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るしん

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氷神白魔法剣士誕生

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 《これで残る試練はあと二つ。山の頂に居る氷竜に逢う事、彼も神様だから闘うのかそうでないのかは私にもわからないわ。その後の最終試練はシヴァ様ね》

ここまできた、幼い頃から僕の中にあった冷たいものは慈愛の氷属性となって身を守り、もう背中の荷物はない状態でこれから山を登る。

気を研ぎ澄ますと、今まで銀色の閃光だったものが透きとおった白銀の閃光を放っていた。

 優しく彼女をエスコートし抱きかかえて一気に頂上まで跳んだ。

そっとミレイ様を降ろすと彼女も今まで見せたことの無い表情で僕を見ている。

《なになに?恥ずかしいからそんなに見ないで・・・》

恐ろしいミレイ様から、女の子のミレイ様になっていた。

 体長十メートルにもなろうか、氷の息を吐きながら眠っている氷竜に剣と鎧を外して僕は近づき、話しかけた。

『貴女がこの森を守ってくださっている氷竜様ですね、ミライと申します。私には貴女もミレイ様も何らかの呪いによって姿を変えられてしまっている様に感じます。お二人は姉妹ですね、お話し戴けませんでしょうか』

氷竜は静かにその大きな瞳を開け、穏やかに話し始めた。

[そこまでわかるのなら君と闘うことは無いでしょう、それよりもなぜ私が女だとわかったの?]

『年齢を存じ上げませんので失礼をお許しください。母と同じ、優しく温かい慈愛を感じましたので女性でいらっしゃると思いました』

[優しいのね、ミレイが好きになるのも仕方ないわね。私の体の中には雷珠という呪いに満ちた珠が埋め込まれているの。ミレイの身体の中にもその欠片があるわ。だから私を殺せばミレイは女の子に戻ることも出来るし、貴方は雷の属性を手に入れる。こういう日が来るのを待っていました、さあ私の首を切り落としミレイを自由にしてあげてください]

《そんなのダメです!一緒に元に戻ろうって約束したじゃないですか!姉さんが死ぬのなら私も死にます、それより元に戻れなくてもいいから姉さんには生きていて欲しいのです》

 ミレイ様の瞳から大粒の涙がポロポロと溺れたのを見て、僕は鎧と剣を取りに戻って装着し、気を最大限高めた。

《待ってミライ!姉さんを殺さないで!私達こんな姿だけど構わないから、お願いだから・・・姉さんを・・・殺さないでください》

僕は彼女の美しい涙をそっと拭い、

『ミレイ様、僕は父上と母上から本当の強さと優しさ、何より今まで知らなかったぬくもりを貰いました。その上で今お姉さまが望んでいらっしゃることが僕にはハッキリと判りますし、それを白銀の力を持って彼女の為に実行します』

『お願い・・・殺さないで・・・』

 僕は抜刀の型に入り、氷の息を吐きながら自らの心を刃に変えた。

『霆籠の斬(改)・・・氷風水刃の最上級剣技』

白銀の透明な氷の刃を化した斬撃が氷竜の身体を通り抜けた。

僕が斬ったのは彼女ではなく、彼女に中にある雷珠だけを斬ったのだ。

大切なものを守りたいという気持ちがこの四属性技を作り出した。

 氷竜は小さな光の粒となって天に昇っていき、一人の美しい女性がそこに立っていた。

[ミライさんありがとう、まさかこんな日が来るなんて。なんとお礼を申し上げたらいいのかしら、図々しいけれどミレイもお願いしていいかしら]

『はい、喜んで』

僕は彼女の方を向き、歩を進めた。

[姉さんを救ってくれた人だもの、貴女の全てを預けなさい]

 ウサギの耳は両方下がり、豪鬼が全く感じられない。

『ミレイ様、御覚悟を』

《・・・はい》


僕は彼女の手を握り、彼女を抱きしめて口づけた。


美しい光に覆われ、お姉さんにそっくりな綺麗な女性が現れた、頬を赤く染めて俯いている。

『申し訳ありませんミレイ様、他にも方法はあったのですが、貴女の口づけを戴けることが僕の目標でもあり、夢でした。どうかお許しください』

《あの・・・はい、ありがとうございます・・・。もうミレイって呼び捨てにしてくださいませ、ミライ様》

『じゃあせめてミレイさんと呼ばせてください。お姉様、もしよろしければお名前を伺ってもよろしいでしょうか?』

[恩人に大変失礼いたしました。私の名前はルイと申します、妹共々救ってくださってありがとうございました。もっとも妹の方はミライさんに完全に心を奪われておりますが]

 あの恐ろしかったミレイさんが一言も反論しない、ただモジモジしている可愛らしい女の子だ。

『竜になられていたという事はお姉様も凄まじい魔法力をお持ちの事と存じます、雷属性を雷珠という形で体内に封印されていたのですから。もしご存じでいらっしゃったら教えて戴きたい事がございます、よろしいでしょうか?』

