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お茶会

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108日目

とりあえず今日と明日は領主館でグランバルさん達ががウェース聖教国の使節団と会談をしているので自分は城壁の建設作業を進めます。
うん、自分の出る幕無いし、家に居たら何か面倒くさそうな気がするんでむしろ逃亡と言うべきでしょうか。

そんな感じで、石材をアイテムBOXから出して錬成術で城壁を作っていきます。
夕方になるころには大体1000メートル分の城壁が出来ました。
今日で約6000メートル分の城壁が出来ましたがあと約10,000メートル分は作る予定なのであと10日はかかる計算です。

これ純粋に人力でやったら何年かかる作業なんだろう。
そう思いながら家への帰路についているとグランバルさんからの使いがやってきます。
使いの人の話では一度領主館に来て欲しいとの事なので、使いの人と一緒に領主館に行くとグランバルさんから明日、ステレーネさんからお茶をとのお誘いが来ているとの事です。

「とりあえず、伝えようと探したけど見つからなくて伝えられなかったという事でいいですか?」
「おまえな~、仮にも相手は聖女だぞ?そんな子供の言い訳みたいな理由が通じるわけないだろう」

「え~城壁づくりに時間がかかるから無駄に時間を使いたくないんですけど・・・」
「とりあえず、あきらめろ、時間と場所は昼過ぎに迎賓館だ、とりあえず伝えたからな、逃げずに行けよ」

そう言ってグランバルさんは釘をさしてきます。
「それはそうと、話し合いはどんな感じなんですか?」
「まあお互い友好的な関係強化と交易の活発化促進は一致しているがそれ以外は全部突っぱねている、まあ明日も向こうがそれ以外の部分に関してこちらに譲歩を求めてくるようなら友好的な関係強化すら合意できんかもしれんな」

「まあそうでしょうね。それにしてもなぜにここまで強気で出て来れるんですかね?」
「おそらくプライドだろう、仮にも聖教国と名乗っている国だ、下手な譲歩は出来ない、それに相手は国ではなく一領主だからなおさらだろう」
「外交って面倒くさいですね。まあ明日のお茶は逃げないで出席しますよ」

そう言って領主館を後にして自宅に戻ることにします。
ウェース聖教国側はなりふり構わず必死だな・・・。

109日目

「これはマサト様、お忙しい所、本日はお越しいただき誠にありがとうございます」
そう言って出迎えて来たのはウェース聖教国の聖女ステレーネさんです。

「いえ、こちらこそ聖女でいらっしゃるステレーネさんからお招きを受けるとは思ってもみなかったので、不作法があるかと思いますがご容赦ください」
「いえ、お誘いしたのはこちらですので不作法など気になされず、さあどうぞ、こちらにおかけください」

ステレーネさんがそう言うと侍女らしき人が椅子を引いて着席を促します。
「マサト様達異世界の方のお口に合うか分かりませんが、ウェース聖教国から持って参りましたお菓子がございますので是非お召し上がりください」

侍女の人がカップに淹れたお茶を持って来て、テーブルに置きます。
カップを口に運び一口飲むと、香りはあまり無いのですが、まずくは無いのですが、紅茶のようなほうじ茶のような何とも形容しがたい味がします。
「このお茶もウェース聖教国からお持ちした最高級の茶葉でございますのでお気に召していただければいいですが、如何ですか?」

「そうですね、日本にはない独特な味のお茶ですがなかなかおいしいですね」
「それは、よかったです。お口に合わなければどうしようかと思っておりました」

そう言ってステレーネさんは笑顔でほほ笑んでいます。
これが政略ではなく普通に出会っていれば違う見方が出来たのかもしれませんが残念ながらこの政略の場では何か白けてしまいます。

「それにしても、お風呂と言うのは素晴らしいですね。湯浴みの習慣はございますが、あのように広い場所にお湯を溜めてそこに浸かるなど贅沢の極みでございました」
「ああ~大体皆さんそう言いますね、日本では1家に1つはありましたから自分達日本人は風呂に入るのが生活の一部なんですよね」

「まあ、1家に1つですか?二ホンとはそんなに豊かな場所なのですか?」
「まあそうですね、物に困ることはありませんし、お腹が空いたら昼も夜も1日中休みなく営業しているお店が沢山ありますから。そこに行けば大体は手に入りますし、この世界と比べたら別世界ですかね」

とりあえず日本の話をするとステレーネさんは目を輝かせながら話を聞いては質問をしてその度に驚き、そしてまた質問をしてきます。
やはりこの世界の人には日本の生活水準を聞いても物語を聞かされている感覚のようです。

「そう言えばお茶も冷めてしまったようなので、自分が日本で売っている紅茶と言うのをごちそうさせて頂きますよ」

そう言って席から立ち上がりお茶を入れる準備をしようとしたところ、侍女の人もステレーネさんも驚いたようすで殿方にそのような事をと言い出しました。
「まあ、そういう所も日本にはない習慣なんで気になさらないでください」

そう言いながら一旦カップをお湯で温めた後、お湯を捨てて再度熱湯をカップに注ぎ、その後紅茶のティーパックを取り出しカップに入れて、蓋をして暫く蒸らしてからティーパックを取り出します。
蓋が無かったので蓋代わりにティーソーサーを蓋代わりに使用させて頂きましたが、そこそこまともな紅茶が入れられたと思います。

「どうぞ、これが日本で飲まれている紅茶と言う物です。お好みで砂糖を入れて飲まれてもいいので、よかったら使ってください」
そう言いながらスティックシュガーをソーサーの脇に置きステレーネさんに紅茶を勧めます。

「では遠慮なく頂きます」
熱いので一気に飲めませんがステレーネさんはカップに口を近づけ香りを嗅いでから紅茶を少し口に含みます。

「これは素晴らしいお茶ですね、香りもとてもよく口に入れても口の中で香りが広がります」
そう言って紅茶の香りに酔っては、目を恍惚とさせ余韻に浸っている感じです。
うん、普通にお店で売っているお徳用紅茶のティーパックだったんだけどそこまでの物なの・・・。

「とりあえず、お土産に100パック入りの紅茶を3ケース程お土産に差し上げますんで持って帰ってください」

そういいながら侍女の人達に入れ方を教えるついでに試飲させてましたが、皆さんえらく紅茶を気に入ったようです。
いや、ホントにこれお徳用の紅茶のティーパックですからね、本格的な高級茶葉の紅茶じゃないですからね・・・。

「このような貴重なお茶を頂き誠にありがとうございます。それにしても日本と言う国はお茶も食べ物も大変美味しくまるでお伽話の世界のようでございます」
「まあお伽話ではなく現実にある異世界なんですけどね・・。とはいえこの世界も転移させられるまでは自分にとってはお伽噺でしたけど」

「そうですね、わたくしもこの世界の他に別の世界があるなど思ってもおりませんでした。マサト様は元の世界に戻れるとなったらお戻りになられるのですか?」
「多分戻るでしょうね、恐らくこの世界に強制的に転移された人はほとんどが日本に戻りたいと思っていますから」

そう言うとステレーネさんは少し寂しそうな顔をしますが、それ以上の言葉を発する事はありません。
「とはいえ戻る方法の手がかりも無いのでいつ戻れるかも分かりませんが、とりあえず足掻くだけ足掻くつもりですね」
「でしたらウェース聖教国には長年に渡り集められた多くの書物がございます、マサト様のきっとお役に立つはずですので是非ウェース聖教国へお越し頂きたいと思います」

「そうですね、ただこの世界の人が日本人を転移、いえ召喚と言うべきでしょうか、その長年に渡って集めた書物や知識があるなら、既に日本人を召喚しているはずです、それがなされていないという事は、元の世界にもどる方法などに関する書物は無いと思いますよ。あれば今頃、ウェース聖教国では日本人を召喚しているでしょうから」
「それは・・、いえ恐らく様々な書物があり、未だに解読出来ていない物もございますのできっと」

そう言うステレーネさんの言葉を手で遮り、ウェース聖教国へは行かない事を伝えます。
「まあ交易で立ち寄ることもあるでしょうか、残念ながら自分はウェース聖教国に力を貸すつもりはありません。これは今後も変わる事は無いと思います」
「なぜそのようなお答えになるのですか、ネレース様はおっしゃいました、異世界の技術と知識を手に入れこのヌスターロス大陸をより豊かにする機会を得、繁栄を望む事が出来るだろうと、なのにネレース様を信仰しこの世界を豊かにする為に導く努力をしておりますウェース聖教国へお力を貸していただけないのですか?」

「そうですね、ステレーネさんはそう言う思いで聖女をされているかもしれませんが、ウェース聖教国の実態は異なっていると思うからですね。恐らくステレーネさんに与えられる情報はウェース聖教国にとって都合の良いように作り替えられているでしょう」
「そのような事はございません、わたくしは聖女として務めを果たし人々の為に祈りを捧げ、またこの世界の情勢も司祭や教皇様などから直接聞き及んでおりますが、耳に入るのは多くの国は争い民を苦しめているという事ばかり、ですからわたくしは異世界から来られた方のお力をお借りしこの世界を豊かにそして平穏にしたいと願っているのです」

「うん、でもその情勢を伝える司祭や教皇が意図的に情報操作してたら?今まで聞いて信じ込んでいた事が全くのウソだったら?」
「そのような事はございません!いくらマサト様と言えど教皇様達を侮辱する発言は見過ごせません!」

「まあ真実は一つだけですからね、侍女の人は恐らく余計な事を話さないように口止めされているだろうし、出来るなら一度、ウェース聖教国中枢の人間ではなくウェース聖教国に住む人々の生の声を聞いた方がいいと思うよ。間違いなく今まで聞かされていた話と違うはずだから」

「マサト様はウェース聖教国が人々を、民を苦しめているとおっしゃるのですか?」
「それはご自身の目と耳で見聞きして判断されるべきことだと思います」

そう言って席を立ちステレーネさんにお茶会へのお誘いのお礼をいいその場を辞します。

うん、これは完全に洗脳されてるから何を言ってもダメなタイプだ・・・。
それにしてもガンガン自分アピールしてくるかと思ってたけど途中から全く違う方向の話になったな。

そう思いながら迎賓館を後にし自宅へ向かおうとしたら、グランバルさんが手配したであろう領主館の使用人さんに捕まり領主館に連行されます。

うん、このまま今晩の晩餐をバックレようと思ってたの完全に見透かされてた・・・。
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