオ体操とかで早く起きているはずなので楽勝なのかもしれない。これ以上早くすると自分の首を絞めるからやらないけど。小学生の宿題は順調に進んでいた。しっかりやればすぐ終わるんだよ、毎日やったら早く終わるんだから来年は真っ先に終わらせなさいと言う。本当はそれもよくないけど。
授業ではないので自由にしゃべっていいようにすると、自然と面倒見のいい生徒がグループを作って教え始めた。年の近いグループのなかで教えあうことはとてもいいことだ。ふと暇になってしまい、持ってきた本を読み始める。
「先生?」
百花の声で本を閉じる。これを教えて下さいと言われて見せられたのは数学。積分か。見覚えのある問題だから解ける・・・???解けない。しばらくやってないとここまで出来ないものか。むむむと粘っていると突然ほっぺにつんつんという感触。びっくりして女の子みたいな声を出してしまう。うぐぐ。ほっぺをつついたのは百花。にこにこしている彼女と目が合う。何か恥ずかしくなり目をそらす。そしてなんとかその問題を解ききった。
十時を過ぎて小学生はボールを持って外へ飛び出す。中学生も一人一人減っていき、村山と百花の二人が残った。何故か競い合っているような雰囲気をかんじて、そして村山が先に去ったら百花がしきりに話しかけてくる。
「ねぇ先生」
「先生って言われると何か恥ずかしいな」
僕は大学で先生になるための勉強をしているけど今顔なじみからそういわれるのは何か恥ずかしい。
「竜ちゃん」
「今、竜ちゃんって呼ばれるのもなぁ、竜也って呼んでよ」
「ずーっと昔から竜ちゃんだよ」
「そうか?竜也って呼んでなかったか?」
「そうかなぁ、それよりもうすぐお祭りだよ!今年のお祭りは行くの?」
「行くよ、百花は受験だけど行くのか?」
「行くよー」
「ふーん、まあ大丈夫か少しくらい」
昼食がまだだったので俺も百花も家に帰った。
回想 92.3
夕方、日は既に山の向こうに降りて薄い明るさを残している。学校前では多かった乗客も二人だけになって山道にかかる。無口な運転者は今日も黙々と仕事をこなしていた。
「あした卒業だね」
「そうだねぇ、三年って短いね、あっという間だよ」
「そうなんだ」
「百花だってあと一年しか無いんだよ」
「そうだね、もう半分きったんだもんね」
バスは山道にエンジンの音を響かせる。高校生の生活を十分満喫できただろうか。生まれ変わりでもしないかぎり二度と体験できない生活を。
つづきます。
八月二十一日。
昨日は八時半でみんな集まっているので昨日より早めに出る。教室の時計は八時十五分。それでも半分くらいの生徒が来てきた。よく考えた普段からこの時間に登校しているしラジオ体操とかで早く起きているはずなので楽勝なのかもしれない。これ以上早くすると自分の首を絞めるからやらないけど。小学生の宿題は順調に進んでいた。しっかりやればすぐ終わるんだよ、毎日やったら早く終わるんだから来年は真っ先に終わらせなさいと言う。本当はそれもよくないけど。
授業ではないので自由にしゃべっていいようにすると、自然と面倒見のいい生徒がグループを作って教え始めた。年の近いグループのなかで教えあうことはとてもいいことだ。ふと暇になってしまい、持ってきた本を読み始める。
「先生?」
百花の声で本を閉じる。これを教えて下さいと言われて見せられたのは数学。積分か。見覚えのある問題だから解ける・・・???解けない。しばらくやってないとここまで出来ないものか。むむむと粘っていると突然ほっぺにつんつんという感触。びっくりして女の子みたいな声を出してしまう。うぐぐ。ほっぺをつついたのは百花。にこにこしている彼女と目が合う。何か恥ずかしくなり目をそらす。そしてなんとかその問題を解ききった。
十時を過ぎて小学生はボールを持って外へ飛び出す。中学生も一人一人減っていき、村山と百花の二人が残った。何故か競い合っているような雰囲気をかんじて、そして村山が先に去ったら百花がしきりに話しかけてくる。
「ねぇ先生」
「先生って言われると何か恥ずかしいな」
僕は大学で先生になるための勉強をしているけど今顔なじみからそういわれるのは何か恥ずかしい。
「竜ちゃん」
「今、竜ちゃんって呼ばれるのもなぁ、竜也って呼んでよ」
「ずーっと昔から竜ちゃんだよ」
「そうか?竜也って呼んでなかったか?」
「そうかなぁ、それよりもうすぐお祭りだよ!今年のお祭りは行くの?」
「行くよ、百花は受験だけど行くのか?」
「行くよー」
「ふーん、まあ大丈夫か少しくらい」
昼食がまだだったので俺も百花も家に帰った。
回想 92.3
夕方、日は既に山の向こうに降りて薄い明るさを残している。学校前では多かった乗客も二人だけになって山道にかかる。無口な運転者は今日も黙々と仕事をこなしていた。
「あした卒業だね」
「そうだねぇ、三年って短いね、あっという間だよ」
「そうなんだ」
「百花だってあと一年しか無いんだよ」
「そうだね、もう半分きったんだもんね」
バスは山道にエンジンの音を響かせる。高校生の生活を十分満喫できただろうか。生まれ変わりでもしないかぎり二度と体験できない生活を。
つづきます。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
〖完結〗幼馴染みの王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。
藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。
何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。
同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。
もうやめる。
カイン様との婚約は解消する。
でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。
愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません!
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる