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第四章 翼衣專店
第二十二話 有翼人のさらなるお洒落【後編】
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「染色さ! うちは羽染めをしてるんだ!」
「でもどうやって染めるの? お薬くさくない?」
「くさいもんか。むしろ嗅げ」
紅蘭は目線で職員に合図すると、小瓶を持ってこさせた。
そこには紫色の液体がたっぷり入っている。紅蘭は蓋を開けて立珂の顔前に差し出した。
後ろに立っている薄珂にまでその香りが届いてきて、慌てて立珂を抱きしめる。
「駄目だ! 立珂はにおいが苦手なんだ!」
「大丈夫だよ。過保護だね。ほら嗅げ」
「でも」
「お兄ちゃん。大丈夫よ。私達もそれ使ってるんだから」
「けど……」
女性客は皆にこにことしていて、その羽は皆色付き美しい。
それでも薄珂は戸惑ったが、その隙に紅蘭は立珂に嗅がせた。
「あ! ちょっと待っ」
「良いかおり!」
「……へ?」
「薫衣草のかおりがする! 良いかおりだよ!」
「薫衣草?」
「そうだろう。これは植物だけで作ってるんだ」
「羽に焚き染めるといつも薫衣草の香りがして気持ち良いのよ」
「ふあ~……」
「どうだい。保護区でやっちゃくれないか。予約半年待ちだよ?」
「前向きに検討します。染料は在庫豊富なんですか?」
「響玄に集めさせな」
紅蘭はわははと高笑いし、護栄の背をばんばんと叩いた。客はくすくすと笑い見守っている。
だがその間にも客の出入りがあり、皆羽の色は多種多様で花畑のようになっていく。
店内がどんどん華やかになっていくが、その時、店の外からがしゃんという大きな音がした。
「なんです?」
「ちょうどいい。護栄! やって来い!」
「何をですか」
「あいつらを倒すんだよ」
「ちょ、ちょっと、放してください」
紅蘭はわははと笑いながら、護栄の首根っこを掴んで引きずり外へ出た。
「でもどうやって染めるの? お薬くさくない?」
「くさいもんか。むしろ嗅げ」
紅蘭は目線で職員に合図すると、小瓶を持ってこさせた。
そこには紫色の液体がたっぷり入っている。紅蘭は蓋を開けて立珂の顔前に差し出した。
後ろに立っている薄珂にまでその香りが届いてきて、慌てて立珂を抱きしめる。
「駄目だ! 立珂はにおいが苦手なんだ!」
「大丈夫だよ。過保護だね。ほら嗅げ」
「でも」
「お兄ちゃん。大丈夫よ。私達もそれ使ってるんだから」
「けど……」
女性客は皆にこにことしていて、その羽は皆色付き美しい。
それでも薄珂は戸惑ったが、その隙に紅蘭は立珂に嗅がせた。
「あ! ちょっと待っ」
「良いかおり!」
「……へ?」
「薫衣草のかおりがする! 良いかおりだよ!」
「薫衣草?」
「そうだろう。これは植物だけで作ってるんだ」
「羽に焚き染めるといつも薫衣草の香りがして気持ち良いのよ」
「ふあ~……」
「どうだい。保護区でやっちゃくれないか。予約半年待ちだよ?」
「前向きに検討します。染料は在庫豊富なんですか?」
「響玄に集めさせな」
紅蘭はわははと高笑いし、護栄の背をばんばんと叩いた。客はくすくすと笑い見守っている。
だがその間にも客の出入りがあり、皆羽の色は多種多様で花畑のようになっていく。
店内がどんどん華やかになっていくが、その時、店の外からがしゃんという大きな音がした。
「なんです?」
「ちょうどいい。護栄! やって来い!」
「何をですか」
「あいつらを倒すんだよ」
「ちょ、ちょっと、放してください」
紅蘭はわははと笑いながら、護栄の首根っこを掴んで引きずり外へ出た。
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