上 下
249 / 277
第八章 リルとの別れ……魔王ガルドとの戦い

第233話 戦略会議

しおりを挟む

俺はライドンさんを殺した。何が何だか
分からなくなった俺はしばらく叫び続けて
いたようだ。リルはショックのあまり気絶し
俺は魔王の命令に従い連れ帰ろうとしたが、
そこに俺の意思が抵抗した。魔王の命令と
俺の意思、どちらも引かない強い力に
俺の心と身体が一気に疲弊した。その時の
俺は生きた屍と化していた。

 しかしリルだけはどうしても連れて
行こうとはせず途中で襲って来た盗賊共を
操り、近くにあった古びた古城に
立て篭もりリルを守った。だが魔王の
縛りは強く決して解けず、俺は苦しみ
続けた。そんなある日だ。何者かが
閉じ込めていたリルを連れ出したのだ。
俺は動かなくなった身体を無理やり
動かしリルを逃がした侵入者を殺した
リルを連れ戻そうとした。しかし、
そこでまさかの返り討ちにあう、しかも
何をしたのか分からないが、呪いの類で
俺の記憶を消した。それが功を奏す。
一時的に記憶が消え、それにより
魔王の縛りまで消えたのだ。その後徐々に
元々の記憶が戻り魔王軍の中で敢えて
そのまま残りリルの行方をくらました。
しかしそれも限界がいずれ来る。
今度こそ魔王を倒すための戦力を集め、
今に至るわけだ。

◆蒼字の視点

「……………あ!?確かにあの時の
やつじゃないか!」
 俺はリルを助けた時の記憶を
思い出し驚く。

「そうだ!あの時は身体が自由に
動かずあっさり負けたが今はそうは
いかないからな。……いやそれじゃないな。
あの時は助かった。お陰で意識を完全に
取り戻すことが出来たのだからな。
感謝する」

「なるほど、それで感謝されてるのか、
やっと意味が分かったよ!ま~偶然
なんだけど、良かった良かった。
それで魔王を倒すための準備、
戦力の確保は出来ているのか?」

「集めてはいる。だがどれだけ居ても
魔王相手では安心など出来んからな。
今のところ水、火、風、地の中精霊が
それぞれ100人、地の大精霊が一人だ!」

「へぇーそんな数の精霊を扱えるなんて
アストロンは精霊使いなのか?」
 俺にも水の大精霊が居るからなんとなく
分かるけどそんな数の精霊を操るのは
基本的に無理なんじゃないかと思っている。

「俺は精霊使いではない。本来では
このように従えることは出来ないのだが」
 スーッとアストロンの後ろに水、火、風、
地の四精霊が並ぶ。

「こいつらは、酷い話だが操り無理やり
協力して貰っている」

「操る!?どう言うことだ!」
 なんか物騒な話に……

「俺のユニークスキル、それがこいつ
ルージュだが幻術を得意としている。
その力を使い操っている」
 突然半透明な綺麗な女性がしなだれる
ようにアストロンにもたれかかる。

「ん……そう言うことか……」
 俺は無理やりとか操るとか、あまり
認めたくなくって無愛想な反応をする。

 そこにさらにずんぐりむっくりの
男が現れる。

「ま~あまりええことではないがあくまでも
いい印象を与えているくらいだ。気にし過ぎるな
アストロン」

「ドルン、慰めてくれるのか?」
「別にそんなつもりやないわ。
ワシは思っている事を言ったまでや!」

「……そちらは地の大精霊さんですか?」
 俺はその姿から地の大精霊と思い声を
かける。

「そうや!一緒に戦うことになる。
宜しくな」
「あ、どうも」
 バシバシと肩を叩く豪快な精霊さんだ。
水の大精霊マリンとはタイプが全然違う。

「ちなみにドルンは操っていない。
……と言うか出来ないが正確かルージュの
力を使っても大精霊を制御するのは難しい」
 アストロンはなぜかガックリと肩を
落とす。

「ま~いいじゃないの。ワシがいるんや!
実はな他にも水、火、風と様々な
大精霊に声をかけたんだが全員に
断られたわ!ま~当然だ!
ワシみたいな変わりもんはそうはおらん」

「そっか、アストロンも苦労した訳ね!
了解、今のを聞いてだいたいの戦力は
把握出来た。あとは魔王ガルド達の
戦力だが、そこんところは
もちろん分かってるんだよな~」

「当たり前だ!戦争の最高責任者は
俺だったからな十分把握しているさ。
警戒するべきは3人、そいつ等を
抑えることが出来れば魔王ガルドの
もとに辿り着く事が出来るだろう」

「そうか、それならそいつ等のことを
教えてくれ」

「分かった。王都ドライグには
3人の竜騎士が城の守護している。
名はロック、ナット、ヴァラン、3人の
竜騎士はその名の通り竜を従えている。
ロックは地竜、ナットは風竜、
ヴァラン火竜それぞれが城にある3つの
大門に居るため、この中の
どれかを突破しなければならん!」

「そいつ等はやっぱ強いのか?」
「当たり前だ!それぞれの戦闘能力で
言えば、四醒獣と同等だが従えている
ドラゴンを考えればそれ以上と
言ったところか」
「コウリョウ師父クラスではないなら
何とかなるだろう。あとは相性の良い
やつをぶつけるまでさ」

 俺はそれを聞いて何とかなると
思った。だけどアストロンから
もう一人の警戒人物について話が出る。

「もう一人危険かも知れない人物がいる。
大した力はないはずだが決して侮らないで
くれ、名はバイオス、もしかしたら
こいつこそが父上を魔王にした者かも
知れない」

 この男の名は今後幾度も聞くことになる
重要人物であった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

処理中です...