天端怪奇伝

湯殿たもと

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天端怪奇伝3

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きょろきょろ。きょろきょろ。

随分と道をわたる前に注意している中学生がいる。・・・いや、いくらなんでもそこ、渡れるだろ。なかなか朝は停まってくれる車は少ないが、しかしこの少女はなかなか渡ろうとしない。

最近はちょっと少女に話しかけるだけで不審者として通報されてしまう世の中らしい。まあ、誘拐事件とかも多いし仕方ないのだがやり過ぎではあると思う。この調子じゃ街中でお爺さんが倒れていても誰も救急車を呼ばないとか、まずいことになりそう。という訳で少女を無視し通り抜けようとしたところ、

「そこのお兄さん!」

「俺か」

「わっ、そうだよ、ちょっといい?」

話しかけておきながら少女は少し驚き、そして尋ねてきた。話の筋が見えないので続けさせる。

「ボク、車を探してるんだよ」

「車?フェラーリでも探してるのか」

ちょっとうぐぅっぽいと思った。昨日も東方旧作っぽかったし。気のせいか。

「このナンバーの車だよ」

「北国 x お xxxx」

「この車を探してね」

「何の用があって運転手探してるんだ?」

「お礼がしたいんだよ」

「なるほどな、よし分かった、協力するぜ」

「いいの?ありがとう」

少女は笑顔でお礼を言う。ちょっとからかってみるか。

「俺が見つけたらお礼を俺にも分けてくれ」

「分ける?・・・うーん、それは出来ないかなぁ、ボクの考えてるお礼は分けたりできないものだから」

「じゃ、別のものをくれ」

「考えておくよ」

馬鹿な話をしてたら時間が無くなった。列車に飛び乗り急いで学校へ向かった。

で、テストが近いにも関わらずぐだぐだ過ごして放課後。家で書いた原稿を持って文芸部へ。ホントに辻の言うとおり、さくひんが脳みそにインプットされていたのだ。

「久保田やべぇ」

作品を見たときのかなめの反応はこんな感じだった。俺も書いてみてヤバイと思った。辻の文才恐るべし。まあ友達が書いたものだと適当に言っておくことにする。

「これはこの辺りの民話だね、七夕の」

「そうなのか?」

「でも民話が元だけど、それをアレンジして作ったところが凄いなぁ、文才もあるし。その友達に会ってみたいな」

不来方がそう誉める。会うのは難しそうなので適当にごまかしておく。

「ところでそこの方は」

「演劇部次期部長の相馬曜子さん」

「はじめまして」

「はじめまして相馬さん」

こんな感じで自己紹介を始めることになった。まあ文芸部の連中はお互い知り合ってるわけだから外の人に挨拶するだけだが。

「もう一人の方は何ていうんだ?」

黒髪の日本的美人が端のほうに座っているのでその人にも名前を聞く。

「ん?」

「ほぇ?」

「・・・」

「?」

「えっ?」

「え」

・・・・・・?

何故か皆「?」という反応をしている。こっちが?だ。そもそも俺はともかく黒髪の女子に失礼だろう。

「何で皆揃って無視するんだよ失礼だろ」

「久保田こそ何言ってるんだ、誰もいないぞ」

「そこにいるだろっ小栗の隣」

「・・・いるのかはわからないけど僕には見えないよ」

ちっ、ちょっと風でも浴びてこよう。腹がたったぞ。無言で廊下に出ていったとき、例の黒髪さんが追いかけてきた。ちょっと一緒についてきてほしいところがあるというのでついていく。そこは昨日の例の小部屋だった。辻が机に突っ伏して寝ている。

「私は夏井かえでです」

「久保田義重だ、よろしく」

黒髪の娘が名乗ったので名乗り返す。

「何かさっきはすまんな。良い仲間なんだけど今日は無視しやがって。機嫌悪かったんかな」

「私は、・・・幽霊ですから」

「・・・夏井さん?」

「ん?なっちゃん来てたの」

「知り合いかよ」

「うん、むしろなっちゃんと久保田が知り合いなのがビックリだよ」

「で、夏井さんは幽霊なのか?まじで」

「ま、そんなとこ」

「・・・」

俺が少し、おかしくなってるんじゃないかと思う。いろいろ見えてるし。夏井さんが他の人に見えないのはさっきの反応ではっきり分かったし、・・・俺、どうなるんだ?


続きます。
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