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第五章 多様変遷
第一話 ちっちゃな立珂のおっきな挑戦(一)
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薄珂は小さな立珂が腕から落ちてしまわないようしっかりと抱きしめた。
響玄と美星はその腕の中できょとんとしている立珂をまじまじと見つめている。
「これは……」
「ちっちゃい頃の立珂なんだ! 痛いとか苦しいとかはないみたいなんだけど立珂も何があったか分からないって! でも立珂は立珂でどっかいっちゃって違う立珂が来たわけじゃなくていっぱいいたら可愛いけど立珂はこの立珂なんだ! 立珂がちっちゃい時は俺も子供だったからあんまり覚えてなかったからちっちゃい立珂を見れるなんて思わなかった! すごく可愛い! どうしよう!」
「焦ってるのか冷静なのかどっちだお前は」
「お気持ちは分かりますわ」
異常事態でも薄珂の口から出て来るのはいつもと変わらない、弟を溺愛し称賛する言葉ばかりだった。
しかし響玄と美星は冷静だった。驚きはしたようだったが、青ざめたり危険を感じた様子はない。
美星は大きな瞳をぱちくりさせている立珂の頬をそっと撫でた。
「大丈夫。これは成長期に入られたのです」
「成長期!?」
「有翼人は成長期が二回あります。一度目は幼い姿に戻り、二度目で成人体になるので一次成長期ですね。終えるまで凡そひと月ですが、もっとかかる子もいます」
「そんなのがあるの?」
「ええ。立派に成長している証拠です。おめでとう御座います、立珂様」
「う?」
相変わらず立珂はきょとんとしていてよく分かっていないようだった。
しかし美星は成人している有翼人だ。羽は有翼人狩りで一度切り落としてしまったそうだが、今また生え始め有翼人専用服が必要なほどになっている。成長期も経験してきているだろう。そしてその美星を育てた響玄も当然成長期を見ているはずだ。
二人は慌てるどころか安心したように微笑んで立珂を撫でている。薄珂もその様子を見てようやく安堵し息を吐いた。
「そっか。じゃあ大丈夫なんだ。よかった。成長期終わったらまた元に戻る?」
「個人差があります。このままの場合もありますし元に戻る場合もあります。ですがここから成長するのでいずれは戻るでしょう」
「だがいきなり五歳分成長したりはしない。だから有翼人は外見が実年齢より幼い者が多いんだ」
「へえ~。中身は? 中身もちっちゃいのかな」
「これも個人差がありますね。立珂様いかがですか」
「わかんにゃい」
「あ、舌足らずだ。可愛いぞ立珂!」
異常が無いと分かって安心した薄珂はいつものようにぐりぐりと頬ずりをした。外見が変わっても弟を溺愛する姿は変わらない。立珂も幸せそうにきゃっきゃと笑い、小さくなった手で薄珂にしがみ付いている。
「それより薄珂様は宮廷業務をどうするか考えなくては。今まで通りとはいきません」
「殿下と護栄様に相談した方が良いだろう。少し早めに行きなさい」
「うん。でもその前に」
「おきがえ! ちっちゃいからちっちゃいのきれる!」
「だな。新しいお洒落を考えなきゃ」
立珂は毎日どんな服を着るか、時間をかけて選んでいる。必ず組み合わせを変え、そうすることで一度として同じ服を着ていることはない。
しかも小さくなった今、以前と同じ服を着ることはできない。必然的に新しいお洒落が必要になり、立珂はいっそう目を輝かせていた。
響玄と美星はその腕の中できょとんとしている立珂をまじまじと見つめている。
「これは……」
「ちっちゃい頃の立珂なんだ! 痛いとか苦しいとかはないみたいなんだけど立珂も何があったか分からないって! でも立珂は立珂でどっかいっちゃって違う立珂が来たわけじゃなくていっぱいいたら可愛いけど立珂はこの立珂なんだ! 立珂がちっちゃい時は俺も子供だったからあんまり覚えてなかったからちっちゃい立珂を見れるなんて思わなかった! すごく可愛い! どうしよう!」
「焦ってるのか冷静なのかどっちだお前は」
「お気持ちは分かりますわ」
異常事態でも薄珂の口から出て来るのはいつもと変わらない、弟を溺愛し称賛する言葉ばかりだった。
しかし響玄と美星は冷静だった。驚きはしたようだったが、青ざめたり危険を感じた様子はない。
美星は大きな瞳をぱちくりさせている立珂の頬をそっと撫でた。
「大丈夫。これは成長期に入られたのです」
「成長期!?」
「有翼人は成長期が二回あります。一度目は幼い姿に戻り、二度目で成人体になるので一次成長期ですね。終えるまで凡そひと月ですが、もっとかかる子もいます」
「そんなのがあるの?」
「ええ。立派に成長している証拠です。おめでとう御座います、立珂様」
「う?」
相変わらず立珂はきょとんとしていてよく分かっていないようだった。
しかし美星は成人している有翼人だ。羽は有翼人狩りで一度切り落としてしまったそうだが、今また生え始め有翼人専用服が必要なほどになっている。成長期も経験してきているだろう。そしてその美星を育てた響玄も当然成長期を見ているはずだ。
二人は慌てるどころか安心したように微笑んで立珂を撫でている。薄珂もその様子を見てようやく安堵し息を吐いた。
「そっか。じゃあ大丈夫なんだ。よかった。成長期終わったらまた元に戻る?」
「個人差があります。このままの場合もありますし元に戻る場合もあります。ですがここから成長するのでいずれは戻るでしょう」
「だがいきなり五歳分成長したりはしない。だから有翼人は外見が実年齢より幼い者が多いんだ」
「へえ~。中身は? 中身もちっちゃいのかな」
「これも個人差がありますね。立珂様いかがですか」
「わかんにゃい」
「あ、舌足らずだ。可愛いぞ立珂!」
異常が無いと分かって安心した薄珂はいつものようにぐりぐりと頬ずりをした。外見が変わっても弟を溺愛する姿は変わらない。立珂も幸せそうにきゃっきゃと笑い、小さくなった手で薄珂にしがみ付いている。
「それより薄珂様は宮廷業務をどうするか考えなくては。今まで通りとはいきません」
「殿下と護栄様に相談した方が良いだろう。少し早めに行きなさい」
「うん。でもその前に」
「おきがえ! ちっちゃいからちっちゃいのきれる!」
「だな。新しいお洒落を考えなきゃ」
立珂は毎日どんな服を着るか、時間をかけて選んでいる。必ず組み合わせを変え、そうすることで一度として同じ服を着ていることはない。
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