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第五章 多様変遷
第三十七話 あるべき姿へ(二)
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「ここが国葬墓地だ」
そんなことを考えているうちに国葬墓地へ到着した。天藍を始め参列している全員が黙とうし祈りを捧げ、薄珂と立珂も真似て手を合わせる。
国葬は宋睿の有翼人狩りで犠牲になった者の弔いと銘打たれている。
この美しい嘘のおかげで国民が団結し未来へ向かうことができるなら、真相は闇に葬るのが正解なのかもしれない。
「立珂。贈り物を皆に渡してくれるか」
「うんっ!」
立珂は手に持っていた品を広げた。有翼人専用服だ。
「美しい服だ」
「愛憐ちゃんが選んでくれた生地だよ。とっても涼しい生地なの」
これは立珂が考え、愛憐が作ってくれた物だ。
有翼人保護区で今最も喜ばれているのが氷の無料配布だ。これは全て明恭から提供され、今後は専用予算を組むことになっている。浩然が無茶言うなと頭を抱えていたけれど、護栄が任せたのなら実現できるということだろう。
立珂は服を広げ慰霊碑に向かって語った。
「これはばらばらにしてくみたてながら着るの。羽出せるしひとりでおきがえもできるんだ。羽がこちょこちょしないからひふえんもないんだよ。背中だけとっても薄い生地なのは涼しくするためだよ。肌着はからだにぴったりして汗かいてもだいじょうぶなの」
立珂は小さな手で服を畳むと、そっと慰霊碑の前に置いた。
「いっぱい着てね。お店にはもっといろいろあるから見に来てね」
立珂がにっこりと笑顔でそう言うと天藍は俯いた。
「……すまない」
顔を隠していたけれど、天藍より背の低い薄珂にはその表情が見えてしまった。
ぽつりとそうこぼした天藍の目には涙が浮かんでいた。護栄はいつも通り凛と澄ましている。まるで何も無かったようないつもの表情だ。
天藍は膝を付き、もう一度手を合わせた。涙が乾くのを待っているのかもしれない。
薄珂もその隣に膝をつき手を合わせ、周りから見えないようにそっと小さな布を渡した。小さくなった立珂は口を開けて寝ること多く、涎を垂らすので持ち歩いている。
「未使用だから」
「……有難う」
天藍はそれでぐっと目を抑えると、ふうと深呼吸をして立ち上がり職員たちを振り返った。
「それじゃあ中央広場へ行こう。騒ぎになるかもしれないが、どうか力を貸してくれ」
「当然だ。我らの悲願が叶う時だからな」
「盛大に祝ってやろう」
笑いながらそう言ったのは先代皇宋睿を敬愛する者達だ。
先代皇派だの反天藍派だのと呼ばれるが、彼等の目下の目標は天藍を引きずり下ろすことだった。彼等の力ではないけれど、それが今日達成する。嬉しくないはずがない。
(政治の決定権は彼等も平等に持つようになり皇太子には孔雀先生が立つ。国民はどう思うだろう)
先代皇派は驚くほど孔雀が皇太子になることに興味を示さなかった。元々宋睿が蛍宮皇だの皇太子だのという地位に興味がなかったからだという。
それを聞くと宋睿は本当に先々代皇の悪政から国民を開放したかっただけなのかもしれない。ならばあの頃に透珂と薄立がいればこうして天藍が立つこともなかったのかもしれない。
皇族のつけを皇族が払うのは当然だと誰かが言った。嫌味だったのかもしれないけれど、孔雀はただそれに頷いていた。
そんなことを考えているうちに国葬墓地へ到着した。天藍を始め参列している全員が黙とうし祈りを捧げ、薄珂と立珂も真似て手を合わせる。
国葬は宋睿の有翼人狩りで犠牲になった者の弔いと銘打たれている。
この美しい嘘のおかげで国民が団結し未来へ向かうことができるなら、真相は闇に葬るのが正解なのかもしれない。
「立珂。贈り物を皆に渡してくれるか」
「うんっ!」
立珂は手に持っていた品を広げた。有翼人専用服だ。
「美しい服だ」
「愛憐ちゃんが選んでくれた生地だよ。とっても涼しい生地なの」
これは立珂が考え、愛憐が作ってくれた物だ。
有翼人保護区で今最も喜ばれているのが氷の無料配布だ。これは全て明恭から提供され、今後は専用予算を組むことになっている。浩然が無茶言うなと頭を抱えていたけれど、護栄が任せたのなら実現できるということだろう。
立珂は服を広げ慰霊碑に向かって語った。
「これはばらばらにしてくみたてながら着るの。羽出せるしひとりでおきがえもできるんだ。羽がこちょこちょしないからひふえんもないんだよ。背中だけとっても薄い生地なのは涼しくするためだよ。肌着はからだにぴったりして汗かいてもだいじょうぶなの」
立珂は小さな手で服を畳むと、そっと慰霊碑の前に置いた。
「いっぱい着てね。お店にはもっといろいろあるから見に来てね」
立珂がにっこりと笑顔でそう言うと天藍は俯いた。
「……すまない」
顔を隠していたけれど、天藍より背の低い薄珂にはその表情が見えてしまった。
ぽつりとそうこぼした天藍の目には涙が浮かんでいた。護栄はいつも通り凛と澄ましている。まるで何も無かったようないつもの表情だ。
天藍は膝を付き、もう一度手を合わせた。涙が乾くのを待っているのかもしれない。
薄珂もその隣に膝をつき手を合わせ、周りから見えないようにそっと小さな布を渡した。小さくなった立珂は口を開けて寝ること多く、涎を垂らすので持ち歩いている。
「未使用だから」
「……有難う」
天藍はそれでぐっと目を抑えると、ふうと深呼吸をして立ち上がり職員たちを振り返った。
「それじゃあ中央広場へ行こう。騒ぎになるかもしれないが、どうか力を貸してくれ」
「当然だ。我らの悲願が叶う時だからな」
「盛大に祝ってやろう」
笑いながらそう言ったのは先代皇宋睿を敬愛する者達だ。
先代皇派だの反天藍派だのと呼ばれるが、彼等の目下の目標は天藍を引きずり下ろすことだった。彼等の力ではないけれど、それが今日達成する。嬉しくないはずがない。
(政治の決定権は彼等も平等に持つようになり皇太子には孔雀先生が立つ。国民はどう思うだろう)
先代皇派は驚くほど孔雀が皇太子になることに興味を示さなかった。元々宋睿が蛍宮皇だの皇太子だのという地位に興味がなかったからだという。
それを聞くと宋睿は本当に先々代皇の悪政から国民を開放したかっただけなのかもしれない。ならばあの頃に透珂と薄立がいればこうして天藍が立つこともなかったのかもしれない。
皇族のつけを皇族が払うのは当然だと誰かが言った。嫌味だったのかもしれないけれど、孔雀はただそれに頷いていた。
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