天端怪奇伝

湯殿たもと

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天端怪奇伝EX2

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天端怪奇伝ex2


閻魔さまの場合

「閻魔さま、手配番号8181877のものをつれてきました」

「よし、通せい」

「ははっ」

連れてこられたのは10台前半の少女。やけに暑そうな格好をしているが、地上は冬なんだろう。少女は怯えているように見えた。まあ仕方ない。

「この者はいったいどういうものなのだ」

「はっ、手配番号8181877番、明智いろは。本来は去年九月に天国に到着予定でしたが天使からの追跡を振り切り、今月中頃まで逃走を続けておりました」

「人生評価は何点だ」

「真面目十点、謙虚十点、親切十点、減点はありません」

「なるほど、だが逃走した以上天国に連れていくことは出来ないな。それなら明智いろは、お前には悪魔として働くことを命じる」

「はい、了解しました閻魔さま」

そして少女は悪魔たちに連れられて出ていった。

「閻魔さま」

「どした」

「天使から逃げた者に絶対に天国に行かなくて済む悪魔の仕事を与えるなんて流石ですね」

「どういうことだ、マニュアル通りだ」

「マニュアルを作ったのは閻魔さまではないですか」

「ははは、そうだな、そういうことか、そうかもしれんなははは」


杵築静香の場合

最近新入りが入ってきた。まだ子供、まあ悪魔は歳をとらないし、見た目を変化させられる術も習得する人もいるし、あまり関係ないけど。

血の池監視課では血の池で溺れている人の救助にあたる。あまり溺れている人がいると後続がつかえたりお湯がうまく流れなかったりするので陸に引き戻す役割が必要なのだ。

新入りの彼女はまあ、非力で、仕事も遅いけど一生懸命だ。非力なのはまだ翼の使い方をマスターしていないからか。昔は自分もそうだった。懐かしい。

たまたま休日が彼女と被って、お話する機会があった。

「お休みの日はみなさん何をしているのですか?」

「温泉でくつろいだり、美味しいもの食べたり、あとスキーが最近流行ってるね」 

「地獄にも雪が降るのですか?」

「雪?ああそれは別の世界だよ、ニセコとかトマムとか白馬とかね」

「ひにゃ!?てことは生きてた時の世界に戻れるのですか?」

「知らなかったんだ」

「あ、あの、特別な申請とかいるんですか!?」

「いらないよ、行きたい場所とかあるんだ。次の仕事の時間にに間に合えば大丈夫だよ」

「それじゃ私、失礼します!会いたいひとがいるんです!」

「え?そう、いってらっしゃい」

「行ってきま~す」

よろよろと飛び立って出掛けていった。家族かな、友達かな、先生かな。会いたい人は。

・・・私も会いに行ったっけ。こうやって。今はもうみんな居なくなっちゃったから会いに行くことは無くなったけど。懐かしいなぁ・・・また一度会いたいなぁ・・・


久保田義重の場合

しげくん。そんな声が聞こえるような気がする。・・・そんなはずはないんだろうな。いろははもう、帰ってこないんだよな。いろはの母さんの所にすらいないっていうんだ。

しげくーん!

こうやって幻聴が聞こえるんだ。いや、幻聴じゃないかもしれない。俺が無意識にいろはを産み出しているのだ。それを幻聴っていうのか。

会いたかったよ~!!!!!

幻聴ってうるさいくらいにも聞こえるのか。キーンって風切り音がしてきたぞ。

あああ止まれない~~~!!!止めてーしげくーん!

「ぐえっ」

思いっきり後ろから激突される。前に派手にこける。

「いたたたた・・・」

聞き覚えのある声。後ろを振り向いている。

・・・。黒い。角生えてる。羽根つき。

「妙にそっくりだが、羽生えてたか」

「しげくーん!会いたかったよっ」

せっかく起き上がったのに抱きつかれてそのまま地面に叩きつけられる。

「やっぱりいろはか」

「しげくん、ただいまっ」

「おかえり」

いろはは抱きついたまま泣き出した。ひどく何言ってるのか半分わからないような状態だけど、言いたいことは伝わる。それはずっと前からそうだ。

・・・おかえり、いろは。


おしまい。
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