上 下
239 / 252

今後の方針

しおりを挟む
312日目

昨日は首都クルセルの地下に閉じ込められていた人達に食料や生活用品の引き渡し、そして戸籍の作成などに追われ、ひと段落ついた頃には夜になり、フォルクやロゼフ、そして自称大店の商家の主ロファン、自称顔役のバリイなどと今後について話し合いをする予定がずれ込んだ為、今朝に話し合いの場が持たれる事となりました。

王城の一室に面々が集まり話し合いを開始しようかと思った時、オダ帝国軍の動きを偵察しているゴブリンよりノンザイル王国軍とオダ帝国軍の戦闘が始まったとの知らせが届きます。

しよう戦端が開かれたとの報告に会議を一旦後日にしようかと思いましたが他国の争いごとよりも目の前にある自分の管理する地域の今後を優先したほうが良さそうなので、ゴブリン達には詳細に戦闘の様子を偵察し報告するよう指示を出し会議を開始します。

「フォルク子爵をはじめロファンさん、バリィさん、朝から来ていただきありがとうございます。 早速ですが、現状の報告をするので、今後の事について話合いたいと思います」

そう口火を切り、ネレースから聞いた、王国だった頃のクルセルが滅びてから現在までの歴史、クルセル領の現在の状況、そしてヌスターロス大陸に起きている事を伝えます。

参加した3人は自分達が結晶に閉じ込められていた間に起きた事、現在首都周辺の状況、領内に点在していた町や村などは朽ちていて大部分は森林となり、生き残りの子孫なのか集落が数個あるだけと人口は1000人程度と伝えられると一様に驚き、口を閉ざしてしまいます。

「マサト様、まず一番重要なのが食料なのですが、今ある食料で10万人以上いる住民をどの程度の期間やしなえますでしょうか?」

そうフォルクさんが口にすると、顔役のバリィさんが食料が無くなれば飢えが襲って来るので王都周辺の開拓をしてはと提案をしますが、生い茂った木々の伐採してから開墾となると時間がかかる事を伝えると確かにと言って考え込みます。

「まあ米と小麦に関してはいくらでも用意出来るので問題は生鮮野菜や肉などですけど、ヌスターロス大陸が後4~50日後に地球と融合されますから自分達の生まれた国、日本から輸入するしかないでしょう。 とは言え暫くは商家を介さず直接国と国の交易という形でおこない、住民の人にはそれぞれに見合った仕事をして貰うしかないですね」
「しかしそれではこちらからの出費がかさみ財政が傾くのでは? 何か輸出して利益を出さなければ滅びの先送りでは?」

そう商家の主であるロファンさんが口を開きますが、王宮に保管されていた財宝類のうち、只の宝石類や装飾品などで暫くは支払いをし、その後、日本政府に対し地下資源の採掘技術の供与対価に優先的に販売する条件で信託統治地域とし、嫌でも支援と開発をさせる方向で話を進める計画を伝えます。

信託統治地域…。 全員がなんだそれ? って顔をしましたが、国の状況にはよりますが、現在のクルセルの状況を鑑みて簡単に住民の福祉を推進し、将来の自治・独立に向けたサポートをすることが目的と伝えると、目を覚ます前までは最先端の国だった誇りからでしょうか顔を顰めますが、日本という国の政治体勢、外交姿勢などを伝え、そのまま属国化されることはないので利用できる国は利用して国としての体裁を整える事を第一目標とする事が目的と納得させます。

日本という国が断ったら? との質問もありましたが、自分が日本人である事、クルセルの領内には地下資源が多く眠っていて日本は資源に乏しい国の為、その資源が喉から手が出る程欲しがることを伝えるとその心配は薄れたようです。

まあ実際の所、国際問題とかあるからそう簡単にはいかないだろうけど、資源開発やインフラの整備の援助を引き出せれば多少日本に甘い汁を吸わせてもリターンは大きいし、反対に魔石を利用した魔道具技術の供与などこちらの交渉カードもあるので多少、外国を敵に回してもこちらの提案を呑むでしょう。
そんな予測の元、集まった面々と話を進めていきます。

