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戦準備の完了と報告

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251日目

自分は昨日から出口の無い枡形虎口の制作を始めていますが、ハンゾウとサンダーウルフ達には砂漠に赴き魔物が襲撃をする際に偵察している魔物が居ないか調査を指示します。

大体500メートル四方でしょうか、夕方になる頃には高さ4メートル、幅5メートルほどの枡形虎口が完成します。

一方、防塁を守る兵士を指揮するダダルインさん達は本日あった4回の魔物の襲撃を撃退しつつ、監視の魔物が居ないかを調べていたようです。

結果はさておき、やはり本日も襲って来た魔物は50匹程の集団だったようで、戦闘自体は苦も無く魔物を殲滅出来たそうです。

まあ偵察にハンゾウとアルチ達サンダーウルフを向かわせてるし、ダダルインさん達には期待はしていなかったんだけどね。

そう思いながらも夜になり戻ってきたハンゾウやアルチ達の報告を聞きます。

予想通りと言うべきか報告ではやはり魔物が防塁に襲い掛かる際に遠くから奇形のオークが数匹監視をしていたとの事です。

「奇形のオーク?」
「はい、オークで間違えは無いのですが、角が生えていたり、体中鱗のようなもので覆われたオークでした」

「なにそれ、キモイ! ていうか進化した? それとも何か別の要因?」
「分かりませんが、鱗のようなもので覆われたオークは水を魔法で出していました、恐らく水辺に住む、言うなればリザードマンなどと掛け合わしたかのようでした」

う~ん、やっぱり絶対に普通じゃないよな…。
とりあえず、明日にでもダダルインさん達に報告してみるけど、魔物の掛け合わせなんて聞いた事無いもんな。

それとも…。
いや、流石にそれはないか、相当昔の代物なうえ魔物が使いこなせるとは思わないもんな。

ただの突然変異と信じよう…。


252日目

「まさか、マサト殿の言う通り昨日のうちに防塁が完成してしまうとはな…」

そう言って指揮所から新しく出来た枡形虎口のような防塁を眺めながらダダルインさんは感嘆の声を上げます。

「一応頑丈に作ったつもりなんで早々破壊はされないと思います。 とは言え高さは4メートルぐらいなので飛び越える魔物も居るかもしれませんからその辺は注意してください」
「うむ、その辺は注意をしておこう、 それとマサト殿の調べてくれた奇形のオークが偵察していたとの事、奇形のオークなど聞いたことも見た事も無いが、これでマサト殿の仮定どおり攻めやすい場所を探していたと見るべきだろうな」

「そうですね、後はどうやって中心に位置する門を襲わせて守りが手薄だと思いこませるかですが…」
「それについて、私に考えがある、今まで殲滅した魔物の死体を門の前に集めておいたら魔物が寄って来るのではないか? その上で門を破損させておいてあと少しで突破されそうに見せかければ次は一気に攻め込んで来ると思うのだが」

「まあ他に方法は思いつきませんし現時点では最善の方法ですよね、後は防塁の上から攻撃をする兵士の選抜と武器の用意ですが、防塁はかなり広いので選抜は必要ないかもしれませんが、魔法、弓、そして槍兵など効率よく配置して無駄なく殲滅しないと長引いて逃げられたら厄介ですからね」
「そうだな、その辺は、腕利きを中心に選抜しよう、明日には応援要請した冒険者も到着するだろうから配置については任せて貰って構わない」

そう言うダダルインさんに配置については任せて自分はゾルス達ゴブリン軍団の動きを説明します。
まあ内容は単純で門を突破して枡形虎口に入った魔物の後方から襲い掛かる感じです。

「門を突破したら出口の無い防壁が立ちはだかり上から攻撃をされ、後ろからはゴブリン軍団が攻めかかる、戦術としては申し分ないな、あとはそのような魔物が襲って来るかだが…」
「そうですね、報告にあった大型の魔物がどう動くか、そしてそれをどうやって倒すかが今回のカギですね。 セオリー通りなら大型の魔物を先頭にして門を突破してその後に普通の魔物がなだれ込むでしょうけど」

