天端怪奇伝

湯殿たもと

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天端怪奇伝14

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天端怪奇伝14


木曜日。今日は雪。どんよりした天気の下を学校へ歩く。少しずつ積もり始めて、畑とか人の立ち入らない場所では根雪になりつつある。いつもの場所にいろは。

「よっいろは」

「しげ君おはよー!」

「寒くないのか?」

「平気だよ。この制服結構暖かいんだよ」

「そうか。まあ車探すのもいいけど風邪引くなよ」

「気を付けるよ、でも最近車ことはどうでもいいかなって思って来たんだ。一年も見つからないし、車を買い換えたかも知れないからね」

「そうだな。車にこだわる人は結構いるからな。それに壊れるかも知れないし」

時間なので急ぐ。しかし今日いろはが言っていたこと。車を探さなくても良い。これは小栗の親戚から聞いた「車を探すな」というアドバイスに一致するものだったのだ。これは助かった。これですこしでもいろはと一緒に居られる。

が、学校につくと小栗が気になることをいう。

「ひき逃げの犯人が捕まったんだって」

「なにっ!?」

「それで、久保田くん警察から呼ばれてるんだよ、目撃者だからくわしく事情を聞きたいんだって」

「なにっ俺のこと知られているのか!?」

「何処からか情報が漏れちゃったらしいんだ」

めんどくさいなぁ、ったく。しかし犯人はどんな奴だろうか。

放課後、警察署に向かう。悪いことはしていないが緊張する。警察は悪い人たちではないのだが、なんとなく行きたくない。銃を持っている勢力のアジトだからな。・・・大袈裟か。

「え、目撃してない?どういうことかね」

「風の噂で聞いたんですよ」

虚偽答弁しておく。まあ幽霊に聞いたと言うよりまともだろうが。

「しかし風の噂でここまでナンバーがわかるというのかね」

俺が悪い訳じゃないのに責められている。やっぱり嫌いだ。

「風の噂ですよ、それ以外何があるというんですか」

「それはこちらが聞いているんですよ」 

「だから風の噂なんですてば」

ーったく。まともに話が出来ない。用がすべて終わり帰ろうとするとギリギリお姉さんと言えるくらい(失礼)の女性に話しかけられる。

「久保田さんですか?」

「はいっ?」

「よかった、あなたが久保田さんですね」

「ええ、久保田ですが、あなたは・・・?」

「いろはの母です」

「えっ・・・!?」


「久保田さんのことはいろはからよく聞いてますよ」

「・・・いろはから」

「・・・知っているんですよね 、あの事故のこと」

「ええ。はい。・・・それでいろはから聞いたと言うのは」

「不思議なことなんですけど・・・いろははいるんです。あの事故があって、それでもいろはは帰って来たんですよ」

「・・・」

「信じてもらえますか?・・・本当ならいろは・・・でもいろはは私のそばにいるんです」

「信じますよ。僕のそばにもいるんですから」

暗くなった町まで車で送ってもらった。助かる。お礼を言って車から降りるとそこにいろはがいてびっくり。

「いろは?何故ここにいるんだ」

「それはボクのセリフだよっ!お母さんの車に乗ってきたんだから!」

「母さんにのせてもらったんだよ」

「いろは、私が乗るように誘ったんですよ」

「お母さんが?」

「それじゃ帰ります。お母さんありがとうございます」

「いえいえ、これからもいろはをよろしくお願いします」

「こちらこそ娘さんを・・・」

「わっ!しげ君!?お母さん!?」

暗い中、いろはは照れて紅くなっていた。


続きます。
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