[ええ、何なりと。恩人の貴方に断るつもりは毛頭ございませぬ]

『現在下の世界では「オメガ」と名乗る者の手によって、村や町は呪いを受け、人々は夜にしか人の姿を成せないひどい状態にあります。空は暗く覆われ昼か夜かもわからず、私の友人達が街を元に戻したい一心で私の帰りを待っています。この件について知っている事をお聞かせ頂けたら幸いです』


[わかりました。「オメガ」とは万物の母と呼ばれるアースの墓を荒らし、闇の錬金によって人間界からも落ちぶれた愚か者の事ですね。彼は復讐と称して人々から幸福を奪い自らのエネルギーに変え、幻術を使って聖獣達を操っています。とはいえその膨れあがった邪悪な魔力はシヴァ様お一人でも抑えるのは難しい状況にあるため、貴方が来るのを静かに待っておられました。帰りを待ってくれている

コジロウは「太陽神サンの意志」を、

コタロウは「月光神ムーンの意志」を、

トーエは「母なるアースの癒しの意志」を

受け継いだものです。あなたの左手にも紋章が浮かび上がっていると思いますが、この六角星の力を集結させる事が出来たならオメガを倒し、皆を幻術から解放し、世界を元に戻す事はさほど難しくないでしょう。オメガが残している紋章は五角形ですね、即ち、五人の聖なる力が集結すればオメガの闇を上回るという事です。問題は邪悪そのものと言われるムーンの汚れた部分。人間を信じ騙されたムーンは悲観に暮れ、洞窟に籠ってしまいました。本来月というのは闇の中で照らすもの、光と闇を併せ持つ存在なのです。光の部分はコタロウに継がれ、闇の部分は邪神ムーンとして今はオメガを操っています。オメガを倒す事で一時的に世界に平和は戻りますが、本当の闘いはそこからです。邪神ムーンは聖獣の持つ十属性全てを使います、貴方の氷もその一つです。それに星の力である十二属性を加えなければムーンから世界を救う、そして同時に英雄ムーンを救うことは出来ません。私とミレイの呪いは邪神ムーンから受けたものです。さあ、最後の試練である氷神シヴァ様に逢いにお行きなさい]

『ありがとうございます。ということは、コジロウ・コタロウ・トーエが太陽・月・地球ということですね。私とあと二人は誰で何の役割を果たすのでしょうか』

[宇宙の理は太陽・月・地球と夏の第三角形と言われる星で出来ています。即ち

「デネブ・アルタイル・ベガ」

です。コジロウさんは勇者(太陽)・コタロウさんも勇者(月光)・トーエさんは白魔法召喚師(地球)・ミライさんは魔法剣士(デネブ)・もう一人は本来私なのだけれど、ずっと封印してきたので皆さんに同行できるだけの力がありません。よってミレイをもう一人の魔法剣士(アルタイル)として同行させます、これに伴い私の全エネルギーを彼女に渡します]

 そういうとルイはミレイに近づき、頭にそっと手を置いて優しく言った。

[朽ちて行く私を良しとせず、貴女に全てを託す姉を許してくれる?]

《わかりました、姉さん。ずっと一緒に居て下さるのですね》

[ええ、もちろんです。もう離れる事はありません、ずっと一緒です]

 ルイさんの身体が眩く光り輝いたかと思うと、ミレイさんの左手に紋章となって現れ、白銀のフルーレと氷の鎧に姿を変えた。

そして彼女もまた僕と同じ白銀の閃光と化したのだ。

僕の紋章は右手だから、二人で一つという事だ。

今まで以上に闘気を発しながらも銀髪の美少女は僕と目が合うと恥ずかしそうに頬を染めて、

《あらためまして、ミレイです!よろしくお願いします!》

とぺこりと頭を下げた。

『ミレイさん、綺麗だよ』

そう言うと、

《ちょ、やだ・・・。恥ずかしいからさっきの事は忘れてください・・・》

(さっきの事?ああ、口づけの事か)

『僕にとってはすごく大切で、これからも欲しいと思う。だから忘れない』

《えー、もう!ミライさんのいじわる!でも・・・ありがとう》

二人して晴れやかな表情で、晴れてデネブとアルタイルとして、氷神シヴァに逢いに行く事になった。

 彼女と二人、改めてあの時追い出された氷扉の前に立つと手の甲の紋章に反応してゆっくりと鍵が開き、扉が開いた。

自身の身体がまるでサファイアの様な透き通った輝きを放ち、神々しくもあり慈愛に満ち溢れている氷神シヴァがそこにはいた。


【汝は優しく強くなった、白銀の魔法騎士の誕生を嬉しく思う。ミライ・ミレイよ、その手に宿る紋章は聖騎士の証、これからも慈愛溢れる騎士であるよう願う】


《恐れながらお伺いいたします、ミライ様はその実績から「聖騎士として十分な素質を兼ね備えていらっしゃる」と、ずっと一緒に居て感じました。ですが私は姉さんから魔力を託されたものの、彼ほどの力はございません。私では足手まといになってしまうのではないかと怖いのです》

