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晩餐の夜

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領主館に用意された休憩室で休んでいると、会談を終え戻ってきたグランバルさんにお茶会の話をし大爆笑をされた後、月山部長達と晩餐会の時間まで雑談をしながら時間をつぶします。

「じゃあ聖女と言われるステレーネさんは本当にそんな話を信じで居るのか?」
「そうですね、日本とかだったらSNSとかテレビや新聞などで情報が入りますが、この世界では人から人へ言葉で伝わるので、意図的に事実を捻じ曲げ都合のいい様に伝えているとしか思えませんね。まあ聖女とは言え籠の中の鳥ものみたいな物でしょうから」

「籠の中の鳥か・・。そうだとしたら、あえて籠の中の鳥を今回の使節団に加えて連れて来た理由が分からなくなるな」
「まあ婚姻の話を断られると思ってなかった、絶対に飛びつくという自信があったんじゃないんですか?まあ相手がこんな天邪鬼じゃなく、この世界の王族や大貴族だったら飛びついたんでしょうが、日本人に聖女って言っても元々信仰心薄い国出身ですし、この世界の神ネレースには強制的に転移させられてますから聖女って言ってもありがたみも無いですからね」

「まあ確かにな、ただ私は月に一度は教会に行くキリスト教徒だぞ?」
「まあ日本人の中にはそう言う人も居ますが、自分は宝くじを買った後に神社で一等当たりますようにって、5円玉を一枚お賽銭してお願いするぐらいですからね」

「それじゃあ宝くじには当たらんな」
「そうですね、最大で1万円ぐらいしか当たったことないですね」

そんな雑談をしていると使用人の人が晩餐会の準備が整ったと伝えに来てくれましたので、月山部長達と共に晩餐会の会場に向かいます。
今回も最終日の晩餐という事でプレモーネの大店の商家の人などの来賓が多く少し会場が狭く感じるぐらいです。
うん、今度グランバルさんが不在の時にコッソリ倍ぐらいの広さに増築してやろうかな・・・。

そう思いながら配られたグラスを受け取っていると、グランバルさんとグレームさんが挨拶をして晩餐会が始まります。

自分は顔馴染みとなった穀物を扱う商家の人と最近の在庫量や次に卸に行くのはいつぐらいがいいかを話していましたが、急に商家の人がソワソワしだして自分のもとを離れていきます。

「マサト様、本日はお茶会のお誘いに快く応じて頂きありがとうございました」
そう言って侍女を引き連れ笑顔でやってきたのはステレーネさんです。
うん、昼過ぎに話したんだからもうよくない?他の人と話さないの?ぼっちなの?

そう思いながらも笑顔で会釈をし、雑談を交えながら言葉を交わします。
「こちらこそ、お茶会のお誘いありがとうございました。あと言いたい放題言ってスイマセンでしたね」

「いえ、わたくしは先ほどまで考えておりましたが、マサト様がおっしゃっていた事をわたくしは信じる事は出来ません。ですのでウェース聖教国に戻ったら多くの方の話を聞いてみる事に致しました。」
「それが良いと思いますが、あまり派手にすると都合が悪い人が邪魔をしますから、コッソリされる方がいいですよ。言い方悪いですけどある意味ウェース聖教国内で孤立しているようなものですから」

「そうですか、わたくしはそう見えますか・・・。ご忠告痛み入ります。それにしてもマサト様はご婚姻の話を即答で断られましたが、なにかわたくしに至らない所でもございましたか?」
「いえ、ただ政略の道具になるのもされるのも気に入らないんで断ったんですよ」

「そうですか、わたくしは、見ず知らずの方との婚姻の話をされ、グレーム卿には婚姻の話をしたら必ず色よい返事を貰えるからそのつもりでいるようにと言われておりましたので正直、お断りをされた際安堵したのですが、マサト様とお話をするうちに、断られたのが残念に思えて参りました」
「う~ん、それは多分、今まで対等な立場でまともに話した男性がいなかっただけですよ。これから自身で見分を広めたらいい男も見つかりますよ」

「そうでしょうか、マサト様以上の方はそうそうおられないと思いますが」
「そうですね、バイルエ王国に居る日本人で土田っていう男が居るんですがおススメですよ。正直で真面目ですから、機会があったら話してみるといいかもしれませんね」

「バイルエ王国ですか、あまり機会はなさそうですが、お会いする事があればお話をさせて頂きます。」
「そうしてください、武内の紹介だって言えば土田の事ですから喜んで話をすると思いますよ。ドグレニム領に来るよりもバイルエ王国に行く方が安全に旅できるでしょうし、何かあったら土田を頼ってください」

「そうですか、ただわたくしは非道な行いをおこなうバイルエ王国に行く事は無いかと思います」
「非道ですか、まあ実際の所はご自身で見て聞いて考えてください」

その後は来賓の人にステレーネさんを紹介しながら雑談をしていると晩餐も終わりの時間となります。

最後の締めなのか、グランバルさんとグレームさんが再度来賓たちに挨拶をして晩餐会が終わりになり、来賓や使節団の人達が帰っていきます。

うん、バイルエ王国の時は疲れなかったけど、今回のウェース聖教国は精神的に疲れました。
そう思いながら全員が退出した後は、主要な人が集まって晩餐会で使節団の人達との雑談で各自が聞き出した情報を纏めるのですが、やはり今回も有意義な情報を聞き出せていないようでした。

「マサトも聖女から情報は聞き出せてないのか?」
「そうですね、と言うよりステレーネさんの持っている情報は教国が都合が良いように伝えているようで全くあてになりませんよ」

「聖女からの情報が全くあてにならんとはな。教国にとって聖女は都合のいい飾りか」
「ええ、いくらでも替わりのきく完全な飾りですね」

そう言いながら、グランバルさんに外交交渉の結果を聞きます。
「まあ予想通り友好的な関係の構築と交易の活発化だけは一致したがそれ以外は完全に物別れだな。まああちらさんもその他の要求を無理強いして友好関係の構築すら出来なくなったら困るんだろう。最後は教国が渋々折れる形で話が付いたよ」
「まあこちらは友好関係の構築と交易の活発化以外は受け入れる理由も無いですし、むしろその二つを受け入れなくてもドグレニム領は問題ありませんからね」

「そういう事だ、まあ難民の件は少し悩んだんだがな」
「まあこれからプレモーネが大きくなって発展をすれば人手は不足するでしょうから難民も暫くしたら大事な人材になりますよ」

「そうだといいんだがな・・」
「間者や工作員ですか?」

「そうだ、難民に紛れて多数が入り込む可能性があるからな・・・」
「まあそれは仕方ないでしょう。どちらにせよグランバルさんだって近隣の国に大量の間者を放っているんですし、どこも考える事は同じですよ。それに間者からプレモーネの繁栄を聞けば向こうも余計なちょっかいもかけてこないでしょ」

グランバルさんはそんな言葉を難しい顔で聞きながら考えているようですが、町が拡張したからと言って人口が増えるわけではなく流入して来た難民がドグレニム領の領民になることで得られる利益の方が大きいと判断したようです。

「とりあえず今日は解散だな、あとマサト、明日の朝に領主館に来て教国の使節団の見送りに加われよ。」
「分かりました、見送りぐらいはちゃんとしますよ。まあ見送った後はちょっと隣り領との道の拡張整備の進捗確認に行ってきますが」

「隣領?ルイロウ領か?それともロニーニャ領か?」
「さあ?プレモーネの南西方向にある道ですね。この道は何領に行く道なんですか?」

「お前知らないで道を拡張整備しようとしてたのか?」
「そうですね、まあ道を拡張と整備だけが目的だったんで特に気にしてませんでしたね」

グランバルさんはは呆れた様子で、南西方向にある道がルイロウ領へ続く道で、西の方向にある道がロニーニャ領へと続く道だと教えてくれました。

「じゃあ、ルイロウ領に続く道の整備拡張が終わったらロニーニャ領に続く道を拡張しますね」
「それはいいが、揉め事だけは起こすなよ」
「了解です。ゾルス達ゴブリンに人間と接触しないように徹底させます」

そう言い、領主館を後にして自宅に帰ります。

それにしてもウェース聖教国はあんな受け入れられないのが分かり切った内容の交渉に来るとは、何か他に企みがあるのか。
それとも純粋に教国の名前で何とかなると思っていたのか。

普通に考えても結果は見えてるのに・・・。
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