まあ日本が資源開発、インフラ整備に日本人を派遣してくれれば魔物対策て自衛隊とかの派遣も必要だろうし魔物の間引きも出来て一石二鳥なんだけど。
とはいえネレースが銃火器類を消滅させたら支援や自衛隊派遣どころじゃないけど、流石に銃火器は消滅させんよね…。
核やミサイル類は良いとして個人使用の兵器は大丈夫でしょ。
うん、大丈夫だと信じたい。

話し合いは昼を過ぎまで続きましたが、まずは住民の職業に応じて仕事を与え、ゴブリンを護衛として王都周辺の木々を伐採し開墾を進める方向で一致します。

恐らく魔道具師や鍛冶師、服屋、飲食店など生活に必要な仕事はありますが、多くの人は仕事が無くなるのでそう言う人達を森林伐採や開墾作業に従事させ、日当を払い少しずつ首都内部でだけでも経済が回るようにして当座を凌ごう。
ゴブリンも護衛ついでに作業の手伝いをするからそれなりに作業は進むだろうし。

そんな事を考えていると、足元の方から振動のような感じがし、直後突き上げるような揺れが襲います。

「地震? 震度3か4ぐらいかな…」
そう言って会議参加者を見回すと、どうやら地震と言うものは初めての経験だったようで全員が驚いたような怯えたような顔をしています。

「今のは地震って言って地面が揺れる自然現象だからあの程度の揺れなら大丈夫だよ。 まあもっと揺れが大きいと被害が出るけど」

そう言て安心をさせようとしますが、あまり効果は無い感じです。
まあこればっかりは慣れてもらうしかないか…。

いち早く立ち直ったロゼフとフォルクさんに首都の人達を落ち着かせるよう指示をだして会議を解散する事にします。

とりあえず方向性は決まったし、会議参加者から住民に話を伝えてもらうから混乱は少なく済むでしょ。

そう思いながらも王城で自室とした見晴らしのいい部屋に戻り、偵察に出ているゴブリンから戦況報告を受ける事にします。

恐らく乱戦になってるんだろうな…。
この世界の戦争は剣や槍、そして弓に魔法だから、日本の戦国時代みたいなもんだから直ぐには決着つかないだろうけど、どちらかが優勢になってるだろうし。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

おおぅ、神よ……ここからってマジですか?

夢限
ファンタジー
 俺こと高良雄星は39歳の一見すると普通の日本人だったが、実際は違った。  人見知りやトラウマなどが原因で、友人も恋人もいない、孤独だった。  そんな俺は、突如病に倒れ死亡。  次に気が付いたときそこには神様がいた。  どうやら、異世界転生ができるらしい。  よーし、今度こそまっとうに生きてやるぞー。  ……なんて、思っていた時が、ありました。  なんで、奴隷スタートなんだよ。  最底辺過ぎる。  そんな俺の新たな人生が始まったわけだが、問題があった。  それは、新たな俺には名前がない。  そこで、知っている人に聞きに行ったり、復讐したり。  それから、旅に出て生涯の友と出会い、恩を返したりと。  まぁ、いろいろやってみようと思う。  これは、そんな俺の新たな人生の物語だ。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。 勇者としての役割、与えられた力。 クラスメイトに協力的なお姫様。 しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。 突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。 そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。 なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ! ──王城ごと。 王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された! そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。 何故元の世界に帰ってきてしまったのか? そして何故か使えない魔法。 どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。 それを他所に内心あわてている生徒が一人。 それこそが磯貝章だった。 「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」 目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。 幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。 もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。 そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。 当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。 日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。 「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」 ──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。 序章まで一挙公開。 翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。 序章 異世界転移【9/2〜】 一章 異世界クラセリア【9/3〜】 二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】 三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】 四章 新生活は異世界で【9/10〜】 五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】 六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】 七章 探索! 並行世界【9/19〜】 95部で第一部完とさせて貰ってます。 ※9/24日まで毎日投稿されます。 ※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。 おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。 勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。 ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

処理中です...