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第四章 翼衣專店

第三十話 冬用肌着(一)

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 皇太子に謁見するための広間に顔を並べたのは護栄と響玄、薄珂と立珂、そして麗亜と愛憐に柳もいる。
 しかし事態が分かっていない天藍は、はて、と首を傾げいた。

「今日は服を考える日だと思ったが?」
「私もそう思ってました……」

 麗亜も困惑した様子で、護栄の視線から逃げるように顔を背けた。
 恐らく準備不十分で護栄のいる商談などしたくないのだろう。
 薄珂は響玄と顔を見合わせるとにこりと微笑み、いくつかの服を麗亜の前に並べた。
 肌着だ。

「実はもう完成しているんです。これが冬を画期的に温かく過ごせる服」
「ずーっと前から作ってたの! 褞袍あったかいけどお洒落じゃないから!」
「さすが立珂。分かってるわ」
「はあ。しかしただの肌着に見えますが……」
「着ないと分からないと思います。よければご試着ください」

 薄珂は麗亜と愛憐、柳にも新品の肌着を渡した。
 着替えて戻った三人は驚いた顔をしている。

「立珂! これすっごく温かいわ! 肌着一枚着ただけとは思えない! 暑いくらいよ!」
「そうでしょー! だから早く脱いだ方が良いよ。汗でお化粧くずれるから」
「ぎゃっ」
「柳。どういう服か分かるかい?」
「見たこともないな。生地の保温性が高い。薄いわりに伸縮もするから身体に沿い着ぶくれることもない。どこ産の生地だ?」
「立珂産です」
「は?」

 明恭の面々はいぶかしげな顔をした。
 それを立珂はくふくふと面白そうに笑い、満足げにばっと手を開いた。

「僕の羽根で作ったんだよ! だから僕産!」
「羽根? 羽根って、その、背中の羽の?」
「そう! これを服にしたの!」
「羽根……では、ないでしょう……」
「いいえ、間違いなく立珂の羽根です。実は糸紡ぎ機に触れた際、立珂が疑問に思ったことがあるんです」

 それは李儀に様々な機械を見せてもらった時の話だ。
 立珂は初めて布と糸がどう作られているかを知った。紡がれる糸により生地の質は代わり、素材も様々だ。
 そしてこてんと首を傾げた。

「有翼人の羽根って何であったかいの?」
「何でって、そういうものだろ」
「でも動物の毛よりあったかいよね。なんでだろ」
「……そこまでは分からないな。何でだろうな」
「んー。じゃあこれで糸作ってもだめかな」
「糸?」
「うん。糸紡ぎ機で糸にできるんだよ。こねこねすると綿みたいにもこもこになるの」

 立珂はぷつっと羽根を一本抜くと、芯から毛を毟り両手でこね回した。
 すると次第に毛羽立ちどんどん丸くなっていく。一本の羽は手のひらほどの毛玉に姿を変えた。

「これで生地作って羽と同じくらい温かかったら嬉しいでしょ」
「確かにな。へえ、面白いな。やってみようか」
「うん! あったかいといいなあ」

 こうして二人で羽根毛玉を作り糸にし、それでできた生地を使ったのがこの肌着だ。
 聞いて愛憐はびっくりしたように目を丸くした。
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