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11階層の村に1泊し下層を目指す。

どう言う訳か自然型の迷宮は昼と夜があり、太陽も無いのに日中は太陽の下に居るかのように明るく、夜は月明かり程度の明るさを保ちつつ暗くなる。
宿屋のオッサンの話では迷宮の外と同じサイクルで昼夜が訪れているとの事で恐らく何らかの力が働き、迷宮内であっても昼と夜があるみたいだ。

因みに昨夜村の酒場にルイーズさんが情報を仕入れようと飲みに行ったが、この村を拠点とする冒険者は10階層の階層主を専門に狙う冒険者と12階層から15階層までの間で狩りや探索をする冒険者のみで特に有意義な情報は無かったらしい。
しかも酒が不味かったらしく、遅くに帰って来てアイテムBOXにあるまともな酒を出せと叩き起こされた…。
まあダンジョンの中、しかも上層部の村という事もあり滞在してる冒険者もランクが低く金回りが悪いようで地上から運ばれてくる良い酒はもっと下の階層にある町などに運ばれ、村で提供される酒と言えば村人が芋のような作物を元に作った酒でお世辞にも美味しいと言える代物では無かったようだ…。
とは言え、この村で収穫された作物も迷宮の外で販売せず、下層の町に運ばれ迷宮内での食料供給の役割を担っているらしい。

運搬が大変なんじゃないかと思ってたらどうやらアイテムバッグを持ち運搬を専門にしている冒険者グループが何組も居るらしく物流網は確立されているみたいだ。
自分的には、アイテムバッグを持ってるなら運搬を専門にしなくても迷宮探索で稼げばいいのにと思ったけど、多少の実力があり引退を考えだした冒険者が安全に稼ぐ為の手段としてるらしい。
う~ん、色んな考え方があるな…。
運搬でそこそこ稼いで引退をする時に、運搬で稼ごうとする冒険者へアイテムバッグを売り纏まった金を得て余生を過ごす。
考え方次第では効率的だ…。

そんな事を思いながらも迷宮を進んで行くと、ゴブリン以外にもオークがまれに姿を現しだす。
ただ上層部の魔物は冒険者に狩られまくっているせいか、殆どが受肉しておらず倒すと魔石を残して消滅してしまった。
サクサクと進み16階層にある村に着くまでに受肉していたオークは2体だけだったし…。

それにしても村が多いな。
11階層の次は16階層に村って、間隔が短いような気がする。
いや、比較的安全な自然型の階層があるからか?

そう思いながらも宿を取り1泊する。
夜、全員で今後の予定を話合ったが、情報では29階層にある町までは魔物も比較的弱いとの事なので、極力戦闘を避けスピード重視で進むことにした。
なんだかんだで中層と呼ばれ始める35階層ぐらいまでは冒険者がかなり居るから気合入れて挑んでもあまり意味がないとの結論に至ったんだけど、村を通り越して疲労が溜まったら野営って、そこまで急いで向かう必要あるのかな…。

下層へ進む事3日、29階層の町に到着した。
予測では地図もあるし最短ルートで進む為2日ぐらいで到着するだろうと予想していたんだけど、20階層を過ぎたあたりからギルドで購入した地図が正確では無くなってきて、地図通り進んだら行き止まりだっなどと言う事などがあった。
現れた魔物や魔獣に関しては、大森林などでも見た事の無い虫系の魔物が多く、手強くは無いけど斬りたくないと言う理由で攻撃を躊躇し時間がかかった事も予定通り進めなかった原因だと思う。
いや、だって虫…、カマキリや蛾のような魔物ならまだしも、巨大芋虫とかダンゴムシ、果てにはGのようにカサカサと動く黒い奴なんか斬りたくないし、斬ると飛び散る虫汁を必死に回避するのに必死で効率よく倒せなかったんだよね…。

不思議な事に受肉してない魔物なのに飛び散ってかかった虫汁だけは消滅しないし、ベトベトで冒険者の戦意を削ぐ最悪のトラップだ…。
おかげで魔闘技を使い芋虫を殴り倒したリーズが虫汁をガッツリ浴びて戦意喪失したし。
水魔法と火魔法を組み合わせて温水を作り虫汁を洗い流してあげたけど、23階層で川を見つけたら速攻で水浴びして服を洗濯してたし。
うん、虫型の魔物が現れた時、リーズが真っ先に攻撃して虫汁を浴びた事で虫型の魔物の怖さが良く分かった。
その尊い犠牲のおかげで他の3人は虫汁浴びずに済んだし、良しとしよう。

そして29階層、今まで村があった階層は自然型だったのに、町は洞窟型の階層に存在していた。
元から広い空間があったのか、誰かが迷宮内を掘って広い空間を確保したのか、狭い通路を抜けるとそこには広い空間があり、3メートル程の石壁に囲まれた町だ。

「これって元々この場所が広い空間だったとかで街が出来たのか?」
「恐らく人の手で拡張したんだと思うわ、29階層を歩いてて気が付いたけど、恐らくこの階層からは鉄が採れるのよ」

「鉄? じゃあここは採掘して広い空間が出来たから町が出来た的な?」
「恐らく昔は29階層の中でもこの場所から鉄が多く産出されたんでしょうね。 そして継続して採掘する為に必要な拠点が出来、町になったってとこかしら」

そう言われて見ると、街を囲む石壁は綺麗に加工された石ではなく様々な形の石を積み上げ、隙間に細かい石を詰め込んである。
採掘で出た石を使って町を囲む壁を作ったってところか~。

「それにしても普通に魔物や魔獣が現れる迷宮で町を作り石壁で覆っても街の中に魔物が発生したら意味無くない?」
「あ~、カツヒコはその辺の事知らないんだな…」
至極まっとうな疑問を口にしたつもりなのにルイーズさんがそんな事も知らないんか! と言う風な顔で説明をしてくれた。

ダンジョンまたは迷宮とも呼ばれる場所に居る魔物や魔獣は2種類居て、1つは外から迷宮に入り住み着いたもの、もう1つは迷宮の魔力から産まれたもの、この2種類との事だ。
そして迷宮の魔力により産み出された魔物や魔獣は基本的に迷宮の壁から突然でてくるらしい。

「という事は、迷宮の壁から離れた所に町を囲む壁を作れば町の中に突然魔物や魔獣が現れる事は無いと…」
「そう言う事だな。 稀に天井から湧き出る迷宮もあると聞いた事があるが、大体が飛行型の魔物や魔獣って話を聞いた事があるけどな」

天井からは嫌だな…。
まあ飛行型って事だから良いけど、虫型が天井から湧き出て降って来るとか想像したくない…。
それにしても、いくら鉄が採れるからって町まで作って住み着いてしまうとは…、人間って意外と逞しい。

そう思いながらも町に足を踏み入れる。
どうやら迷宮内の町への出入りは冒険者証とかを見せる必要もなく、人が2人並んで通れる程度の重厚な鉄でできた門の前に居る衛兵に一声かければ入れるみたいだ。
まあ迷宮内だし当然と言えば当然か。
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