「それに関しては、パルン王国より弩弓を融通してもらっているので防塁の上に配備させる予定だ」
「弩弓ですか、そんなもの何でパルン王国が持ってるんですか? ていうかよく提供してくれましたね、反乱でゴタゴタ中なのに…」

「ああ、パルン王国は海洋国家だからな、海賊やら敵対国と船で戦う時に船をも破壊する弩弓が数多くあるんだ、それに反乱は起きているが、どちらかと言うと内陸部が中心だからな、反乱鎮圧に弩弓の出る幕は無いようだ」

ダダルインさんはそう言って弩弓を配置する場所を新しく出来た防壁は記載された地図に記していきます。
うん、確かに弩弓なら大型の魔物も倒せるだろうしこれなら自分はゴブリン軍団達と一緒に後方から攻め込めそうだな。

そう思いながらもその後の方針を話し合い、今晩中に魔物に死骸を門の前に集め、門を若干破損させ突破しやすくする工作を行うとの事です。

うん、何とか形になったな、魔物を指揮しているのが慎重な奴でよかった、何も考えず一点集中で防塁に襲い掛かられたら一溜りも無く突破されて大損害が出てただろうし。

さて、後は野営用の家に戻り明日を迎えるだけだな、とりあえず時間あるうちに日本にゲートを開いて本を受け取って、バイルエ王国のロ二ストさんに渡して近隣諸国を含めてばら撒いて貰おう。

魔物も脅威だけど、貧しい人を中心に社会主義が蔓延するのも脅威だからな…。

そう思いながら日本にゲートを開くと鈴木さんが若干声を荒げて詰め寄ってきます。

「武内さん、今までなんで何の連絡も無いんですか! 本は出来上がってますし、なにより定期的に連絡を頂かないと!」
「まあチョットこちらも大事になってるんでそれでバタバタしていたんですよ」

そう言って鈴木さん達対策室の面々に現在起きている事を簡単に説明します。

「ではその統率されて砂漠を越えて来た魔物の大群が防壁を突破すると大陸全土に魔物が溢れると?」
「て言うより統率された魔物が野生の魔物を糾合して人間を襲う可能性がある感じですね、統率が取れているって事は大きな町なども陥落させられるでしょうし、そうなると手が付けられなくなります」

「そんなに深刻な状態なんですか?」
「ええ、深刻です、見た事も無い大型の魔物も確認されていますし、防戦が失敗したらどうなる事やら…」

「そんな、それでは転移した日本人の人はどうなるんですか? 政府として発表した内容には1000人程の死者が出ているとの報告があるが、その人達以外は生存の可能性が非常に高いとか言っちゃってますよ」
「あ~、訂正発表ですね、防塁が突破されて魔物が町や村を襲ったら死者、行方不明者はウナギ登りに増えるでしょうから…」

「そ、そんな、なんで武内さんはそんな他人事なんですか! これ以上死者が出るんですよ?」
「いやだって、以前から魔物の大量発生に備えて火力支援車両欲しいって言ってたのに却下されてるし、あとは人が中世で使用していた剣や槍、そして弓なんかで戦うしかないでしょ、その結果だから自分にはどうしようも無いし、他人事になりますよ。 実際に武器供与など支援を受けて無いんで義務も無いですし」

「そ、それは、確かに自衛隊装備は却下しましたけど…。 武内さんは魔法使えますよね? そう言うので撃退すればいいじゃないですか」
「まあ魔法は使えますが、効果範囲は限定的ですからね、機銃掃射のように向かって来る敵にを薙ぎ払うような事は出来ないんですよ、それに威力が高い魔法は発動までに時間かかりますし、そう考えると銃火器が効率的なんですよ」

「そうですか、再度要望の申請はしますが、期待はしないでいてください、とは言え日本人に被害が出るのは見過ごせませんので武内さんは何とかしてその防塁を死守してください」

そう言て鈴木さんは真顔で言いますが、言ってること根性論ですよ?
日本政府は体育会系ですか?

そう思いながらもこれ以上話しても無駄だと思い、話を打ち切りゲートを閉じます。

うん、流石に言ってること滅茶苦茶だな…。
必要な物は一般人には渡せない、なのに日本人は守れ。

これが日本か…。
なんたって紛争地に自衛隊派遣しても相手に撃たれるまで発砲禁止だもんね。
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