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308日目

昨日の間にオダ帝国の首都アズチに転移魔法のゲートで移動をし、その後はフォレスホースのラルに乗ってノンザイル王国内に足を踏み入れます。

途中、街道を外れ森の中に野営用の家をアイテムBOXから出して睡眠をとり、朝食後に再度ラルに乗ってオダ帝国軍を目指します。

途中、ラファの町を通過しましたが、オダ帝国の旗は立っていますが、守備兵は殆ど見受けられず、恐らく100人前後の兵しか居ない感じです。

う~ん、これは反乱が起きてもおかしくない状況だよな…。
せめて千人ぐらいは抑えに残しておかないと住民が暴動を起こしても抑えきれないだろうに。

そんな状態のラファの町をしり目に、街道を走り続けると、進軍を続けるオダ帝国軍の最後尾に追いつきます。

後方から単騎とは言え追いかけて来る自分に気が付いた兵士100人程が槍を構え臨戦態勢を取り、軍列の前方に伝令を走らせます。
手際が良いな…。
まあ戦いに来たわけでは無いし、とりあえ山下さん辺りを呼び出そうと槍を構える兵士に、日本人の武内が来たと山下さんに伝えるよう声をかけます。

声をかけられた兵士達は一様に驚いていますが、日本人と伝えたのが良かったのか、伝令が軍列の前方に走っていきます。

本当はここで輪乗りとかしてクルクル馬を回していたらかっこいいんだろうけど、フォレスホースのラルは堂々と胸を張り自信力を誇示するかのようにその場で微動だにせずにいます。
うん、まあ、普通の馬じゃないし、その辺の軍馬と同一視されたくないんだろうけど、ちょっと堂々とし過ぎじゃない?
一応、1対3万なんだけど…。

そんな事を思いながらしばらく待っていると、騎馬に乗った兵士がやってきて山下さんの所へ案内をしてくれるとの事なので、案内に従い、軍の前方へ進んでいきます。
客が来たと言っても行軍は止まらないんだ…。
それにしても行軍速度が少し早いような気がするけど、これは次の町へ急いでいると見ていいのかな?

そうオダ帝国軍の様子を伺いながら軍の前方に進むと、丁度真ん中辺りで馬に乗った山下さん達が居ます。

「これは武内さん、こんなところに来るなんてどうしたんですか?」
戦争中とも思えない気楽な恰好で馬に揺られる山下さんが笑いながら声をかけてきますのでストレートに疑問をぶつけてみます。

「山下さん、この戦争は何を狙ってるんですか? わざわざノンザイル王国軍と決戦を挑もうと敵軍の終結を待っているように見えますけど」
「あれ? 武内さん、何でそんな事知ってるんですか? 隠密行動をしている訳では無いですけど、自分達の行動を武内さんが知ってるのは驚きですね」

そう笑いながら肩を竦める山下さんですが、目が笑ってないので、恐らく何で知ってるんだ? そして何しに来たんだ? と言いたいのでしょう。

「まあ一応は間者を各地に放ってますからね、情報伝達さえ確立できれば軍の動きは簡単に分かりますよ。 それで、聞きたいのはわざわざ多くの血が流れる決戦をするのかですね、一気に首都まで攻め込んで制圧すれば流れる血は少ないはずでは?」
「そうですね、でもその場合だと、我々の方が流す血が多くなるじゃないですか。 疲弊してるとはいえ仮にも一国の首都、我々が首都に到着する前に籠城されたら攻め落とすのが面倒ですからね」

「じゃあ首都を陥落させるのは前提として決戦をすると?」
「そうですよ、ノンザイル王国軍を決戦で壊滅させて反抗する気力を削いで首都を占拠するつもりです」

「そんなうまく行きますか? 決戦となったらオダ帝国軍の兵も多数死傷者がでて首都攻略どころじゃないのでは?」
「ははは、確かに、その可能性もありますね、だけど一方的な勝利を収める可能性もあるじゃないですか。 まあ戦って見てですね」

そう言って何か誤魔化すかのように笑う山下さんですが、どうやら一方的に勝利を収める秘策でもあるかの口ぶりです。
その後、何か秘策でもあるのか遠回しに探りを入れましたが、はぐらかされ、明確な回答は得られません。

「それはそうと、日本政府が滅茶苦茶怒ってますけどどうするんですか? 今ならまだ血もさほど流れていないようですから外交交渉で領土割譲とかで終わらせません?」
「やっぱり日本政府は怒ってますか…。 まあ当然ですよね、平和主義とか言って平和ボケした国の人達ですから…。 それにしても傑作ですね、ほんの7~80年前まで兵士の命は紙切れ一枚って国の人間が、異世界の事も何も知らず口だけで戦争反対とか言ってるんですから。 それで武内さんがわざわざ戦争を止めに来たと?」

「まあ話して戦争が止まるなら話し合いをするけど、戦争をやめる気なんて無いでしょ? だったら話すだけ無駄だし、かといって強引にでも止める方法は無いしね」
「よく分かってるじゃないですか、自分はてっきり半分騙すような形で穀物を大量購入した件を持ち出して戦争をやめるように言って来るかと思ってましたけど」

若干おどけた風を装いながら話をする山下さんに若干イラっとしましたが、とりあえず目的はハッキリしたので後はどの様な戦いでノンザイル王国を圧倒するつもりなのかをゴブリン偵察させるしかなさそうです。

「じゃあ自分は帰るから、どうせ何を言っても聞かないだろうし、ただ日本政府はかなりお怒りだから日本に戻った際、相当文句言われると思っていた方がいいよ」
「そうですか、ご忠告ありがとうございます。 まあ地球との融合後、しばらくは日本には恐らく戻らずオダ帝国で過ごすことになるんで、私が戻った頃には忘れられてますよ」

山下さんは、ニヤリと笑いながら、もう話すことは無いですよね? と言わんばかりに前を向き馬を進めますので、自分も転移魔法のゲートを開きプレモーネに戻ります。

う~ん、一通り兵士を観察したけど、装備も普通に剣と槍、そして弓だけだったし、ノンザイル王国軍も同様の装備なら双方に被害が出ると思うんだけど、あの口ぶりからしたら何か隠し玉でもあるのか、それとも戦術で上回るつもりなのか?

とりあえず明日辺りには次の町に着くだろうから、もしかしたら小競り合い程度の戦闘があるかもしれないから偵察を密にさせておこう。

それにしてもあの自身は絶対に何か隠し玉がある感じだよな…。


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