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怪しい男

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226日目

昨日は、宿を見つけ、荷馬車とラルを預け夕方から町を軽く散策しそれとなく聞き込みをしましたが、やはり初代当主の名前はカズサノスケ=オダと言う名前のようです。

う~ん、カズサノスケって事は織田信長じゃなかった事かな?
歴史はそこまで詳しくないし、帰ったら月山部長に聞いてみよう。

そんな事を思いながらアズチの町を歩いて散策をしますが、小さい国土の割には人が多く、町を歩く人々や商家なども多く少し見て周っただけでかなり豊かな国と言った印象です。
それにしても、城は天守閣みたいなものだから街並みも昔の日本家屋なのかと思っていましたが、どうやら石と木材で作った建物が主流のようです。

散策をしながら出店などで買った串焼きなどを食べながら歩き世間話ついでに初代当主のカズサノスケさんや日本人の噂などを聞いて周りますが、日本人については、何か便利な物を作ってるらしい等、大雑把な噂程度しか仕入れられませんでした。

大通り沿いの出店などは客が多くゆっくり話が聞けないというのも原因のようなので大通りから一本奥に入った裏道を散策し出店の人にうわさ話でも聞こうかと思い歩いて居ると、後ろから声をかけられます。

「お兄さん、異世界から来た日本人か? それとも日本人の知り合いか?」

そう言ってニヤニヤした顔で話しかけてくる中年で小太り気味の男ですが、敵意がある訳ではなさそうです。
「そうですね、自分は日本人の知り合いってところですが、どうしてそう思ったんですか?」

自分が堂々と答えた事に少し驚いたような男は、すぐさまニヤニヤした顔で口を開きます。
「お兄さん、空間魔法を使っていただろ? わざわざアズチの入り口の門から見えない場所で荷馬車を出してフォレスホースに牽かせていたのを見たんだよ」
「そうですか、だけどそれだけで日本人の知り合いだとはならないと思いますけど?」

「そうだな、確かに収納魔法は珍しい魔法だがそれだけじゃ日本人の知り合いかなんてわからないが、お兄さんが堂々と聞き込みをしてるんでな」
「あ~、そういう事、てことは朝から自分の事を監視してたの? なんか無駄なことしてる気がするけど」

そう言う自分に男は怪しい笑顔を崩さず話を続けます。

「そうか? そうでも無いぞ? なんせ日本人や日本人の知り合いって奴は金になるからな」
「金になるね…。 自分を攫って身代金でも要求するつもり?」

「ふぁあはは、これは傑作だ、攫ったところで金に何かなるわけないだろ」
「じゃあ目的は? 自分的には散策を続けたいんで、無駄な問答する気は無いんだけど」

「せっかちだな、じゃあ本題に入るが、お兄さんはどうやら日本人の情報、オダ帝国の初代皇帝の事が知りたいようだが、初めての土地でろくに情報も仕入れられず、それどころか傍から見たら明らかに怪しい奴だ。 そんなんじゃ欲しい情報は仕入れられないだろ?」
「まあ実際にろくに情報を仕入れられなかったから否定は出来ないけど、根気強く聞きこめば何かしら情報も得られるでしょ?」

「そうだな、確かに仕入れられるかもしれんが、ついでに衛兵からの尋問もついて来るぞ? 明らかに他国から来た間者と間違われてもおかしくなかったからな」

そう言う男は、どうやら自分の聞き込みの仕方が怪しくてそのうち衛兵に通報されるとでも言いたいようです。
まあ確かに、聞き込みとか情報をこっそり探る方法とか知らんけど、そんなに怪しかったのかな?

「まあそこで、俺の出番ってわけだよ。 お兄さんが欲しい情報を俺が仕入れてくるから、その情報をお兄さんは買ってくれればいい。 これでも俺は人から色々聞きだすのは得意なんだ」
「ようは情報屋って事? でもその情報が正しい証拠って何も無いよね? 適当な事を教えて金だけせしめようって事じゃない?」

「まあ確かに初見の人間あいてじゃそう思われても仕方ないよな。 だがその辺は信じて貰うしかないが、まあ知りたい内容を教えてくれれば俺が調べて来るから、その情報を聞いて金をくれればいい。 もっとも要らない情報だったら金は払わなくていいぞ。 それにこれでも俺は情報通で色んな国の情報を持ってる」

どうやらこの怪しい男は自分の調べ出す情報が有意義な情報であると自信を持っているようで、堂々と必要ない情報だったら金は要らないと言い出しています。

明らかに怪しいけど、使える者は使うに限るし、何かトラブったら自分は転移魔法で逃げればいいけど。
ここはひとつ試してみるかな…。

「じぁあさ、情報を集めるのが得意って事は、他国の情報とかも持ってるって事だよね? ウェース聖教国についての情報とかってない?」
「ウェース聖教国か…。 直に見た訳ではないが、滅んだって話だ」

「滅んだ? 国が亡ぶなんて早々ある事じゃ無いんじゃない? それに宗教が国の根幹になってる国だったらなおさら滅んだなんておかしくない?」
「まあ確かに普通に考えたらそうなんだけどな、どうやらバイルエ王国とドグレニム領が手を組んで手早く首都を占拠したらしい。 それに俺も信じられないがどうやら、この件には日本人の魔物使いが絡んでるらしいぞ」

「魔物使いの日本人? それとウェース聖教国が滅んだのに関係があるの?」
「どうやら、その日本人が率いる魔物の大群が一気に押し寄せた事でまともに防衛が出来なかったんじゃないかって話だ」

そう言って自慢げに話します。
「それにしても、そんな情報をどうやって仕入れたの?」
「それは教えられませんよ。 とは言え聞く処によると、日本人が開発した遠くの人と話す魔道具があるみたいで、ウェース聖教国が滅んだって話はバイルエ王国内では普通にささやかれてますがね」

確かにこの怪しい男の情報は間違ってる部分はあるけどこの世界の情報伝達速度を考えるとある意味最新情報を得ているって事だから、まあ使える人間の分類に入るのかな?
そう思い、とりあえずはこの怪しい男に調べさせてみようかな。

「じゃあ、とりあえず調べては貰うけど、取るに足らない情報だったら金は払わんよ?」
「そう来なくっちゃ!」
そう言って男はセロスと名乗り、どんな情報が必要か聞いてきます。

「まずは、オダ帝国に居る日本人の情報、出来れば能力やレベルも分かるといいね、あとは初代皇帝のカズサノスケって人の事、むしろこっちは出自やどうやって国を興したのかなが知りたいね。 他にもあるけどその他はセロスが役に立つって分かったら頼むことにするよ」
「ほう、日本人の能力やレベルか…。 これは難題だ。 まあそこ辺は俺の腕の見せ所ってとこだが、とりあえず手始めに初代皇帝の件を調べられるだけ調べて明日の夜にはそれなりの情報を渡せるようにしといてやるよ」

そう言って怪しいセロスと名乗る男は、明日の夜に宿を訪ねて来ると言い、去っていきます。

ていうかどこの宿に泊まっているか伝えていないけど、その辺も調査済みなのか?
なんかストーカーみたいでキモいな…。

それにしても、すでにウェース聖教国がバイルエ王国とドグレニム領の連合に滅ぼされたという情報が誤っているとはいえ伝わっているのには驚きだな。

とはいえ変な伝わり方して無駄な揉め事とか起きないといいけど…。
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