ミレイは小刻みに震えながらシヴァに進言した。

 それに対しシヴァは青く透き通る槍を作り出し、


【ミレイよ、汝に問う。汝のミライに対する想いは本物か?それが本物であれば資格あり、偽物であれば聖騎士の資格はない】


そう言うと僕に向かってその槍を投げた。余りの速さに抜刀が追い付かない、避ける事も間に合わない、僕は氷神の前に一瞬で死を覚悟した。

しかし槍は貫くことなく、僕の前で止まった。

『ミレイ、なんで僕を庇った!やっと人間の姿に戻れたのに・・・』

目の前で僕の代わりにシヴァの槍によって、串刺しになっているミレイが息も絶え絶えに立っていた。

《ミライ様よかった、貴方は生きて下さい。必要な人ですから》

僕はミレイを横たわらせ、優しく抱きしめて言った。


『君のいない世の中なんて僕にはもう考え得られないんだよ。氷神シヴァよ、汝に心があるのならミレイの傷を癒してくれ!』


《ミライ様、いいのです。私は貴方の内なる力を解放するお手伝いが出来て嬉しゅうございました。お供できなくてごめんなさい、大好きです・・・》

腕の中で僕の頬に伸びていた彼女の手が、力なくポトリと地面に落ちた。

 僕は嗚咽と共に溢れ出る涙をこらえきれなかった、誰かの為にこんなに泣いたのは生まれて初めてかもしれない。

と同時にたとえ相手が神であろうとも僕は許す事が出来ない感情で激高していた。


『槍は貴女の念で操作できたはず、なぜ彼女を貫いた?氷神シヴァよ、僕はたとえ神殺しと言われようとも貴女を許すことは出来ない』


ミレイを部屋にある氷の台座にそっと置き、僕は白銀の閃光の中に雷を纏ってシヴァの前に立った。


【たかが人間一人の為に、聖騎士とも在ろう者が神と対峙するというのか、愚かな】


『一つ訊かせてくれ氷神シヴァ、もし己の命と引き換えに彼女を生き返らせる事が出来るのならば、私は喜んでこの身を貴女に差し出すだろう。元はといえばこの森で姉と共に貴女に救ってもらった命だ。大切にしなければならないと思うし、僕を必要と待ってくれている彼らの元に帰らなければならないとも思う。しかし彼女を失った今、私には白銀の閃光を纏う資格がない、なぜならミレイは私の全てなのだから。彼女は私に愛情と優しさ、そして温もりを教えてくれた。彼女亡き今の私は、貴女と闘う勇気がないのだ。情けない奴だと笑ってくれても構わない。それでも彼女には、ミレイには生きていてほしいのだ』


僕の身体から閃光は消え、力なく剣を落とし、血の涙で染まった顔をシヴァに向けた。


【今の言葉、忘れる出ないぞミレイ】


 彼女のその言葉に驚いて振り向くと、刺さった槍はおろか傷一つないミレイが目に涙をいっぱい浮かべて台座に座っていた。

《ありがとうミライ。貴方がシヴァ様に問いかけた瞬間に、


【この男のそなたに対する誠の声を聞け。それが最後の試練である】


って、彼女は私を生き返らせてくれたの。そして私は貴方の誠の声を聞いた。私、今なら一緒に戦う自信があります。だって私にとってミライは全てですもの》

台座から静かに降りた彼女は白銀の閃光となり、それに雷を纏って僕に紋章のついている手を差し出し、言った。

《一緒に戦って下さい、それが神であろうとも》

 心が震えた。

(愛情とはこんなに尊く、強いものなのか)

僕は彼女の手を握ると白銀ではなく、白金の閃光と纏っていた。

彼女は微笑みながら僕に歩み寄り、少し背伸びをして唇を預けたその瞬間彼女もまた白銀から白金の閃光を纏った。

 改めて二人でシヴァの正面に立ち、今度は迷いなく互いの剣を構えて気を最大に高めた。


【慈愛に満ちた聖騎士達よ、汝らの覚悟、確かに受け取った。この氷神の力、主らの片腕として連れて行くがよい】


そう言ったかと思うと氷神は僕の右腕とミレイの左腕にその身を宿した。

互いに紋章のある腕が凄まじい氷の力を秘めている事を感じている。


【互いに手を取り、剣を振るってみるがよい】


僕達は固く互いの手を握り、白金の聖騎士として剣を振り下ろした。


【凍神の斬・・・氷風水刃雷の神技】


 氷神シヴァが共に闘ってくれている、最強の氷属性神技は二人の力を合わせる事で完成した。


【山を降り、待つ者の元に帰るがよい】


こうして僕の内なる力を引き出す修行は、ミレイという素敵な相方が仲間になる事で氷神の力を手にし、終了となった。
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